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あい?まい?みー?MINE!! 番外編

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クリスマス・正月編




 軽快な音を立てた方を見遣れば、正方形の真白い箱。
静雄はソレを見て、次いで机上に箱を置いた人物を見上げた。
青年は、ニコニコと笑っている。

「竜ヶ峰先生?」

「メリークリスマス、静雄君。」

彼、竜ヶ峰帝人は、そう言って鞄を漁り、綺麗にラッピングされた長方形の何かを取り出した。
はい、コレ。差し出した物を受け取り、静雄は眉をハの字に下げて帝人を再び仰いだ。

「えっ、と・・・」

「大した物じゃないけど、クリスマスまで勉強を頑張ってる静雄君に、僕からプレゼントだよ。」

開けてみて、と促す帝人は、至極嬉しそうである。
喜びよりも困惑が勝る静雄は、言われるがままに包装紙を丁寧に開いた。
所々破けてしまっているものの、静雄にしてみれば存外に神経を使った作業と言える。

「・・・・・・あっ・・・・・・」

「色気が無い品物で悪いけど。」

帝人は静雄の反応に苦笑を返した。
中から出て来たのは、シャープペンや鉛筆、消しゴムにノートといった勉強に必要な物一色と、彼が受験する予定の高校の過去問題である。

「静雄君、ひょっとして買って無いんじゃないかなぁ、と。あっ、被ってたら御免ね。」

そして帝人は、置かれたままの白い箱に手を伸ばし、カパリと開いて静雄に見せた。

「で、プレゼントだけじゃあまりにも味気無いから、クリスマスらしく、ケーキを用意してみました。」

まじまじと中を覗き込む。
色取り取りに鮮やかに飾られたケーキは様々な種類が用意されていて、どれもこれも大変美味しそうである。
呆然と眺めて微動だにしない静雄に、帝人は少し焦った。

「御免、嫌いな物あった?前に甘い物好きだって言ってたから、大丈夫かなって思ったんだけど…無理なら僕持って帰るし。」

そう言って蓋を閉めようとする帝人の行動を、慌てて静雄は阻止した。

「いっ、要るっス!食べます!!」

「本当!?あぁ、良かったぁ。」

ホッと息を吐く帝人の姿に、静雄はつい苦笑を洩らしそうになって必死で堪えた。
何気なさを装って持って来たケーキは、以前、静雄が帝人と2人で路を歩いていた時、偶々通りかかった洋菓子店に置かれていたものである。
陳列されていた商品の魅力に惹かれてつい目で追ってしまったのだが、そのことを帝人に一言だとて言ったことはない。
ない筈なのだが、恐らく、帝人は静雄のそうした些細なことをきちんと見てくれていて、押しつけがましくないように細心の注意を払いながら、静雄に多くの物を与えてくれるのである。
物然り、それ以外も然り。
童顔であることに触れると怒られる(露骨に怒りを示すことはないのだが、寧ろ笑顔で放たれる怒気のオーラの禍々しさといったら無い)ので言わないが、彼が大人だな、と静雄が感じるのはこのような時だ。
そのことに少しの寂しさと理由不明の苛立ちを感じることもあるのだが、概ね、静雄が帝人に抱く感情は好意である。

「じゃあ、ちょっと休憩にして、皆でケーキ、食べよっか。お母さんと幽君も居るよね?」

優しげに微笑み、静雄を促した帝人は、少年を伴って階下へと繋がる階段と降りて行った。



 暖かいリビングで一服した後、再び彼らは静雄の部屋で勉強を開始した。
余談だが、静雄の部屋にはエアコンや暖房器具といったものの類が一切置かれていない。
エアコンが元より付いていなかったのだが、静雄の母親が出してくれると言ったヒーターは、帝人が断ったのだ。
部屋を暖めないことで、短時間で集中して内容を叩き込むのだと。
静雄自身は身体が人一倍丈夫で新陳代謝も良いので、風邪をひいたことが無いどころか指先が冷えることも滅多に無いのだが、対する帝人のひ弱な身体はそれらに対する抵抗力すらも低そうだ。
現に彼の指先は真赤だし、唇は対照的に真っ青である。
それでも、帝人は笑うのである。そうした強さを、静雄は尊敬していた。
静雄の母が淹れてくれたコーヒーのマグカップを両手で包みこみ、ちびちびと飲む帝人の表情は幸せそうだ。
静雄の机の上には同じマグカップにココアが入れられていて、ホカホカと湯気が上がっていた。
ちなみに、静雄も同じものを飲もうとして、苦さが受け付けなかったので断念した経緯がある。
帝人がコーヒーを口に入れる度に少しだけ苦い思いをしていることは、静雄の心の中だけの秘密である。子供扱いされそうなので。

「はぁ、もう、年末かぁ。」

カレンダーを見て、帝人がポツリと呟いた。
静雄もそれに倣うようにして、ノートからカレンダーへと視線を移す。
今まで然程意識などしていなかったが、言われてみれば確かに、あと数日で1年が終わる。
「早いなぁ。僕も静雄君も、あと数カ月で卒業だよ。」

嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちで帝人は笑った。
同じ様に、静雄も奇妙な顔でぎこちなく笑う。
その胸に蟠る想いは何か、まだ知らない振りをしていたくて、無理に気持ちに蓋をした。

「・・・そっスね。」

「まっ、その前に静雄君は高校受験があるし、僕は卒業試験があるし。」

まだまだ気は抜けないね、と、苦笑する帝人の表情はあどけない。
来年4月から社会人となる筈の帝人は、今静雄の制服を着ても違和感などないだろうに。
だが、見た目の軟弱さとは違い、彼の内面はしっかりしているので、静雄はあまり心配はしていない。
寧ろ、性質が正反対の静雄が、帝人を始めとした静雄の関係者(身内や担任)に心配されている。

「先生とはまだ初めて会って3カ月も経って無いんスね。」

「あぁ、そうだよね。なんか、結構長い付き合いみたいに感じるんだけどなぁ。」

あはは、と笑い、帝人は静雄のノートを覗き込んだ。
1つ1つ、丁寧に解答をチェックしていく帝人の旋毛を見下ろしながら、静雄はどう切り出そうか、悩んでいた。
言って困らせたりはしないか、迷惑ではないのか。
仮に迷惑だったとして、はっきりとした言葉では言わないだろうけれど、それでも、そうした雰囲気を感じ取ってしまったらショックだ。
悶々と静雄が考えている間に、帝人の動かしていた右手が止まる。
ハッと我に返って静雄がノートに視線を戻すと、大きな花丸が書かれていた。

「おめでとっ、静雄君。本当に勉強頑張ったね、全問正解!!」

晴れやかな笑顔が、ある意味静雄にとっては花丸のようなものだった。
その言葉と笑顔が静雄の背を押した。
コクリ、と1つ唾を呑み、ギュッと拳に力を入れ、帝人の名を呼ぶ。

「ん?」

「あの、その・・・・・・」

まごついてしまう静雄を、不思議そうに見る帝人は、しかし決して先を急かさない。
落ち着けと、自身に言い聞かせて大きく深呼吸をした静雄は、意を決して喉を震わせた。

「あの!一緒に元旦に初詣行かないっスか!!」

力を込め過ぎたせいか思った以上の声量となってしまい、言った本人は勿論、真向かいで受け止めた帝人も驚いて目を瞠っている。

「大声出してすんません。」

「あっ、ううん、大丈夫。ちょっと驚いただけだし。」

ばつが悪そうに肩を竦める帝人は、悪戯が見つかった子供のような顔をして静雄を上目遣いに見た。

「うん、御免。本当大丈夫。それで、その―――・・・」

「・・・・・・やっぱり、俺とじゃ嫌ですか。」