苦さと甘さのフィフティ・フィフティ
骸は先ほどよりも弱弱しく抵抗する綱吉をきにくわなさそうな顔で見る。
「別に僕はいらないですよ、収入は君が頑張ってくれるでしょうから僕の考える問題でもないでしょうし」
骸は一向に言うことを聞いてくれそうにない。ここでいつもだったらしょうがないなあと呑み込む綱吉だったが、今回はそういうわけにもいかなかった。
というよりか、やむを得ず骸には聞いてもらうしかなかった。
「・・・骸、これさ、クラス分けも入ってるんだ。生徒の希望と照らし合わせるんだけど、この成績だと理系の・・・しかも特進に入らざるを得ないと思うんだ、俺の希望とかじゃなくてその、学校の方針というか、うん」
縮こまりつつ申し訳なさそうに言う綱吉に対し、冷静に切り返していた骸が突然立ち上がった。
「・・・何ですか、それ」
にっこりと骸が微笑む。これはとてつもなく怒っている証拠だ。
ああ、だから一生懸命説得したのに。とりあえず収まってくれればいづれにせよ理系特進クラスに編入されてしまうことは言わないつもりだったのに。
「・・・ご、ごめん。いや、ごめんなさい。ほ、本当は言わないつもりだったんだ。こんな仕組み、本当はおかしいと思うし。納得してくれたら言わないつもりで―」
「君が担任である今でさえ忙しいからとかくだらない行事のせいで会えないのに?君メールもろくにしてこないじゃないですか、帰ったら仕事してるか寝てますし。最悪ですよ、本当!こんなところ―っ」
ひとしきり罵詈壮言を吐いたのち、骸が何かを言いかけたままうつむくなり、柄にもなく泣きそうな顔をした。
机の上のぎゅっと握りしめられた手が震える。
「・・・骸、ごめ―」
そんな骸の様子を見て、ただ言葉を受け止めるしかなかった綱吉が謝ろうとすると、骸は何かを言いかけたまま出て行ってしまった。
作品名:苦さと甘さのフィフティ・フィフティ 作家名:豚なすび