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【ときメモGS】愛と友、その関係式【一話目】

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<上>Best Friend  〜旧:トモダチ〜
 
第一章 日常


 フルネーム、小波美奈子。高校二年、バスケ部所属。通うバイトはスタンリオン石油の体力派女子高生とは彼女のことである。体力派と呼ばれるのであるから、もちろん、スポーツ万能だ。しかしながら、がちがちのスポーツ特待生という感じではなく、そこそこ高校生活を満喫していて、普通に下校帰りの寄り道はするし、息抜きもしていた。遊びと学校を両立している、普通といえば普通の女子高校生。
 が、一定の事柄に時間を割くと、他の事柄が疎かになりがちなのは世の常である。部活、スポーツ、バイト、遊びとで一日の大半を消費している彼女は、当たり前に成績が悪かった。ちなみに出席日数は大丈夫である。
 今日も今日とて、成績不振のつけを払うべく補習の真っ最中だ。
 生徒の姿が全く見えない夕日のさす教室で、美奈子は机にかじりついて担任の氷室教諭に出された数学ドリルを解いていた。信じられないことかもしれないが、数学ドリルは基礎編、数学の初歩とのPOPが書かれている。
「そこ掛け算間違えてる」
 美奈子の数学ドリルを赤のボールペンで指したのは短髪で眼鏡が似合う知的美人の有沢志穂という美奈子と同い年の女子高校生だ。美奈子とは正反対で運動が苦手の勉強が得意で、学年10位圏内の才女である。驚きなことに美奈子とは、美奈子が高校に入学して初めてできた友人であり、親友でもあった。
 有沢は呆れた顔で苦笑いを零す。
「和差積商は全ての根っこの部分なんだから、必ず間違わないようにしないと」
 有沢の言葉に、まるで小学生みたいだと美奈子は頬を紅くして照れ笑う。
「有沢さん。ごめんね、こんな時間まで付き合ってもらって」
 そんな美奈子を見て、有沢は両肩をすくめると優しく微笑んだ。
「いいのよ。私も氷室先生に質問したいことがあったから。それに、合同体育の時間でいつもペアを組んでくれるわ。結構助かっているのよ。ほら、私は運動が苦手だから」
「有沢さんがそう言ってくれるならいいんだけど……」
 腑に落ちない様子で眉根を寄せて、それでも美奈子は机の上の課題へ再び取り組む。 サラサラとシャーペンの芯を紙の上に滑らせていく。途中ところどころ詰まりながらも、着々と問題を解いていった。
 問題の残りがあと僅かになったとき、不意に有沢が口を開いた。
「あなた、最近はどうなっているの?」
「え? 最近?」
 美奈子は手を止めて顔をあげた。見ると、有沢は何処かそわそわとしていて落ち着かない様子だった。心なしか顔が赤い。
「ああ」
 美奈子は合点がいくと頷いた。
 有沢はこと恋愛関係に免疫が低い。なのに、彼女が綺麗な詩(特に恋愛関係)を好むことを美奈子は知っている。本人は認めたがらなし隠そうとしているので、特に追求したり同意を求めたりはしていないが、多分、大方そういうことなのだろうと美奈子は確信していた。
 たとえば、いつだったから数回ほど会話を交わしたことがある二年の女子の中で一番のイケギャルと評判の藤井奈津美なら、さらっと聞けるのだろうな、などということを美奈子は思う。
 つまり、恋愛ごとに興味はあるものの免疫がないため態度が酷く不自然になってしまうのだ。しかし、そういうところも有沢志穂の魅力の一つだろうとも美奈子は思う。それに、有沢は純粋に美奈子の恋愛を心配しているのだろうことも理解したからだ。
 美奈子は有沢の気持ちを汲み取ると、あげあしをとることなく素直に答える。
「最近は……どうかな、進展なしって感じかな? 姫条くんは誰にでも優しいし、いまいち近づいたって気がしないな」
 美奈子は手持ったシャープペンをぐるっと一回し。うぅんと唸って、あっと声を上げた。
「ゴールデンウィークの前にね。和馬――えぇっと、鈴鹿に! って知ってる?」
 問いに有沢は一つ頷く。
「知ってるもなにも。鈴鹿君って守村君に面倒みてもらってる子よね。補習のたびに。それに、バスケ部のエースじゃない。……合ってる?」
「う、うん。その鈴鹿で間違いないよ」
 美奈子は思わず苦笑い。
「そういえば、鈴鹿君は姫条君とも仲よかったわね。いつも補習のたびに二人で帰ってるの見かけるわ」
「そうそう!」
 補習のたびに、というのが気にかかったが、まあ小さい事だろう。美奈子は頷いた。
「心強い援軍の登場なのよ」
 びしっと人差し指を天へとつきたてて、美奈子は誇らしげに胸を張る。要領をえない言葉に有沢が首を捻った。美奈子は慌てて言葉を足した。
「なんと姫条くんと仲の良い和馬が、と、鈴鹿なんだけどね? 応援してくれるんだって!」
「……応援?」
 有沢は眉をひそめた。
「そ。たとえば、姫条くんの好きなものを教えてくれるとか。最近、はまりだした趣味を教えてくれたりとするの」
「はぁ。ふぅん」
 何となく気のない空返事をして有沢は小さく吐息を零す。
「な、何かな? その気になる反応」
 うろたえる美奈子。有沢は腕組みをして、神妙な顔を浮かべた。
「仲良いわけじゃないから、よく知らないし断言もできないんだけど――。鈴鹿君は、とても、その、そいうことに疎いのじゃないかしら? 悪口ではないわよ。けど、そのデリカシーが少し足りないでしょう?」
 よく知りはしないと言えど仮にも友人の友人、有沢は歯切れ悪く言う。
 美奈子は美奈子で、あぁと合点がいくものだから、それが特に酷いとも思わず、その現状に有沢と同じく苦渋の顔を浮かべた。そういえばと、制服が夏服に変わった日に鈴鹿が”おい、肩から紐がでてるぞ!”と真顔で指摘していたのを思い出した。
 美奈子は額に手をあてて呻く。
「う〜ん……でもでも! 姫条くんが意外とアンティーク好きっていうのも教えてくれたし。それにね、純粋に協力してくれるっていったのが嬉しいっていうか。ね?」
「でも、それって結局何の役にも――」
「あぁっ! 早くドリル終わらせないといけないよね」
 有沢の言葉を半ば強引に遮って、美奈子は机にかじりつく。
 少し意地悪が過ぎていたのは自分でも解っていた有沢は、追及することなく美奈子のシャーペンの行き先を黙って見守った。
 数分後――。
「できたぁ!」
 美奈子は走らせていたシャーペンを止めて、椅子か立ち上がりガッツポーズをとる。
 有沢がドリルにひと通り目を通す。
「これなら大丈夫ね。間違いもないし、お疲れさま」
 有沢は一安心と微笑むと、ぱたんとドリルを閉じて美奈子に手渡す。
「ありがとう。有沢さん」
「どういたしまして」
 言いながら、有沢は自分の持ち物を手早くまとめると鞄へしまいこんだ。
「さて、と。あなたはこれからどうするの? 一緒に帰る?」
 有沢の言葉に、美奈子は教室のガラス窓へ視線を向けた。ガラス窓からは夕日がさしこんでいて、遠くには体育館の姿が見えた。
「自主トレして帰ろうかな? ほら、もうすぐ合宿だし」
 有沢へ視線を戻し、にっと歯を出して美奈子が笑う。
「あいかわらずね。わかったわ、ドリルは私が氷室先生に渡しておいてあげる」
 言うが早いか、有沢は美奈子の手からドリルを取り戻して両手に抱えた。
「え、でも」