ろぐぐぐ!!
*臨帝②
臨也さんのスペシャルボイスを聞いて浮かんだお話。
ただし冒頭の台詞を拝借しただけで内容には掠りもしていません。笑
そして相変わらず途中で飽きるという←
『五十とか六十の俺って想像できないんだよね』
『ひょっとして俺、それまで…生きてらんないのかな』
ずっと前、己の助手に言った言葉をふと思い出した。
特に意味は無く、だけど決して冗談だけで言ったのではないその言葉。
馬鹿みたいな考えだと思う反面、何故かそれを確信している自分もいた。
俺は異形をこの身に宿してもいなければ、常識を超えた怪力や肉体を持っているわけでもない。
何処までも普通の"人間"だ。
車に衝突されたり、ナイフで刺されたり、拳銃で撃たれたりすれば、呆気なく死ぬだろう。
その上この職業、理由は完璧。
だけども。
「まさか相手が君だとはねぇ」
「……何の、話ですか」
「いや、こっちのことさ」
深夜の十二時も過ぎてしまった頃。
池袋の街から遠く離れた場所にある廃工場に折原臨也はいた。
一人の、高校生と一緒に。
「随分と余裕なんですね、考え事なんて」
「そうでもないよ?これでもドキドキしてるんだから。だって好きな子に乗り上げられてるんだもん」
「……本当、冗談が上手ですね」
「おや、信じてないね」
「信じてるなら、こんなことしませんよ」
「そりゃそうだ」
今、臨也はコンクリートの床を背に天井を見上げている。
手っ取り早く言えば床に寝転がった状態なのだ。
そんな臨也の腹部辺りに、帝人は膝立ちになって臨也を見下ろす。
その手には些か不釣合いなナイフが握られており、月の光に当てられきらりと光った。
(どうしてこんなことになったんだっけ)
(帝人君にメールで呼び出されて、待ち合わせして、コーヒーショップで休憩して……そこから記憶が無い)
(じゃあ電話で一回席を立った時にでも薬を盛られたかな)
(情報屋ともある俺が情けない)
(まぁ、そんなことどうでもいいや)
思考を途中で中断し、臨也はその薄い唇に緩い弧を描く。
そして赤色を孕んだ双眸でじっとりと目前の子供を、帝人を見上げた。
対する子供は冷静に臨也を見下ろしているが、ずっと人間を観察していた臨也には分かる。
それは、必死に繕われているものだということ。
手に持つナイフは小刻みに揺れているし、呼吸の感覚も短く速い。
「殺さないの?帝人君、」
「っ、」
「大好きな帝人君のためにこうやって大人しく待ってあげてるのに。早くしないと俺、逃げちゃうよ?」
「………さい、」
「?みか」
「……さっ、う…さい、うるさい、うるさいうるさいうるさい!!」
ぐい、と手に力を込めれば、ナイフの刃先が首に触れ、赤い線をつくった。
それでも臨也は表情を崩れることはなく、変わらぬ笑みを湛えたままだ。
対する帝人は先ほどまでの冷静さが失われ、様々な感情を複雑に孕ませた幼顔をぐしゃぐしゃに歪ませた。
深い青を宿した双眸には薄い水の膜が張ってあるのが分かる。
ちょっとした衝撃で決壊するであろう、ぎりぎりの線でそれを必死に耐えている彼が、とても可笑しく、そして愛しかった。