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久住@ついった厨
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悲しみ連鎖

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「ねぇねぇ菊、あの子本当に妹なのー? 恋人とか奥さんじゃなくてさ」

 とフェリシアーノ君に聞かれて、私は口にしたお茶を盛大に吹きかけました。実に危ないところでした。折角桜が淹れてくれたお茶ですし、畳に染みを作りたくもありませんし。いきなり何を言い出すのだ、と私はフェリシアーノ君を怪訝な顔で見ます。
 この場に桜がいなくてよかったです。私が帰って早々に家の奥に引っ込んでしまったのを感謝したのは、後にも先にもこの時くらいだったでしょう。軽く噎せながら何がどうなっているのかとルートヴィッヒさんに視線を送ると、彼も興味を引かれている様子でした。
 あぁ、桜は一体何をしてくれたんでしょう。お二人が揃って勘違いするなんて、余程のことがなければ有り得ないと思うのですが。

「本当に妹ですよ。本人も弁解してませんでしたか?」
「するにはしていた、が」
「妹いるなんて教えてくれてなかったでしょ?」

 確かに似てるなぁって納得したけど、まだ何となく飲み込めないんだよ。
 そう言われて、お二人には桜を紹介していなかったことを私は思い出しました。何度か来て下さってはいるのですが、家に来られたのはこれが初めてです。桜は滅多に家から出ませんから、当然ながら我が家初訪問の日が桜との初対面になる訳ですね。急に呼び出されたとはいえ、そんな時に留守にするとは迂闊でした。私としたことが。
 事前に話だけでもしておけばよかったのでしょうね。けれど家族の話など出なかったものですから。何の脈絡もなく、そういえば私妹がいるんですよ、なんて言える訳ありません。よって私は悪くないです。
 私は悪くな………あぁ桜に後で謝っておかなければ!

「ところで…気付いているか、彼女のこと」
「桜の何に、です?」
「体調だ」
「………、」

 湯飲みを口に運びながら何気ない風に、ルートヴィッヒさんは私に言いました。
 桜の、体調。
 知っています。知って、いますとも。知らない筈がないじゃないですか、そんなの。桜が日に日に弱っていっていることなんて、かなり前から気付いていました。けれど。
 けれど、あの子は気丈にそれを隠そうとするから。私に悟られないように笑顔を作るから。何でもないように振る舞うから。私は何度も言おうとして、失敗しているのです。私が疾うに気付いているのだという事実を突き付けられた時、桜がどう感じるかと思うと、とてもではないですが言い出せません。
 このままどんどん体調を崩していったら、と心配に思っています。しかしながら、その原因を作ったのは他ならぬ私なのです。それを分かっているから、桜も私に悟られないようにしているのでしょう。優しい子ですあの子は、本当に。

「いや、知っているならいいんだ。済まないな急に妙なことを」
「いいえ、お気遣い痛み入ります」

 フェリシアーノ君は私たちの会話がよく分からないようで、ヴェー? と首を傾げています。彼は身近な人がこうなったことはないのでしょう。羨ましい限りです。ということは逆に、ルートヴィッヒさんは近しい誰かが同じようになったことがあるのでしょう。その方はどうなったのでしょうか。どうなったから、桜のことを気に掛けて下さるのでしょう。
 桜は最近悩んでいるようでしたから、今度ゆっくり話し合ってみましょうか。私も一時期悩んだものですからね。自分は何者なのか、どうして人間とさして変わらない存在として生まれてきたのか。私たちのような存在なら、誰しも1度は悩むことです。
 私は耀さんに諭されて、折り合いをつけられるようになりました。その役を、私は桜にしてあげなければならないと思うのです。そうすることしか出来ない、と言った方が正確かもしれません。
 どうか一刻も早くあの子の憂いが晴れて、体調が回復すればいいのですが。私には祈ることと、ほんの少しの手助けをすることしか出来ません。
 何と不甲斐ない兄なのでしょう、私は。






君は他の誰でもない君である
(何があっても、貴女は私の大切な妹なのですよ)

作品名:悲しみ連鎖 作家名:久住@ついった厨