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ふざけんなぁ!! 4

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その馬鹿も現在、頭を麻酔抜きで縫われた挙句、包帯ぐるぐる巻きにされ、胡坐をかいて座っている、静雄の真後ろの布団に寝かされていて。


「首ナシ、お前なんかに、もう絶対仕事回さないからね!!」
『黙れ強姦魔!!』
「そうだよ。治療して貰えるだけ、ありがたいと思ってよ。私のセルティの妹分に、なんて事したんだ、この性犯罪者」


12階から突き落とされ、セルティのバイクで轢かれたというのに、臨也は骨も折りもせずに、後頭部の傷と、静雄に喰らった顔面への一発で、目の周りに青タンを一個こさえただけなのだ。
そしてブツブツ悪態つける分、彼もいい加減、人外に属する化け物である。


『静雄、お前も今日はここに泊まっていいくといい。帝人ちゃんが心配だろ? それから、簡単な夜食ぐらいなら作ってやるから、何が食べたい?』
セルティの気遣いは嬉しかったが、怒りで腸が煮えくり返っており、とてもメシを飲み込む気にはなれなかった。

「首ナシ、俺、冷凍食品とか嫌いだからね。後、誰が作ったか判らない、ジャンクフード系も駄目だから」
『お前には聞いてない。とっとと出て行け!!』
「そうだよ、セルティの望みは私の望みだ。早く帰れ強姦魔」
「誰のせいで俺が怪我したと思ってんの?」
『自業自得だ、ずうずうしい!!』


静雄の背後で、ノミ蟲が絶好調で喚きたてる。
「………ウゼェ………」

ぶちぶちと、己の額に血管が浮き出てきた。
そんな自分の形相を見て、気遣い抜群のトムがあわあわと立ち上がる。

「門田、手間かけてすまねぇが、折原と俺を送ってくれ。ほれ、お前もとっとと起きろ、行くべ」
「ちょ、俺に触るな!! 俺、怪我人!!」

ぎゃーぎゃー喚く臨也の口を手の平で覆い、門田と渡草を助手に使い、三人がかりで引きずっていった。

世話焼きなトムの性格なら、臨也をどっかの路上に捨て、置き去りにするなんて芸当はきっとしないだろうが、みすみす見過ごさざる得ない現況が悔しい。
帝人の為、静雄自身の幸せの為、あのノミ蟲はいつか排除しなければならない。
絶対にだ。



★☆★☆★



「おい臨也。お前何でそんなに、静雄の幸せを妨害するんだ?」
「煩いなぁ、ドタチンには関係ないじゃないか」
「高校時代から足掛け八年、巻き込まれ続けている俺達の迷惑を考えてみろ。静雄を不幸にしたって、お前に何のメリットがある? もう嫌がらせは止めてやれ。洒落にならねーべ」

門田とトムに挟まれ、くどくど説教を受けていても、臨也の心の琴線に触れる事は一切なかった。
『何故静雄に嫌がらせをするのか?』と問われたとしても、そんなの、『嫌いだから』に決まっている。

「やっと竜ヶ峰と両思いになれたんだから、あいつの純情の邪魔してやるな」
ドタチンの言葉に、鼻で笑った。
「あははははは、何が両思い? へたれな静ちゃんってば、まだ帝人ちゃんにさ、『俺とお付き合いしてよ』の一言すら、言えてないじゃないか」

本当か……と、びっくり目で、門田達バン組が、一斉に田中トムを見る。
あの狂乱の夜の出来事に巻き込まれた面々にとって、二週間も時間があって、何をやっているんだと、目が痛い程に物語っている。
もう既に、静雄の父親的ポジションに鎮座したかれの上司は、顔を手で覆いながら、こっくりと首を縦に振った。

「それに帝人ちゃんはさぁ、吐いてる最中、母親と紀田君には助けを求めたけど、静ちゃんの名はヒトッコトも呼ばなかったんだよ。それに、例え初心な静ちゃんが帝人ちゃんに告白し、お付き合いが奇跡的に始まったとしたってさ。

女は例え恋人がいても、後から出てきた男に鞍替えする確率は、何と八十パーセント。そんな統計が出ているんだよ。

勝算がこんなにあって、しかも殺したいぐらい嫌いな静ちゃんをさ、不幸のどん底に突き落とせるのなら、俺が遊ばない道理はないよね。
あはははははは、楽しいなぁ♪ 楽しいねぇ♪ 」


「折原、お前マジ最悪だ」
「臨也、お前いい加減にしねぇと、俺も知り合いの縁すら切るぞ」
「ホント、最低っすね」
「イザイザ、あんたは沢山いる信者と遊んでた方が、世の為人の為だよ」

運転に集中していた渡草からの罵声は無かったが、彼もきっと皆と意見は同じだろう。


だが、第三者に何を言われたとしても、臨也には一切関係なかった。
それに帝人だって、社会的に敗北者となっている静雄なんかに尽くすより、情報屋、折原臨也の駒になって働く方が断然幸せな筈だ。


「待っててね帝人ちゃん♪ 俺が直ぐに君を手に入れてあげるからね♪♪」
「反省しろ、この馬鹿男!!」

懲りない男は、門田に思いっきり小突かれつつも、高らかに笑い続けた。


作品名:ふざけんなぁ!! 4 作家名:みかる