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【イナズマ】赤いきつねとシングルベッド

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「いい、守。目に見えないからって神様や仏様を蔑ろにして良いわけじゃないって母ちゃんも思うのよ。いいことをしたらいいことが返ってくるし、悪いことをしたら悪いことが返ってくる。それは人と人同士でも同じだよ」
「母ちゃん……」
「あんたのおかげでヒロトくんは助かったんだってね。母ちゃん嬉しいよ。これも何かの縁だろ。困ってるんなら助けてあげなきゃね」

力強く言う母親に、円堂はもさもさと後ろ頭を掻くと、ヒロトに視線を向ける。
狐の少年は、にこにこ笑いながら油揚げをぺろりと口の中に放り込むところだった。

「そういうわけで、よろしくね、守、守のお母さんも」
「生む手間省けて息子がもう一人出来た気分ねー」
「何でもお手伝いするんで、ヒロトって気軽に呼んでくださいね」

キャッキャウフフと自分を置き去りにしてすっかり馴染んでいる二人に、円堂はこっそり息をつく。
ついでに摘んだから揚げは、少し冷めていたが空きっ腹にじわりと美味しかった。


その後、仕事から帰宅した父親を母が有無を言わせず説き伏せたのを横目に、円堂は半ば無理矢理自分の部屋にヒロトを引っ張り込んだ。
間の悪いことに、先日全てクリーニングに出してしまったので、現在円堂家には余分な布団や毛布の類が一切ないのである。
ヒロトはそこらにいるので構わなくていいと言ったのだが、そういうわけにもいかない。
きょろきょろと部屋を見回しているヒロトに、ベッドから引っ張り出した毛布を押し付けた。

「ほら、これ使えよ」
「え、いいよ、俺神様だから平気だよ。その辺で寝てるから」
「駄目だ!」

ぐい、と毛布を握らせて、困ったような顔をしているヒロトを、むう、と睨む。

「こうなった以上、ヒロトはもう家族みたいなもんだからな」
「……守、」
「神様でも何でも、動けば疲れるし夜は寒いだろ?ちゃんと暖かくして休まなきゃ」

ぐいぐいと毛布を押し付ける円堂を呆気に取られたように見て、ヒロトはやがて、へしょ、と眉を寄せて笑った。

「…参ったなあ。皆いい人過ぎるよ…」
「ん?」
「わかった。有り難く使わせてもらうよ」

もそもそと部屋の隅で毛布に包まるヒロトを見て円堂は待て待てと手招く。
首を傾げたヒロトに、布団をめくり上げて見せると、

「二人じゃ狭いけどな、ほら」
「え、ええっ!?それこそ床でいいよ!見るからにシングルベッドだし……」