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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記15

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「さてと・・・今日の夕ご飯は何にしましょうか」
里の入り口に荷車を止め、神奈子を荷車の番として待たせ、残りの早苗、諏訪子、青蛙神の三人は食材を扱う店が建ち並ぶ通りを歩いていた。因みに、幻想郷に住む九割以上の人間がこの里で生活している。人口は大体300人。顕界から移り住んで以来各々の役割が伝統的に決まっており、農業、漁業(河川によるもの)、畜産、製造業、販売業と、それぞれの分野で集まり、共同体を形成している。そして、各分野長が定期的に集まって各生産状況の報告や物価の検討、天狗への陳情作成、分野間の協力体制の構築などを行っている。そして、里の集落分布は各分野で固まっている。
「久しぶりに肉が食べたい!」
諏訪子が子供のように早苗の周りをピョンピョンとび跳ねながら言った。青蛙神も一本足の都合上ピョンピョン跳びながら歩いている。二匹のカエル(笑)。
「お肉ですか・・・いいですね、じゃあそうしましょう」
青蛙神は二人が話している間、注意深く周りを観察していた。周りの人間の中には自分の歩き方が不自然であることに気が付いているような感じの者もいる。しかし、別段好奇の目をむけるわけでもなく、至って普通だった。なぜだと不思議に思いながらもあたりを見回していると、あるものが目に入り、驚愕した。
「何っ!?」
「うわっ!」
「キャッ!」
青蛙神の突然の声に二人はビックリして彼女の方を向いた。
「・・・今度は何?」
「諏訪子殿!あれっ、あれをっ!」
青蛙神が指さす方向には、ある店先で店の人と思われる女性と話をしている女の子が見えた。それだけなら何もおかしい事はないのだが、青蛙神が驚いたのはその女の子の風貌である。指から異様に伸びている爪は鋭く尖っており、耳は獣のそれのようにふさふさの毛で覆われ・・・何より背中には左右一対の立派な翼が生えていた。背格好は人間に酷似しているが、人間じゃないことを部分部分で証明している。
「あぁ、あれは夜雀【よるすずめ】だね。名前は・・・えっと、そう!みすちー!」
「違います諏訪子様。それは愛称です。彼女はミスティア・ローレライさん。諏訪子様の仰る通り、夜雀という妖怪で、普段は串焼きの屋台をやっている方です。確か、歌がとっても好きな方だとも聞いてますね」
「・・・はっ?妖怪が、串焼きの屋台?」
青蛙神にしてみれば、もうわけがわからない状況だ。元来妖怪は人を襲い、人から恐れられ、忌み嫌われる存在だ。それが、屋台をやっていて、人が暮らす街の、人がやっている店先で、人と談笑している?繰り返しになるが、もうわけがわからない。今の青蛙神は冷静ではないが、これは青蛙神が夢に描いた理想でもあった。件の女の子と、店の女性との話し声が聞こえてくる。
「おばちゃん、お醤油一瓶ちょうだい」
「あらミスティアちゃんいらっしゃい!どう最近景気の方は」
「う~ん・・・最近は妖怪のお客さんの喰い逃げが多いんだよねぇ~。あと、怖い妖怪は平気で代金を踏み倒していくし。勘弁してほしいよ。人間のお客さんはちゃんとお金で代金を払ってくれるんだけど、まだまだ人数が少ないし」
「そりゃそうでしょ、だってミスティアちゃん、よく大人の、特に男に悪戯するでしょ?そんな娘がやってるお店に行こうとは思わないわよ」
因みにミスティアがする悪戯というのは、別にいかがわしいものではなく、森や林の中で、歌を歌って相手の注意を引き、近づいてきたところを襲いかかって、鳥目にさせるといった可愛いものである。しかしこれをされると、かなり長い時間視界が非常に狭くなってしまい、移動することもままならなくなる。まぁ丸一日もすればこの症状は治まるが。「でもねぇ~。いたずら楽しいよ、いたずら」
「なに子供みたいなこと言ってんだい、もう何百年も生きてる癖に」
「そうだね~。あたしから見れば、おばちゃんはずーーーっと年下の女の子だ」
二人は楽しそうに笑っている。
「ね、見たでしょ、青ちゃん。この人間の里では、人間と妖怪が共存しているんだよ。ごく自然に。僕も最初見た時は驚いたよ。慌てて妖怪を退治しようとしたっけ・・・今思うと恥ずかしいな」
「はい。ここでは青さんが夢見た形ができているんです。もう少し奥に行けば、狗賓衆の方々の詰め所がありますよ」
「・・・」
絶句だった。天狗の話は聞いていたが、それにしたってちゃんと居住区が分けられていて、天狗と人間との接点は必要最低限のものなのだろうと勝手に思い込んでいた。それが、蓋を開けてみれば、人間と妖怪が普通に話をしている。まさにそれは青蛙神が望んだ絵空事、理想郷だった。
(まさか・・・このような場所が・・・いや・・・このようなことが本当に実現していようとは・・・ここならばあの娘も絶対に幸せになれる。これはいよいよ紫とやらに土下座してでも頼みこまねば)
青蛙神が言うあの娘というのはいったい誰なのか?まぁ・・・それはおいおい・・・ねっ?
「う~ん・・・そうですね、今日は折角青さんと出会えた記念日ですし、すき焼きにしましょう」
「ホントッ!?やったー!」
「青さんはそれで大丈夫ですか?」
早苗が青蛙神に確認をとったが、返事がない。
「青さん?」
「また思案の穴に入ってるよ(笑)。それに、すき焼きで文句言うわけないじゃん。っていうか、もし文句言ったら、僕が青のお尻をペンペンする!」
「はぁ・・・?一応、他にお惣菜も少し買っていきましょう」
そう話しながら、三人は里で一番美味しいといわれる豆腐屋に向かった。といっても、この里・・・というより幻想郷に豆腐屋は一軒しかないのだが。その唯一の豆腐屋の近くまで来ると、また一人、明らかに人間じゃない部分を持ち合わせた存在が店先にいた。物思いにふけっていた青蛙神はふとその存在に気付いた時、体中に衝撃が走るのを感じた。