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スターゲイザー/タウバーンのない世界

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そんなふうにおもってたの?






今年の残暑は厳しかった。
季節はまだまだ夏といった暑さだったが、太陽の日差しは序所に移ろいを見せ始めていた。
タクトは実力テストの結果を眺めている。
夏休みの友人のリカバリーのおかげで、成績表の結果はオールAと言った感じ。
苦手な物理以外は全て一桁の順位だった。
まったく力を入れていなかった現代国語が学年1位になっていることを不思議がりながら、数学が3位であることに悔しさを感じていた。
スガタに勝てなかっただけでなく、もう一人自分より上がいたということだ。
「タッくんどうだった?」
「良かったよぉ、スガタ先生のお影で。でも物理はダメだなあ〜。」
「分かった、次は物理ね。」
そんなことをスガタの席周りに集まって話していると、隣の固まりが「俺にも教えてよ。」「ほんと今回ヤバかった。」とかスガタに声をかけてきた。「休み時間なら教えるけど、放課後はタクトで手一杯。」と答え。「休み時間だってタクトで手一杯じゃん。」とクラスメイトが笑った。

2学期の学園は行事ごとにざわめきはじめていた。
部活動のある生徒は学園祭の準備をし、実行委員会が設置されて放課後や休み時間は忙しなかった。
「体育祭、男子は旗なんだって?」
「そう、なんか指揮に選ばれちゃって。」
「二人とも?」
「ああ。」
タクトとスガタの髪の色が旗のシンボルカラーと同じという理由で、1組の担任が安直に二人を使命したのだった。もちろん担任としては、それだけで決めた訳ではないのだが。
「勘弁してほしいよ。」
「楽しそうじゃん!」
とはいえ二人は授業以外で旗の指導を受けることになった。

校庭では旗を見に来たクラスメイトや、外で休憩をしていた生徒が、なんとなく体育祭の指導を受ける二人を眺めていた。
要はマスゲームに旗を加えた集団遊戯なのだが。
「お前達が持つのはコレな。」
そう言って体育教師が出して来たのは、他の生徒が持つものより長さと大きさのある旗だった。
「・・・え?それ持つの?」
タクトが聞くとにやりと笑って手渡した。
「・・はっ。」
スガタは手にして失笑。
「っおんも!!!こんなの振れないって!!」
タクトは笑い声。
「ちなみに本番は刺繍のしてある旗だから、もっと重いぞ。」
「えええ!!!!」
「筋肉つくぞ〜!持ち方から教えるから安心しろ!」
と嬉しそうに教師が言った。

「キツそう〜。」
ワコはルリとそれを眺めていた。
気付けば女子のギャラリーが増えている。なにやら上級生もいるようだった。
イケメン二乗の法則といえど、タクトの人気にワコは滅入る。
制服のブラウスを腕まくりして、巨大な赤い旗を掲げる姿はたしかに様になりすぎていた。
タクトは旗の重みに最初はフラフラしていたが、数分も経たないうちに一回転させてみた。
おおお!と1組の男子がどよめいた。
ほぼ中央に近い場所にいるので、話声はまったく聞こえないが、近くにいたスガタが何か怒っている。
多分いきなり回すな危ない。とかそういったことだろうと想像がついた。
10分もしないうちに教師は立ち去って行った。
グラウンドに残された二人は距離を取り、声を掛け合って向かい合う。
と、二人が同時に旗を振った。
右へ、左へ。
インフィニティをユニゾンする。
二度繰り返して同時に左脇に旗を抱える。
あまりにも揃っていたので、それだけの動作すら美しかった。
わあっと3年生らしい女子がはしゃぐ。
「今年の体育祭まじ楽しみ!」「あの二人ほんと保養だわ!」「鋭気養える〜!」とお姉様方。
それを見てルリが「競争率どんどん上がってるわ。」と呟いた。
二人はしばらく旗を振っていたが腕が疲れたらしく、手首を振ったり二の腕を揉んだりするしぐさが見られた。
その日はもう終えるらしく、旗を小脇に抱えてスガタがタクトに近づいた。
休み時間もそろそろ終わる頃だ。
二人は側により二言三言交わすと、体育倉庫へ向かおうと体を反転させた。
させ、ようとした。

瞬間タクトの持っていた旗が手からすり抜けて倒れそうになった。
倒れた所で周りに生徒もいなかったが、スガタは反射的にソレを掴んで支えた。
すると、今度はスガタの旗がバランスを崩し、タクトが前のめりにそれに手を伸ばし掴んだ。
「きゃっ!」と誰かが叫んだ。
叫びもするだろう。
ほぼ身長差のない二人が向かい合った状態で、互いの旗を支えようとしたので急接近し、顔が重なっているように見えた。しかもおそらく避けようとしたのだろうが、顔の傾きが逆にキスしているように見えたのだ。
不憫な事故に男子はどよめき、女子は歓喜する。
一秒、二秒。
二人はフリーズした。

スガタとタクトは数ミリのところで接触を免れていた。
いや、正しく言えば瞬間に離れただけですでに接触していた。
ビックリしたタクトがスガタをみると、超至近距離でスガタと目が合った。
「っふ。」
「いや、よせお前。」
スガタが言った短い言葉の意味は瞬間に分かった。
だがタクトは余計におかしくなってしまう。
今両手に旗を握った二人は、どちらの旗も地面との接着面がわずかで、どちらも動かせない状態だ。
息を合わせて片方ずつ体に引き寄せなければ、旗が倒れ持ち手の部分がぶつかりそうだった。笑うとバランスを崩しかねない。
しかも距離が間近すぎるので笑いで震えると、スガタの頬に肌が触れた。
「タクト!」
今力が抜けるとまずいのに。はずみで唇が触れたことがおかしくてしかたなくなってきた。距離が近すぎることにも、タクトは震えてしまう。
だめだ!
スガタは必死に無理な体制の手に力をこめたが、左右同時にバランスが崩れもう無理だと悟った。
なによりタクトの笑いが伝染し、支えきれないと思ったのだ。
クワンクワン!
と鈍い音をたてしなりながら、二本の旗は勢い良く対角線に倒れた。
「っひゃひゃひゃ!!!」
「あっはははははは!!!」
タクトは離した手でスガタの両腕を掴むと、その肩越しに大笑いした。
スガタはタクトの背中を抱いて、空を仰いで笑う。
ツボにはまったらしく二人はそのまま腰砕けて、どちらともなくしゃがみ込んで腹を抱えた。
タクトは転がって笑っているし、スガタは頭を抱えて笑っている。

「・・・あれは、しちゃったね。」
ワコの言葉にルリが振り向く。
「えっ!そうなの?」
「うん、しちゃったと思う。」
完全に二人の世界でツボにはまってしまっているので、こうなってしまうと眺めていたギャラリーも面白みがなくなったようだった。
ころげる二人を尻目に、時間を気にして校舎へと帰り始めた。
ワコはしばらく見守っていたが、まだ続きそうだったのでルリに「いこっか。」と声をかけた。
スガタは笑っている場合じゃないと思いながら、タクトの笑い声がおかしくて仕方がない。タクトは「事故った!」とけらけら笑い続けている。
予鈴の音が人気のなくなった校庭に響いた。
「っは!・・・はあ!・・帰るぞタクト!」
スガタが力なくタクトの腕を掴みひっぱった。
タクトはタコみたいにふにゃふにゃと起き上がり、そのままスガタに抱きついた。

うわ。
スガタの肩に腕を回しもたれる。
スガタは反射的に、もたれかかってきたタクトの体を抱えて腰に手を回してしまった。
・・・懐かしいな。
とスガタは思った。