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まさきあやか
まさきあやか
novelistID. 8259
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悪魔と唄えば / リボツナ

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 下手をすれば、トゥリニセッテなどと絡んで何が起きるかわからないだろう。それも、綱吉や骸が把握していると言うだけであって、世界レベルで語ればさらに別の影響があるだろう。
たらり、と、快斗がそう尋ねれば、骸はあっさりとうなずく。綱吉が頭をかきむしる。

「九代目ぇそんな重要なことをどうして言ってくれなかったんですかぁ!」

 この状況でオレにどうしろって言うんだ!と言う綱吉に少年が口を開く。

「ヤツがメガネの肉体を乗っ取る条件は二つ。
 メガネの精神が疲弊することによるタイムリミット。もう一つはマグナを手に入れることによる契約の履行」
「つまり、可能な限り早く、彼から悪魔を引き剥がす必要があるわね」

 それしかないだろうと頷く少年に、骸もうなずく。彼としては自分の手で世界を朱色に変えるより前に、悪魔などの手によって混乱させられるのは気に食わないのだろう。

「引き剥がすのは…おそらく綱吉君の大空の炎があれば可能でしょう。あれには………浄化の力がある」
「わ、わかった」

 六道輪廻の人間界の黒い炎を浄化した力を言っているのだろう。骸にそう言われて、綱吉がうなずく。

「あとはメガネから離れたヤツを封じるんだが……マグナ、出来るな」

 バルレルが、そう言って自分にしがみついているマグナの身体を少し離してそう尋ねる。真っ赤に目をはらしたマグナは、バルレルの言葉に目をこするとしっかりとうなずいた。

「やる」

 突然態度が変わった兄。本心が見えず怯えていたが、それが悪魔によるものならば、自分が出来る事がある。マグナにとっては、悪魔よりも人の心の方が恐ろしいのだ。

「それに、屋敷のみんなは…」

 自分が屋敷を出てしまったせいで、とマグナが表情を暗くする。先ほどのネスティの言葉から拳を握りしめるマグナに、バルレルは安心するようにその手を取った。

「大丈夫だ。シオンやラウルたちが上手くやった」

 誰も死んでない。と言うバルレルにマグナは再びボロボロと涙をこぼした。だが今度は先ほどまでとは違う、安堵の涙だろう。
 故郷を離れ、綱吉達と平穏に暮らしながらもいつ兄に発見されるかと言う恐怖と、自分のせいで殺されてしまっただろう人たちに対する罪悪感をずっと抱えていたのだ。

「それじゃ、封じる媒体だが……」

 しばらくして泣きやんだマグナにバルレルは笑みを浮かべると、所在なさそうにこちらを見つめている綱吉達へと視線を向ける。
それからニヤッと人を食ったような笑みを浮かべた。これが悪魔の笑みだと、断言できるような笑み。先ほどまでマグナに向けていた笑みとは比べ物にならないほどに禍々しい。

「おもしれーもんを持ってるじゃねーか」
「へ?」
「お前だお前、その間抜けなツラしたやつだよ」
「…お、オレ?」

 自分を指さして首を傾げた綱吉に、バルレルは頷いた。リボーンと言い、コロネロと言い、最近のちびっこは口が悪いのだろうかと綱吉がつくため息は深い。

「お前、おもしろいもんをもってるじゃねーか」
「え、えぇ?」

 なんか持ってたかな?と、綱吉はポケットを漁る。とは言ってもカバンは逃げる時にあの場に置いたままにしてしまったし、身に着けているのは、ボンゴレリング――もはやリングではないのだが、便宜上そう呼んでいる――と、匣兵器。携帯電話と言ったものの他は一つしかない。

「…これ?」

 そう言って綱吉が差し出したのは、深紅と虹色に輝く二つの輝石が混じり合う輝石が嵌められたブローチだ。制服のポケットの大きさからすると不自然な大きさなのだが、不思議とどんな服でもポケットに入る不思議な存在である。

「…パンドラ!」

 快斗が短くそう叫ぶように、怪盗キッドが探していた不老不死を授けると言う宝石でもある。
しかしもともとは、初代ボンゴレであったジョットがイタリアから持ち込み封印した〝闇〟であり、エストラーネオが開発した〝闇〟でもあった。
 人間界に災いをもたらす存在とも言われているが、現在は綱吉のもと、宝石を依り代にアビスとエリザと言う女と少女の姿で大人しくしている。
 それを指さして、バルレルがうなずく。

「そいつに、おれ様の力を貸してやる」
「えぇと…アビスとエリザが嫌がらないかなぁ…」

 二人ともかなりの我儘で、石に綱吉以外が触れるのすら嫌がるのだ。どんなポケットにでも入る。という特性からして二人の綱吉の執着が並ではない。

「我慢してもらうしかないでしょうねぇ」

 他人の夢を渡る能力がある骸は、そんな彼女達の被害者でもある。綱吉は受信できても自分が渡る事が出来ない。そもそも受信に関しても超直感によるところが大きいので自分でコントロールできるわけではないのだ。
そのため二人が綱吉とコンタクトを取るには、能力の高い骸の仲介が必要と言うことらしい。

「うぅ、そうだよね」

 しばらくな睡眠不足に悩まされるんだろうなぁという骸と綱吉のある意味で悲壮な決意のもと、パンドラはバルレルの前に差し出された。





「…ここは、海場コーポレーション本社ビル!?」

 決着をつけるにはいい場所がある。と、バルレルに指示された場所を訪れた一行。だがそこは広い公園でもなんでもなく独特の外観をしたビルだった。
 正面玄関には三体の竜が訪れる者を威嚇している。

「本当にここであってるの!?」
「とりあえず、屋上にでも行ってみたらどうでしょう」

 綱吉が不安げに骸を振りかえるが、骸がそう言って促す。とは言っても企業ビルの屋上に無関係の人間が入ることは不可能なので、あわてて海馬に連絡を取った。
 幸いにして現在日本にいたらしい彼に頼めばとりあえず了承の返事を貰う。そのまま屋上に向かえば、いぶかしげな表情を浮かべて彼が待っていた。

「どういうことだ、いきなり本社ビルの屋上を貸してくれだなんて」

 バタバタとスーツの裾を風になびかせながら海馬が尋ねる。霜月も中ごろの今日では、ビルの屋上に吹く風は冷たい。
 容赦なく体温を奪っていく風に身を震わせながら、綱吉は肩をすくめた。

「いや何というか、ある意味世界の危機?」

 ぶっちゃけオレ自身が半信半疑なんだけどね。と、綱吉が言う。正直、十年バズーカ―で九年と十カ月後の世界で白蘭が世界を手に入れると言いだしたときよりも信じられない。
 いや、彼と言う存在があったからこそ、悪魔と言う存在を信じられたのだろう。

「……は?」
「詳しくは終わってから話すから!!」

 避難してて。と、綱吉が言うよりも早く突風が彼らを襲った。突然の激しい風に全員の身体が飛ばされそうになる。それを必死にこらえながら、マグナが叫んだ。

「ネス!」
「来たようですね!」

 マグナと骸の声に、海馬と綱吉の二人が顔を上げて見れば、そこにいるのは一人の男が立っていた。
 いや、立っていると言うには語弊があるだろう。彼は、浮いていた。ヘリポートの模様が描かれたコンクリートの上を、三十センチほど宙に浮いていたのだ。

「だ、だいぶ人相変わっちゃってるんですけど!」