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エンドレスラブソング@12/13完結

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今日は調子が良いんです!と言った帝人を数カ月ぶりに外へと連れ出した。
その際、メンテナンスを行っているスタッフとやけに長く話していた姿が少し気になったが、それも無邪気にはしゃぐ帝人を見てすぐに消えていった。
「てか、はしゃぎすぎだろ。お前、いくつだ」
「機械は年を取りませーん」
「意味わかんねぇよ」
ふわふわと軽やかに駆ける姿は人間と変わらない。
それでも彼はボーカロイドで、静雄とは違うモノだ。
「帝人、上着はどうした。その格好見てるほうが寒ィ」
「ああ、すみません失念してました。そうですよね、世間は今冬なんですよねぇ」
今更な呟きに静雄は苦笑して、来ていたコートを脱ぎ帝人の頭の上からどさりと被せた。
「うわっぷ」
「それでも着てろ」
「ちょ、僕は平気ですよ!静雄さんこそ、バーテン服だけじゃあ風邪引きます!」
「風邪なんざ10年以上も引いてねぇ」
押し返して押しつけて、数分後勝利したのは静雄だった。
ぶちくさ言いながらも、大きい自分の上着を着る帝人に静雄の口元は緩む。
「冬ですねぇ」
「ああ、冬だな」
体内で温められた二酸化炭素が静雄の唇から出ると、白い息となって世界に溶け込んでいく、
帝人は機械だから白い息すら吐けないが、それでも飽きもせずふうっと息を吐く。
吐いて、吐いて、吐いて。
帝人はそっと蒼い眸を細めた。


「静雄さん」
「ん、」
「僕の唄を、聴きたいですか?」
「・・・・え、」


静雄のボーカロイドは微笑って言った。


「僕の唄、聴いてくれますか?」


直ったのか、とか、大丈夫なのか、とか、色々聞くべきことはたくさんあるはずなのに、静雄の唇からは何にも言葉にすることができなくて、ただ静雄はその首を縦に動かした。


聴きたい。


それが静雄の願いで、ずっとずっと抱えていた想いだった。



幼い顔のボーカロイドは微笑んだまま、小さな唇をゆっくりと開き、喉を震わせた。






奏でるのは、静雄が飽きもせず彼に望んだ、子守唄。
幼い子に聴かせる子守唄だけれども、静雄にとってそれは何よりも愛の唄だ。
帝人が、静雄だけにくれた、愛の唄。
穏やかな旋律。
慈しむような歌詞。
愛おしむ音。
けして、上手いとはいえない唄声だけれど。
きっと世の中には、彼以上の唄を聴かせるボーカロイドがいるだろうけど。
静雄はやっぱり、帝人が奏でる唄しか、愛せないし、欲しくなかった。


(だけど)


お前がいればいい。
お前があればいい。
唄えなくてもいいんだ。
唄わなくてもいいんだ。
お前の唄を誰よりも何よりも愛しているけれど。
お前を俺は愛してるから。





「聴こえますか、静雄さん。僕の唄が、貴方に、」




(そうして、)(世界は)



「僕の、最期の、愛が、貴方に」
聴こえますか。




(崩れ落ちる)




お前が傍にいてくれれば、それで、いいから。









(俺を、置いて、いくな)