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Confetti candy Love(英米)

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ぴたりと閉ざされている扉の前に立ち、深呼吸をひとつ。
まったく物音がしないのだが、寝ているんだろうか。
とりあえず紳士の嗜みとしてノックをするが返事はない。
おい、入るぞと声をかけて扉を開けた瞬間、震え立つような冷気が顔に吹き付けられた。

「―――――アメリカ?」

外と同じくらい冷え込んだ部屋にアメリカの姿はなかった。
姿を追い求めて視線をぐるりと一周させ、窓が開け放たれていることに気づく。
近づいて外を覗くと地面に人が着地したような形跡があることに気付いた。
そしてカーテンを揺らめかせる冷たい夜風に一気に酔いが醒める。
「くそ、あの馬鹿!こんな寒い日にあんな格好で出て行ったのかよ!!」
ここに来た時はいつものジャケットを羽織っていたが、食事のときには脱いで
椅子の背もたれにかけていた。
先ほど確認した時もかけたままであったから間違えない。
あの馬鹿は凍死者が出るほど寒いロンドンの冬に薄着のまま飛び出していきやがった。
いくらあいつが国で体力馬鹿だからって、この寒さが堪えないわけがない。
俺は窓を閉めることすらもどかしくて、そのまま走ってリビングへ引き返す。
リビングではのんびりとワインを飲んでいたフランスがぎょっとしたように
こちらを振り向いた。
「アメリカが薄着のまま外に出やがった!俺は探してくるから適当にしてろ!!」
「え、おい、イギリス!!」
椅子にかけてあったアメリカのジャケットを鷲掴みにして、フランスの声には答えず
俺はまた走り出す。
途中、足が縺れそうになったが構わず、とにかく全力で玄関へと向かった。
アメリカが部屋に戻ってから相当な時間が経っている。
玄関を飛び出して辺りを見回すが、やはりあいつの姿はない。
アメリカの部屋の窓の近くまで来たが、着地した形跡以外は何も残っていない。
(ピクシーに力を借りるか・・・)
額に滴ってきた汗を拭って俺は大声でピクシーを呼びだした。

「ピクシー!ピクシー!!」
「どうしたのイギリス。そんなに慌てて」
空気が震えるように揺らめいた後、姿を現してくれた淡いピンクのドレスを身に纏った
ピクシーが不思議そうな顔で首をかしげる。
「アメリカを見なかったか?あいつ、薄着のまま外に行っちまったんだ」
呼びかけに応え、すぐに姿を見せてくれたピクシーは俺の問いかけに応えるように
真っ直ぐに薔薇園の方角を指差した。
薔薇園にアメリカ?
妙な組み合わせだな。
あいつが花に興味があるようには思えない。
「あの子なら私たちの仲間を追って、薔薇園に行ったわ」
「―――――!あいつ、妖精が見えたのか!?」
普段、あれほど妖精たちを信じず、見えないあいつが見えたというのか?
信じられない。
昔のあいつならまだしも今のあいつに姿が見えるとは思えないのだが・・・・・・
「はっきりと見えたわけじゃないけど、光は見えたみたい」
「そうか。・・・いきなり呼んで悪かったな」
「ううん、いいのよ。イギリスも風邪をひかないように注意してね」
「ああ。礼のミルクは明日の朝食に添えておくよ」
「ありがとうイギリス!」
にっこりと笑ったピクシーはふわりと揺らめいた後、宙に溶けるように帰って行った。
最後まで見送り、俺は視線を薔薇園に向ける。
深夜の時間帯の薔薇園は月明かりと相まって蠱惑的な雰囲気を醸し出していた。
「アメリカ・・・・・・」
走っているうちにぐしゃぐしゃになってしまったジャケットを綺麗に抱えなおして
名を呼ぶ。
幸い、今の薔薇園にそうやっかいなものは植えていない。
アメリカに危害が加わることはないだろう。
俺は微かに残っていた迷いを振りきり、薔薇園に歩を進める。
月明かりに照らされた薔薇園はこんなときでなければ、じっと眺めていたほど
綺麗だった。
綺麗に蕾が開くか心配だったイングリッシュローズもロンドンの寒さに負けず
綺麗に花開いてくれた。
今度、薔薇の妖精にも礼を言わないといけないな。
とりあえずは、と薔薇を軽く撫でて労わってから奥の方に視線を向けると
俺と仲のいい妖精の中でも一番悪戯の好きな妖精がふわりと飛んで行くのが見えた。
アメリカはきっとあいつを追いかけて行ったに違いない。
ふわりと飛んで行った光はすぐに見えなくなったが問題はなかった。
何せここは俺の作った庭だ。
夜中でも迷う心配などない。
俺は迷うことなく真っ直ぐに最奥の苑を目指した。
最奥にたどり着くまでは人一人が通るのがやっとの道を辿り、最奥に到達すると
5人ほどならばゆったりと座れるようなスペースを俺は作っていた。
ここを作ったのはちょうどアメリカを発見した頃で、大きくなったあいつと
ティータイムを楽しみたいと願いを込めて作った場所でもあった。
だが無駄にデカく、情緒の欠片もなく育ったあいつが薔薇を眺めながらの
ティータイムなどに付き合うはずもなく、一人きりでティータイムを楽しむときに
何度か使っただけだった。
他の奴らと使えばいいんじゃねえかと思ったこともあったが、アメリカのために
作ったこの場所を他の奴に見せるのはなんとなしに嫌で結局ここを知るのは
俺と妖精たちだけだった。
作品名:Confetti candy Love(英米) 作家名:ぽんたろう