幸あれ。
「なっ、何だよお前!」
「おいっ、お前の仲間か?」
いや、俺に聞かれても。
目の前に立つそいつは、俺よりも小柄で黒いスーツを着ていた。こちらに背を向けているので顔は見えない。そして、ひときわ目につくのは、その髪だった。
この暗闇でも目立つ程の漆黒の黒髪。
本当に誰だ、こいつ・・・?
しかし、今はそんな事を考えている場合ではなかった。
「もういい。2人まとめてやっちまえ!」
「おぅ!!」
唖然としていた男たちが動きだす。
「おいっ!危ねぇからさっさと、」
「あなたは動かないで下さい。」
そう言うと、そいつは音もなく動いた。
そして次の瞬間・・・
男たちは倒れていた。地面で苦しげにうめいている。
「なっ!?お前、何を・・・。」
倒れている男たちの真ん中に立っているそいつを見ると、いつのまにか細い棒のようなものを持っていた。信じられないような素早い動きで、男たちを殴って行ったようだ。
「お怪我はありませんか?」
「あぁ・・・。じゃなくて、お前、誰だ!?」
「とりあえず中央通りに出ましょう。」
俺の言葉なんか聞こえなかったかのように、そいつは俺に背を向けた。
無視かよ。
しかしこのまま裏通りにいるのも危ないので、足早にそいつの後について行った。