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向いてない男 中

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 今回、ろ組はどうでるか。
 仙蔵と伊作の間のことは知っているのだから、勝利を望まないならば、逃げに徹すればいい。は組にそちらを追う余力はないし、い組にしても、文次郎一人では札奪取は難しい。
 危ない橋を渡る必要はない。
 だが、ろ組には七松小平太がいる。
 彼の辞書には、転進の文字はあっても、撤退の文字はない。守備の欄には、攻撃は最大の防御なり、と書いてある。そういう男だ。
 いくら必要がなくても、きっと札の奪い合いに参加する。同組の中在家長次は積極的ではないものの、小平太を制止まではしまい。
 と、なれば、だ。ろ組が狙うのはどちらか。
 おそらくは、は組。理由は、開始地点が、ろ組の開始地点に近いからだ。
 ろ組にそれ以上の理由は必要ないのである。
 小平太は、人間としては規格外の体力・運動力の持ち主。戦闘における強さは、野生の獣のそれだ。長次も、それには劣るものの、長身巨躯でそれに相応しい怪力を持ち、縄ヒョウ{金+票}を得意とし、遠近の攻撃へ自在に対応する。
 純粋な攻撃力で、ろ組に勝てる組はない。
 狙いを決めたなら、その強さで標的を圧倒すればいい。下手な小細工など必要としない。むしろ、邪魔なだけだろう。
 ろ組は、は組を狙う。そして、追うなら、札を持っているだろう、留三郎。
 もし、そこへ文次郎も留三郎を追っていったら、鉢合わせる可能性がある。そうなれば、どうなるか。
 はっきり言って、予測がつかない。長次はともかく、小平太は本能と気まぐれで戦っているところがある。実際に対峙しなければ、どんな反応をするか分からないのだ。
 まかり間違うと、二対一対一の戦いになり、は組の札を奪われた上に、文次郎まで失格を食らうという結果にもなりかねない。
 それを避けるために、い組は常に二人で行動することとし、まずは伊作へ接触、それを速やかに下し、そこで生まれた時間差を利用して留三郎か、ろ組、もしくはその両方へ接触し、札を奪う。そうすれば、手間は増えるが、疲弊した相手を襲うことで札を奪える可能性があがる上、すでにどちらかが二枚、札を持っていた場合、一挙にそれらを手に入れられる可能性もある。
 そのように方針を定めた。
 ここまで、特に突飛な思考はない。伊作も当然、ここまでは予測をしているはずだ。
 だから、仙蔵は伊作がここであえて留三郎と同行するなど、何か策をうってくるだろうと期待していたのだ。
しかし、どう見ても伊作は一人であり、罠等も見出せない。
 仙蔵としてはやや肩透かしを食らったような感じだ。

「さあ、分かっているとは思うが、私たちは先を急ぐ。あまりがっかりさせてくれるなよ、伊作」

 と、仙蔵は心からの言葉を、碁盤を前にしたときのような軽い調子で言った。

作品名:向いてない男 中 作家名:花流