二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
久住@ついった厨
久住@ついった厨
novelistID. 1078
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

悲しみ連鎖

INDEX|10ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

 ぼたぼた、地面を液体が濡らしていく。それは俺の血だった。ルートの血だった。
 周りは完璧に包囲されてて、負けるのなんかもう時間の問題で。それが分かってるからか、向こうは随分と悠長に構えてた。俺たちはもうゆっくり対策を考えてる暇もない。ただ向かってくる敵を場当たり的に倒すことしか出来なかった。そんな風に戦って、勝機が見えるなんてことある筈がなくて。俺たちはただただ消耗していくだけ。
 本当に、負けるのなんか時間の問題だ。だとしたら、5分先に負けるのも5日先に負けるのも、一緒だと俺は思う。こんな戦い長引かせたって、何のいいこともない。だから俺は声を張り上げる。

「もういいよルート。もう止めようよ!」
「ここまで来て諦めると言うのか!」

 向こうから苛付いたみたいな怒声。
 ルートだって分かってるのに、どうして戦い続けることしか考えられないの? このままじゃ、俺たち死ぬよ。絶対助からないよ。相手はもう余裕を見出だし始めてて、のんびり総攻撃体勢に入ったりしてるんだから。
 ほら、そんなに血、出てるじゃん。放っといたら死んじゃうよ。ねぇ、ルート。

「だって死んじゃったら何にもならないよ!」

 死んじゃったら、そこで終わりなんだよ。思い出も約束も何もかも全部、そこで終わっちゃうんだよ。今までの頑張りだって、消えてなくなっちゃう。それで、そのうち皆の記憶からも失われていく。誰の心にも残らない。俺たちがいたことなんて、なかったことにされてしまう。
 そんなの悲し過ぎるよ。そんなのは、嫌だよ。

「俺は、ルートが死ぬのなんかやだよ…!」

 駆け寄ってギュッと腕に縋り付いたら、ルートは驚いた顔をした。もしかして目、霞んでほとんど見えてないの? 当たり前と言えば当たり前、なのかな。こんなに血出てるもん。これでいつもと変わんないくらい元気だったら、ちょっと怖いよね。
 腕を振り払って行こうとするルートを、俺は必死で引き止める。行かせないよ。行かせたくないよ。死にになんか、行かせたくないよ。

「、フェリ…」

 窘めるみたいな、懇願するみたいな、押し殺したルートの声。
 何をそんなに焦ってるの?
 俺、ルートのこと大好きだよ。でも今のルートは好きになれない、かな。
 だって、死に場所、探してるみたいなんだもん。このままどこかで死んじゃうのを、望んでるみたいなんだもん。
 ねぇ、その目はどこを、何を、見てるの? 何を必死で探してるの?

「ね、もう止めよう? 誰も怒ったりなんか、しないよ?」

 そう、俺たちが戦うのを止めたって、誰も怒ったりなんかしない。寧ろ皆喜ぶよね、平和を乱す奴が投降したら。ルートが何に駆り立てられてるかなんて知らない。
 知らないけど、それってそんなに大事なものなの? 自分の命より大事なものなの?
 俺はそんなもの、ないと思う。命より大切なものなんて、どこにもないと思う。ねぇルート、もう止めようよ。
 俺が意地でも離さないって分かると、ルートは深く深く溜め息を吐いた。そして呟かれる言葉。

「………そうだな。少し、疲れた…」
「っ、ルート!」

 ぐらり、ルートの体が傾ぐ。支えようとしたけど失敗して、一緒に倒れてしまう。俺にも案外、血が足りてなかったみたい。
 くらくらするのを我慢しながら地面に座り込んで、ルートの頭を膝の上に乗せる。見つめたルートの顔は血の気を失って真っ青で、嫌な予感が脳裏を過ぎる。でも、ちゃんとルートは息をしてた。ちょっとだけホッとして、俺は息を吐く。
 あぁ、俺たちどこで間違っちゃったんだろう。こんなことになるの、望んだりしてなかったのに。






君を失うことが怖い
(また、俺の前から君がいなくなることが、)


作品名:悲しみ連鎖 作家名:久住@ついった厨