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GIFT

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泣いた後布団をかぶって寝てしまって、とうとう俺は翌日の夕方まで起きなかった。この上ないってほど腹が立っていたんだが、起きたとき、そういう感情は少し薄れていた。代わりに自分を情けなく思った。
また寝てしまおうかと思ったが、連日寝すぎでこれ以上眠れそうになかった。俺は適当に着替えてから下の階に下りた。

姉ちゃんはじっとテレビを見ていた。ニュースをやっていた。テレビ画面に映っていたのはグレン島の様子だった。数日前から活動を始めていた火山が噴火したらしい。最近テレビを見ていなかったから初めてそのことを知って、驚いて、外に出た。マサラの海岸へ向かう。






南の空は暗くて、時折赤い光が壊れたストロボのように不規則に弾けて、島がまとう煙の色を赤く変えていた。ニュースでは、活動する火山の様子を遠くから映し出すにとどまり、街の様子がどうなっているかは不明だった。住民はすべて避難していて無事だとニュースで言っていたが、火山灰に覆われた暗い空を見ては、誰もが言いしれぬ不安を抱くだろう。灰はマサラの海岸にまでは到達していなかったが、普段は明るくて人が沢山泳いでいる海水浴場に人はいなかった。マサラの住人たちもどことなく沈んだ気持ちのまま、事態を見守っているようだった。俺も例外ではなかった。見ていることしかできない。それでも俺は居ても立ってもいられなくて、ピジョットをボールから出した。俺が「いけるか」と聞くと、「仕方ない」とでもいう風に、ピジョットは一鳴きした。無理させてごめんな。
限界まで高く飛び上がり、火山灰が立ちこめている場所を見下ろす。少しでも近づこうとすれば煙たくてしょうがないし危険だ。煙と灰が島とその周りの海を取り巻いている。もっと近づきたいが無理はしないほうがいい。俺はあきらめてマサラに戻った。



噴火は数日しておさまった。俺は姉ちゃんと一緒にニュースをじっと見ていた。



噴火を見に行った日以来俺は普通に生活するようになった。朝早く起きて、飯を三食食べて、修行して、ポケモンに関する本や論文を読んでから健康的な時間に寝る。何日も家に篭りっきりだったのは小さいとき流感にかかって以来だ。自分らしくもない。泣くなんてことはあれっきりだ。そう思えるくらいには余裕が出てきていた。すこし時間が経ったからだと思う。

そうしているうちに、ポケモンリーグから手紙が届いた。
内容はトキワのジムリーダーを務めて欲しいというものだった。俺はどうしたらいいか判断しかねた。まだ気持ちの整理がついていないというのもあったし、自分はまた旅に出るのだと漠然と思っていたから、一つのところに留まることを想像できなかった。とりあえず、回答の期限はずっと後だったので、手紙を封筒に戻し、しまおうとして自室の机の引き出しを久しぶりに開けた。そしたら奥から写真が出てきた。旅に出ていた間、姉ちゃんが入れたのだろうか。何枚かあって、見てみると俺一人で写っているのが殆どだったが、俺とレッドの2人で写っているものが2枚あった。どちらもおそらくポケモンを貰った日の写真で、じいさんの研究所で多分姉ちゃんが撮ったやつ。俺はヒトカゲを、隣のレッドがフシギダネを抱いている。一枚はふたりとも笑っていて、もう一枚は不機嫌そうに向き合いケンカしそうになっている。おそらくすげえくだらないことが原因だ。

この写真のころは無邪気に、俺が一番になるのだと思っていた。
物心ついたころからレッドは格好の競争相手で、学校の成績とか身長や体重とかの些細なことまで競い合って勝ったり負けたり。ポケモン貰って旅に出てからも変わらず俺たちは競い合った。ポケモンバトルについても最初は互角だったんだけど、いつからか俺は負け続けるようになっていた。俺の小さな世界ではそのころ、ポケモンバトルがすべてだった。だからそこで俺がレッドより劣っているなんてことは嫌だった。俺のちっぽけなプライドが過剰に反応した。そこからあいつに勝つことに執着するようになったのだと思う。



厳戒態勢が解かれて、グレン島に出入りできるようになったと聞いたので、興味がわいた俺は出かけることにした。

作品名:GIFT 作家名:よいこ