二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

境界の歩き方

INDEX|4ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

3/反転


 
 記事を検索してみると、確かに五年前、あの家で殺人事件が起こったのは確かだった。被害者は夫と妻。夫は寝室で、妻はガレージで、それぞれ血まみれの状態で発見されたらしい。念のためあの家全体を霊視したが、ガレージには特に怨念は残っていなかった。妻の方はそれほど未練もなく成仏したようだ。
 さらに調べてみると、被疑者である夫の愛人【サヨコ】は、生まれたばかりの【マヤ】を連れて逃走、その後自殺している。【マヤ】の方は無事に保護され、母方の親戚に引き取られたらしい。
 そしていま、跡部達は件の家の前の住人がその親戚であることを突き止め、彼らが現在住居としている寿司屋を訪れていた。
 かわむらずしと書かれた暖簾をくぐると、威勢のいい声が迎える。

「へい、らっしゃい!」
 カウンターを拭きながらこちらを振り返ったのは、不二周助と同世代であろう若い男だった。

「こんにちは。先程ご連絡しました、伴田と申します」

 伴田がニッコリ笑って挨拶すると、男は「ああ!霊媒師の先生ですか」と手を打って、三人を座敷席に案内した。

「俺は河村隆。マヤちゃんのはとこにあたります。それで、聞きたいことっていうのは?」
「差し支えない範囲で構いません。マヤちゃんのお父様の成仏のために、最近の彼女の様子を教えていただけませんか」

 河村は、人柄のよさそうな青年だった。伴田が話を切り出すと、痛ましそうにしながらも、誠実に質問に答えた。

「俺から、マヤちゃんにわかるように説明しましょうか?彼女は、お父さんに会いたいというかも知れません」
 
 しかしその提案には、頭から冷水を浴びせられたような気持ちになった。跡部は血相を変え、握りしめた拳をテーブルに叩きつける。

「跡部くん、」

 隣から窘めるような声が上がったが、跡部は構わず低い声を漏らした。

「ダメだ。あの父親は完全に悪霊化している。娘を近づけるのは危険だ。絶対に会わせるべきじゃない」

 河村は突然のことにとまどったように目を丸くしたが、やがて納得したように微笑んだ。

「ありがとう。その忠告に従うよ。マヤちゃんの最後のお父さんの記憶が、恐ろしいものになってしまうのはかわいそうだからね」
作品名:境界の歩き方 作家名:_ 消