エンドレスラブソング@12/13完結
中篇
ボーカロイドは夢を見ない。
見るとしても、それは蓄積されたデーターを映像化し、それを映画のように流して見るというものになるけれど、それすらも今の帝人にはできなくなっていた。
走るノイズ。途切れる音声。歪む視界。霞んでいく意識。
時が経つにつれて傷付いていくデーターをそれでも帝人は大切に大事に抱えていた。
抱えていた、けれど。
限界だ、そう呟いたのは、メンテナンスをしてくれている人間か、それとも帝人自身か。
ああでも、最後に、最後に一度だけ、例え機械の命を縮める行為となっても、一度でいいから、優しいあの子に唄を聴かせてやりたい。
最後に、
あの子のボーカロイドとして最期に、
愛の、唄を。
作品名:エンドレスラブソング@12/13完結 作家名:いの