残像
雲雀はディーノが上手く言っておいてくれたおかげで継承式に来るそうだが、骸はそもそも指輪戦の時は一時的に協力してくれたような形である。
骸の心情を綱吉なりに考えてみても、一度ちゃんと守護者継承式に出る――つまり、ボンゴレの、10代目霧の守護者になることを受け入れてくれるのか、聞かなければいけないと思った。
だが、今はかなり聞こうなどと決断してしまったことに後悔した。
逃げられるなら逃げたい。
「あ、い、いややや、そ、そうだよね!!や、やっぱ絶対嫌に決まってるよね・・・!ご、ごめん、今のなしに―」
「・・・ほう、何ですか、僕よりも強くて忠誠心のある君にとって扱いやすい守護者でも手懐けたんですか?“ダメツナ”の割には随分と頑張ったではないですか」
骸はすっと立ち上がるなり三叉槍を取り出し、折りたたまれていたそれを本来の形にしてきた。骸はここまで人に尽すことは初めてで、かつ二度とこんなことはしないと自分で思っている。
マフィアにこうして関わっているのだって、綱吉がいるからなのに、綱吉は一向に分かってくれそうにない。
骸がいらついていると、綱吉も勢いよく立ち上がるなり反論してきた。
「んな、何言ってんだよ!逆に言わせてもらうけどなあ、俺がそんなことできるわけないだろ!!雲雀さんも説得できなくて結局ディーノさんに頼んだ俺にそんなことできっこないよ!・・・それに、俺は霧の守護者は骸がいいと思ってる」
つい数分前はおどおどとしていたオパールのような大きな瞳が、強い意志を映し出す。
綱吉に真剣に見つめられて、骸は心臓を鷲掴みにされたように感じた。
その視線に惹き付けられて、瞳の奥を見つめていると、綱吉が顔を赤く染めるなりぱっと視線をそらす。
「あぁもう、何でこんな恥ずかしいこと言ってんだろ・・・む、骸もそんな真剣に俺のこと見ないでよ、恥ずかしいから・・・な?」
ちらっと骸に咎めるような視線が送られる。骸は三叉槍を下げ、折りたたんでしまった。
綱吉はそれを見て胸を撫で下ろす。
「・・・でも、先ほど君が言ったことは本当なんですよね?」
再度骸は確かめるように言う。綱吉に欲されているのなら本望だった。