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スターゲイザー/タウバーンのない世界

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そうやってスガタに触れられる姿を、タクトに見られたくなかった。
ワコの体がきゅっと緊張した。

「苦しいみたいだね。」
それはワコにしか聞こえない声だった。
ドキっとしてワコはスガタを見上げた。
その瞳はまっすぐワコを見ていた。とても間近で。
ワコは視線が泳ぐのを自覚した。
頭の中で色々な事が廻っているのだが、ひとつも思考がまとまらない。
許嫁はワコより先に、ワコの恋心に気付いていたのを唐突に思い出した。
今更になってスガタが、どんな風にそれを知ったのか、どんな気持ちで知ったのか不安になった。

スガタはどうだろう?
ワコを。
許嫁と思っているのだろうか。
「やっぱりなれないんじゃない?」
言葉を失っているワコにスガタは、今度はあきらかな疑問系で質問した。
「え・・・?」
「帯、苦しくない?」
ようやくそれで、自らの勘違いに気づいた。
「あー、やっぱりそれってキツイ?」
タクトがスガタの肩の後ろから顔を覗かせた。
「あ、いや、まあ苦しいけど、そこまで締めてないから。てゆうか・・・・あの、うん、大丈夫!」
「そう?」と涼しく、スガタが微笑んで。

夏祭りの賑やかな音を通り過ぎながら、スガタは少し気分がいいようにも見えたし、少し疲れているようにも見えた。
この人の本心がどこにあるのか、ワコには分からなかった。
「僕はみかん派だな。」
ぼそっとスガタが唐突に言う。
「えっあんずでしょ!!」
タクトの声に、ああ、あんず飴のことか。と納得した。
「私もあんず。」
そう口にすると、自分が今たった一瞬の16歳の夏休みにいることを思い出した。
そうもしかしたら一生かかっても、今日の問いの答えに出会わないかもしれない。
それなら今ある時間を共に楽しく過ごす方が優先だ。
ワコはとりあえず、絶対食べたかったあんず飴に思いを馳せた。

地上で気持ちが飛び交うので、夏祭りの夜には星達も静かだ。