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誰も傷付かない恋

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確かに君が、好きだった


天城から告白をされたのは、丁度そんな時だった。
俺は天城の事が好きだったし、彼女と付き合う事で"親友"へ向ける感情が、綺麗な形で収まるならばそれが一番だと考えた。

天城は傷付かず、陽介を傷付ける事もなく、そして俺も傷付かない。

今思えば、この綺麗事を正論に出来るだろうと驕っていたのだ。その時の俺は。
そんな俺の目を覚まさせたのは、しばらくして告げられた天城の言葉だ。



「―――他に好きな人、いるよね」

断定の響きを持った声だった。
言い訳をする必要すら感じず、俺は一つ頷いた。

大きく一つ息を吸う音の後、頬に根付くじくじくとした痛みと熱。

俺を叩いた天城の瞳には、涙の膜が張られていた。
その瞳を見た時、ようやく俺は、間違えていた事に気が付いたのだ。

「ごめん」

「私の事なんか好きじゃないのに…無理して…ばか」

「それは違う」

天城の言葉を流す事が出来なかった。

「俺は、天城が好きだ。他の誰かに言われても、付き合いはしなかった」

「……ずるいよ、そんな事言うの」

「…ごめん」

「謝るのも、ずるい」

泣きじゃくる肩を抱き寄せる事も出来ず、俺はただ天城の傍に居た。
しばらくして泣きやんだ天城は"嫌いにもさせてくれないなんて、ずるい"と笑った。

やっぱり俺は天城が好きだ。
そう告げれば、彼女はまた"ばか"と言って、微笑んだ。


俺には勿体ない、いい女だと思った。



作品名:誰も傷付かない恋 作家名:サキ