no title
「さっきの感動を返してくれないかしら・・・」
机につっぷした銀髪の男を見て、呟く。
彼はまたあれからさんざん愚痴と飲酒を繰り返して挙句の果てに、机と顔面で挨拶をして眠り込んでしまった。
頭をばしばし叩いたり足を蹴ってみたりしたものの、一向に起きる気配はなくて。
まさかこのまま放って帰るわけにもいかず・・・、が今の状況である。
それにしても。
彼が惚れた人とはどんな人なのだろう、とふと思う。
ククールを振ったということは至極まともな人物であることは間違いない。
そしてここまで惚れこむということは、余程の美人かそれともかなり内面ができた人か、もしくはその両方か、ということになるのだろう。
そんな人、最近見たことがあったかしらと考えては見たが全く浮かばない。
気になるわ、と再度記憶を思い起こしていたところで、思考は遮られた。
むにゃむにゃという謎の寝言に、だ。
もう呆れることすら通り越して、無言でちらとククールを見やると、彼はなんだか嬉しそうに微笑んだり、時折苦しそうな表情をしながらそれでも安眠を続けている。
あんたって寝てるときも馬鹿なのね、と端が聞けば酷なことを言って、頬をひっぱる。
――あ、なんかよく伸びるわ。
おもわぬ発見にほんの少し楽しくなりぶにぶにとひっぱっていると、彼がまた何か寝言を呟いた。
どうやらそれは、人名のようで。
え、なに?と聞き返すと――まさかそれが聞こえたわけでもないだろうけれども、彼はもう一度はっきりその名前を言った。
「エイト・・・」
・・・エイト? なんで、エイト?
あまりに予想外の名前が出てきて、なんの夢を見てるのかしらと疑問に思って首を傾げていると、また彼はエイト、と同じ名前を呼んだ。
そんなに二人は仲がよかったかしら、と表情を覗き込んだ瞬間、ゼシカの動きは止まった。
ふわりと、まるで愛おしいものに対するような、微笑み。
その微笑みのまま、また彼は先程の名前を繰り返した。優しい声で。
「・・・・・・・・・」
長い長い、沈黙。
たっぷり1分は固まったところで、ようやくゆるゆると首を動かしてその光景から目を逸らす。
・・・・・・ええと、ひょっとして?
いやいや、ありえないわよね、それは。うん。
頭に浮かんだ考えを必死にかき消してはみるものの、第六感はそうにちがいない、と告げている。
やっぱり連れ戻しになんか来るんじゃなかったわ、なんて遅すぎる後悔をして。
ええと。
とりあえず、は。
「すみませーん、お酒ください。・・・うんと強いやつ」
お酒に逃げることに、しておこう。
机につっぷした銀髪の男を見て、呟く。
彼はまたあれからさんざん愚痴と飲酒を繰り返して挙句の果てに、机と顔面で挨拶をして眠り込んでしまった。
頭をばしばし叩いたり足を蹴ってみたりしたものの、一向に起きる気配はなくて。
まさかこのまま放って帰るわけにもいかず・・・、が今の状況である。
それにしても。
彼が惚れた人とはどんな人なのだろう、とふと思う。
ククールを振ったということは至極まともな人物であることは間違いない。
そしてここまで惚れこむということは、余程の美人かそれともかなり内面ができた人か、もしくはその両方か、ということになるのだろう。
そんな人、最近見たことがあったかしらと考えては見たが全く浮かばない。
気になるわ、と再度記憶を思い起こしていたところで、思考は遮られた。
むにゃむにゃという謎の寝言に、だ。
もう呆れることすら通り越して、無言でちらとククールを見やると、彼はなんだか嬉しそうに微笑んだり、時折苦しそうな表情をしながらそれでも安眠を続けている。
あんたって寝てるときも馬鹿なのね、と端が聞けば酷なことを言って、頬をひっぱる。
――あ、なんかよく伸びるわ。
おもわぬ発見にほんの少し楽しくなりぶにぶにとひっぱっていると、彼がまた何か寝言を呟いた。
どうやらそれは、人名のようで。
え、なに?と聞き返すと――まさかそれが聞こえたわけでもないだろうけれども、彼はもう一度はっきりその名前を言った。
「エイト・・・」
・・・エイト? なんで、エイト?
あまりに予想外の名前が出てきて、なんの夢を見てるのかしらと疑問に思って首を傾げていると、また彼はエイト、と同じ名前を呼んだ。
そんなに二人は仲がよかったかしら、と表情を覗き込んだ瞬間、ゼシカの動きは止まった。
ふわりと、まるで愛おしいものに対するような、微笑み。
その微笑みのまま、また彼は先程の名前を繰り返した。優しい声で。
「・・・・・・・・・」
長い長い、沈黙。
たっぷり1分は固まったところで、ようやくゆるゆると首を動かしてその光景から目を逸らす。
・・・・・・ええと、ひょっとして?
いやいや、ありえないわよね、それは。うん。
頭に浮かんだ考えを必死にかき消してはみるものの、第六感はそうにちがいない、と告げている。
やっぱり連れ戻しになんか来るんじゃなかったわ、なんて遅すぎる後悔をして。
ええと。
とりあえず、は。
「すみませーん、お酒ください。・・・うんと強いやつ」
お酒に逃げることに、しておこう。