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久住@ついった厨
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悲しみ連鎖

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日妹視点/WW?






 止まりません。戦争の連鎖が止まりません。とうとう兄様は、アーサーさんやアルフレッドさんとも戦い始めてしまいました。
 兄様とルートヴィッヒさんとフェリシアーノさんは、枢軸と呼ばれているそうです。それに対するのはアーサーさんとアルフレッドさんと耀兄様、それにフランシスさんとイヴァンさん。彼らは連合と呼ばれているそうです。
 兄様は家を出ていったきり、もう数ヶ月帰ってきていません。私は兄様の帰りをずっと待っています。私には待つことしか出来ないのです。

「兄様、どうか……」

 どうかご無事で。
 ご武運を、と言って私は兄様を送り出しました。ご無事で、なんて面と向かっては言えませんでした。兄様は命を懸けて戦っている。それなのに、ご無事で、なんて言える筈がありませんでした。
 私は最近臥せりがちになったので、上司に直訴しようにも出来ません。もう止めて欲しいと、言いにいくことが出来ません。私にはそれがとてももどかしくて、辛いのです。
 私は手にした袋をそっと掻き抱きました。それは兄様の刀が入っていたものです。兄様は刀袋を置いていかれたのです。私にはそれが兄様の覚悟の証に思えました。
 だからこうして祈るのです。無事で、どうか無事で帰ってきて欲しいと。勝利なんていりません。賠償金なんていりません。植民地なんていりません。私は、兄様が笑っていてくれればそれでいいのです。
 あぁ、戦争なんて早く終わればいいのに。そうしたら兄様が家に帰ってきてくれるのです。いつも通りの生活が戻ってくるのです。兄様が穏やかに笑ってくれるのです。
 それだけで、私はいいのです。私は幸せなのです。

「転戦、してるのね」

 私に兄様の状態を教えてくれるのは、毎日届く新聞くらいのものでした。私は今朝届いたそれを眺めて呟きます。戦地がどんどん広がっていくのが手に取るように分かって嫌でした。けれど兄様の状態が分からない方がもっと嫌でした。だから私は震える手で印刷の荒い紙面を捲ります。
 そこに印刷された字は各地の勝利を告げ、兵士を称えていました。兄様は大した怪我を負っていないようです。そのことに私は安堵しました。けれど私はこの情報がすでに古いことを知っています。頭から信用出来ないことも知っています。それ故に祈ることを止められないのです。

「無事に帰ってきて、兄様」

 呟いて、私は手にしていた刀袋を枕元に置きました。上半身を起こしただけの格好なのに、それさえ辛くなってきたのです。
 布団に横たわろうと姿勢を崩すと、喉に迫り上がってくるものがありました。私ははっとして口元に手を遣ります。その瞬間に激しく咳き込みました。涙目になりながら私は必死で酸素を取り入れます。暫く深く呼吸を繰り返していれば、乱れた息は治まりました。
 けれど、手についたものだけは、隠しようがありませんでした。私の手には赤い紅い、血がこびりついていました。






何をするというの
(戦争は何も生まないのに、)


作品名:悲しみ連鎖 作家名:久住@ついった厨