the night of worldend
05.余韻を残して
言葉は自然と心に沁みていった。
ルークは、ただ思えれば良かったと、おもった。
なんて自分はしあわせなんだろう、これはなんて幸せなことなんだろう。
そう、素直に思えればよかったのに。
たくさんの人たちの言葉が心に沁みて、痛んだ。
ありがとう、と喜んでもいいはずなのに、その言葉の後に続くのは、ごめんなさいだった。
たくさんのやさしさが、残酷だと思えた。
だけどもう決めたんだよ、そう決意した日の自分が言って今の足のすくみそうな自分を促がす。
ありがとう、でも、ごめんなさい。
何度もなんどもそれを繰り返すうちに、やさしさをたくさん与えてもらえるようになった、とルークは思った。違う、自分はやさしくしてもらえる立場じゃないんだ、と頑なに拒否をするのに、それなのに、たくさんのやさしさはルークの生きたいという気持ちを大きくさせた。
だけど言えなかった。生きていたい、なんて。
それでも、いくつもの言葉に殺されて、生き返った日々の中は、今思うととてもやさしいものばかりだった。
ふと、過去は美化しやすい、と言ったジェイドとガイの言葉を思い出して、ルークは一人思い出し笑いをする。
全然美化できてないくせに、そんなこというなんておかしい。
ルーク
自分の呼ぶ声に、振り返る。
自然と笑みが浮かんで、夕食が出来たからおいで、と言った声に頷く。
そうだ、なんて自分はしあわせなんだろう、これはなんて幸せなことなんだろう。
そう、素直に思えればよかったのに。
そんなあたたかさを噛み締め、嬉しいのだと心にとどめて、このあたたかな気持ちが、出来ればずっとずっと残っていればいいと、ちいさく願った。
作品名:the night of worldend 作家名:水乃