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花村見舞い観察記

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クマが一番先にメールを送った『センセイ』は、部活が終わった後でようやく受信に気がついた。

『ヨースケがおカゼでピンチクマ!』『みんなきてほしいクマ!☆』

朝に陽介本人から届いたメールでは、熱も微熱程度でむしろ学校を堂々とサボれるのを喜んでいる様子だったのだが。
特捜隊の面々ならとうに集まっている頃だろう。自分が一番最後かもな、と思いながら花村宅のドアを開けると、


当の陽介が玄関先に転がっていた。


ケータイを開く。
「もしもし叔父さん、陽介ん家で殺人事件が起きてる」
「死んでねえっつーのぉ…」
これ今日何度目だ、と陽介はつぶやいた。



《 case7:相棒の場合 》


「何やってんだ」
「死亡フラグを追い帰したら力尽きた…」
「…………?」
待ってみても、陽介はそれ以上説明する気はないようだった。あのな陽介、いくら『相棒』でも、それだけで状況がわかるようなテレパシーは持ってないんだが。
「つぅかぁ、ぶっ倒れてんだからさー、もっとこぉ、心配してくれてもいいんじゃねぇのぉ?」
「ほんとに風邪のせいなのか?今の状態」
心配と言われても。仰向けに寝転んで、自分を見るなり「よーぉ」と片手を上げてへらっと笑うヤツを心配しろと言われても。むしろ行動は酔っ払いみたいなんだが。
「風邪なら布団に戻れって」
ほら起きろ、と床の陽介を蹴る真似をする。
あまりリアクションはなく、薄くまたへらへら笑うだけ。
「陽介、」
起こすように腕を叩く。こんなとこで寝たら風邪が悪化するぞ。
それにしても、今日のこいつはやけに間延びした喋り方をするな…と考えていると、陽介が一言。

「ん〜……いいやぁ、床冷たくて気持ちいい………」


あ、こいつ本気でやばい?

「おい、」叩いていた腕を今度は掴んで、上半身を起こしてみる。ぐにゃりと力の入ってない体が引きずられるように起き上がった。
「部屋に戻るぞ」
頬を軽く叩く。瞬間的に、じくりと指に伝わる熱。―――それが、想像以上に熱い。
当の陽介は、いまや「んー……」と漏らすだけになっていた。先程まではまだ、口だけは滑らかに動いていたのに。
「立つぞ。部屋までは頑張ってくれ」
自分も立ち上がって、テレビの中でするように腕をつかんで引っ張り上げようとする。
が、肝心の陽介に立つ気力がなく――いや、立とうとはしてるのだが身体に力が入ってないようで。
さすがに脱力した男一人を片腕で持ち上げる腕力はなかった。しっかりと両手で陽介の腕をつかみ、足を踏張る。
「―――ん、の!」
ぐいっ、
勢いをつけたおかげで、今度は陽介の腰が浮いた。そのまま前のめりに倒れるのを受けとめ

――るはずだったのだが、


陽介の足から力が抜けてズルッと滑り、そのまま相棒の脇を通り抜け、

廊下の壁に激突した。

―――しかも、顔面から。

「――――よ、」
陽介っ――――!?



…それから5分後、一人で運ぶのを諦めた相棒が再びケータイを取り出していた。






―――――熱が出て何が嫌だって、
喉が痛いのも体がだるいのも、咳も鼻水も頭痛もどれも嫌なんだが、
高確率で悪夢を見るのが一番始末におえない。



《 case8:**** 》


だからなんだろうか。今、夢を見ているとわかっているのは。
それとも、

『****』

夢の中でしか、もうその人には会えないと知っているからか。

『****』

彼女の唇が動く。声は聞こえない。
近づこうと思っても、足が重くて一歩も動きやしなかった。

『****』

夢の中にいて声が聞こえないって、どういう意味だよ。
まさか、もうあの人の声を忘れちまったのか。そんなに薄情だったのか、俺。
「―――――先輩」

『――――――――、 は 』





『――はははハハハハハッ、!!!』

「――――っ!!」
嘲笑。
先輩の口から溢れた笑いは先輩の声ではなかった。―――それどころか顔までがぐにゃりと歪んで、中からニヤニヤと笑う虫酸のはしる顔が現れる。
俺はこの顔を見たことがある。
繕った表情なら毎日、鏡の中で。
このいやらしい笑みは、一度だけ。
金の瞳だけを本体と違えて、花村陽介の影はケタケタ笑い続ける。
「――――な」
んで、お前が。
俺の言葉が続く前に、自分の影はズルリ、と近寄った。
ズルリ。
聞き慣れない足音に、影の足元を見れば、両生類の足がすりよって。
「――――――ッ」
息を呑む。カエルの足。自分の影が暴走した姿。いつのまにか目の前のソレも人の形から巨大な蛙に変わっていて、
蛙の濁った目に自分の姿が映っていた。
―――金色の瞳の自分が。
あぁ、影は俺自身だった。金の瞳の嘲笑も、この化け物も俺自身。
思わず顔を押さえた自分の手が、人の手でないことに気づく。ねとり、と粘液をしたたらせる蛙の手。
ひ、
ふらついた足が―――巨大な蛙の足が、赤黒の商店街を踏み潰した。あの酒屋もべしゃりと潰れた。きっと中にいたあの人ごと―――

いや、

視界の端にあの人の栗色の髪が見えた気がして、縋るように瞳を向けた。
そこには確かに栗色の髪が、


電柱に引っかかって逆さに揺れて手足がマネキンのようで、その顔がたちまち眼鏡をかけた『誰か』の顔に変わったから俺は悲鳴をあげ










「――――ぅすけ、陽介」

作品名:花村見舞い観察記 作家名:えるい