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みとなんこ@紺
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サニーディ・サンディ

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「司令部から伝令入りました!」
ばたばたとフュリーが間をかいくぐってやってくる。
手には特に何も通信文だのは持っていないが、これはまさか・・・。
「・・・ヤな予感・・・」
「言うな。で、何て?」
一瞬フュリーはなんとも言えない複雑そうな表情を浮かべたが、直ぐに気を取り直したように顔を上げて敬礼を一つ。
「『あと三十分以内によく当たりそうな的を連れて行くから、それまでにある程度片付けておけ』・・・だそうです」
「・・・・・・。」
「・・・うっわー・・・」
むちゃくちゃ言ってくれる。
「というか丸投げかよ」
全っ然指示ねぇし。
即・遠慮なくぼやいたのは両少尉だけだったが、その場にいた小隊長以下数名も頭をよぎった事は同じだったのだろう。声には出さずともウンウン、と皆一様に眉間にシワを寄せて肯いていた。
その中に混じっていた、南部から転属してきた軍曹がポカン、と口を開けているのを横目でみやりつつ、ブレダはやれやれ、と頭を掻く。

さて、どうしたもんか。

現在、そのヤな要求を突きつけてきたトップは、抜き打ちでやってきたどこぞの査察官のお相手に狩り出されている。
ここの所たいした事件もなく、そう書類も多くなかったので珍しく機嫌良く仕事を片付け、さっさと定時に上がろうと目論んでいたみたいだが。
・・・今朝、その司令官殿が電話で連絡を受けた時、完璧な笑顔と受け答えだったが、瞬間その場の空気が3度は下がった。確実に。
ま、この知らせを受けた時には、突発事件も彼にとっては渡りに船。それにかこつけて嬉々として退出してくるだろうと思いきや、事態を判ってくれない来客はそう簡単には離してくれなかったらしい。
来客中の執務室から笑顔で途中退室したと同時に、司令室に飛び込んで無線を奪ったんだろう事は想像に難くない。・・・司令部に残ったファルマン達も気の毒に。
伝言から察するに、お帰りの際には現場視察とかなんとか言って、この辺りを通るつもりなんだろうか。
ブレダは深々とため息をついた。
というか今日来た査察官、本当に暇人だな。長引くだろう事件にかこつけて、あげつらう気になったということか。
防弾の効いた車から降りることなく、早々には解決しない筈の立て篭もり事件に右往左往する自分たちを、高みの見物していくおつもりのようで。
そしてここで何かあれば、ウチの上にねちねちぐちぐち嫌味言っていくつもりなんだろう。

そら嫌がるだろうな、あの人も。

さて、指揮官不在のこの状況。
上の怠慢と取るか、信頼されていると取るかはそれぞれの自由だが。
「・・・南から変わってきた新米のフォローしといてくれな」
面倒そうに振り返ると、いい加減慣れている部下の小隊長は苦笑しつつも敬礼で返してきた。
少なくとも東部、イーストシティにおいてはこういった事は結構日常茶飯事だったりするのだが。他ではそうもいかないだろうし。
各自顔を見合わせたところで、フュリーがおずおずと手を上げた。
「あの、続き、良いですか?」
「まだあんのか」
「はい。・・・『どうやら我々の手際の良さをごらんになりたいらしい。スリルをご所望の准将殿には威嚇の2.3発飛んでくる位でも構わないが、取りあえず』」




「『黙らせろ』――――以上です」




・・・・・・・・・。


えーと。


・・・この場合黙らせる相手ってのは・・・。
2人同時に横目で視線を合わせると、巨大な溜め息を一つ。
「よっぽどアタマにきてんだなー・・・」
「大佐がこの調子じゃ、中尉もお怒りみたいだな」
ご機嫌ナナメ時の超笑顔の上司と、無表情に静かにお怒りのその副官が頭に思い浮かぶ。



怖。



その場にいた全員の頭を過ぎったものは一緒だったに違いない、と思う。
その瞬間、思いっきり、心は一つにまとまった。



「しゃーねぇ。やるかぁ・・・」
ふいー、と溜め息と共に煙を吐き出して、ハボックは靴の裏で煙草をもみ消した。
かったるいが、そこまで言われちゃ仕方ない。
億劫そうな動作は変わらないが、先程とは違い、口元には少々人の悪い笑みが浮かんでいた。
足元に無造作に置いていた愛用のライフルを手に取り、んじゃ、と後ろ手に手を上げる。
「フュリー、中継頼むな」
「了解しました!」
それを合図に、何も言わずともさかさかと散って持ち場へ戻っていく部下達を見送りつつ、2人は似たような顔で互いにニヤリと笑いあう。

「何か頑張ってる立て籠もり犯には悪いが、もう適当に速攻で」
「だな。おーい軍曹ー、強行行く準備させといてくれ。・・・こっちは裏」
「んじゃー、俺らは下から行くか。下水道の入り口どこだっけ?」
「出る場所間違えんなよ」
「隣とかに出たら面白いことになるかな」
「一緒に減棒はご免だ」


――――では。


「お仕事しに行きますか」
拳を合わせてそれぞれにきびすを返した。












さっさと立て篭もり犯引き摺り出して、人質救助して、沿道片付けて。
ウチの上司いびるの楽しみにしてるお気楽な准将サマを、満面の笑顔の全員敬礼で盛大にお見送りしてやろうじゃねぇか。


現場の人間舐めんなよ。















片付きました、の報を受けた指揮官とその副官が、口元だけで小さく笑いあうのはもう二十分程先の事。