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【臨帝】会えない日には/帝人視点【腐向】

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彼が勧める鳥料理が自慢の料亭で豪勢な会席膳をご馳走になり堪能してから店を出ると「あ、そうだ。ipodを買い換えたから前に使ってたの帝人君にあげるよ。どうせ持ってないでしょ?」と言われ、彼のマンションに受け取りに行く事になる。彼が住処としているマンションは事務所を有したデザイナーズマンションだ。おまけに内装もインテリアもモデルルームのようで生活臭を感じさせない。だから生活区域に足を踏み込むという緊張感は薄いが、二人っきりになってしまうという点を意識すれば妙に緊張してしまう。受取ったら直ぐに帰れば良いと言い聞かせ踏ん張りながら前を進んでいたが、臨也がマンションのエントランス前で足を止めた。

「折原、さん?」

自分より10センチ程高い目線を伺うと、臨也の目に剣呑な光が宿る。視線の先にはモノトーンを基調としたワンピースを着込んだ美女が佇んでいた。
上品なお嬢様然とした美女はゆっくりとこちらに向かうと、二人の眼前に佇む。
美女は「こんにちは。突然ごめんなさいね」と一礼すると顔に掛った長く艶めいた髪を持ち上げ臨也に笑みを深し、こう問いかけた。

「別れるって言われたのも判ってるし、連絡を取ってくれない程脈が無いのも判ってる。でも諦められないの。二股でも三股でもいいから…また付き合ってくれない?」

「…!」
美女が告げた言葉に二人の関係を悟り、帝人の胸がギュっときつく締め上げられる。しかし、それを上回る大打撃を与えたのは、次に臨也が告げた言葉だった。

「言ったでしょ…本気で好きな子が、出来たって。だからもう無理。じゃあね」

絶大な破壊力を持つ言葉にショックを受け落雷に打たれたように全身を硬直させた帝人の肩を抱いた臨也は、シッシッと犬をあしらうように手をひらひらとさせ帝人を導きつつ、美女の横を通り過ぎる。
通り過ぎた際ちらりと横を見れば、美女は一筋の涙を流していた。自分のように貧相な子供とは、比べられる訳が無いほどの美女。
こんな美女でも臨也のお眼鏡に適わないのだから、自分なんて到底相手にして貰える訳が無い。突きつけられた現実に目頭を熱くさせた帝人の耳に、美女の声が届く。

「好きな子って、そんなの本当に居るの?! 貴方が誰かを好きになんて、なるはずないわ…!」

悲痛な叫びに背後を振り返った臨也は帝人の肩を抱く指先に力を込めすうと息を呑み、宣言するかのように声を張った。

「この子だよ。俺の好きな子」

「え…」
臨也の言葉を聞き弾かれたように顔を上げた帝人は、視線の先に信じられないものを見た。
白皙の美貌をほんのりと赤く染め怜悧な美貌を崩し、照れたような苦笑を貼り付けている臨也を。
そして色めいた紅茶色の双眸が近づいてくるのに気付いた、瞬間。
唇に、ふわり。ひどく柔らかな感触が落ちる。
――それが帝人にとってのファーストキスだと気付いたのは、数瞬の後だった。

「…っ、まさかホモなんて、信じられない…!」
ヒールの音を響かせながら去っていった美女の靴音で我に返った帝人は瞬時に顔中を熱くさせ、臨也に詰め寄った。

「な、なんで…あんな事したんですか?!」
美女を手酷く振って後腐れを無くす為に自分を利用したのだと真っ先に思い浮かんだ帝人は、抱え込んだ心の爆弾を爆発させ激情を臨也にぶつける。

「どうしてあんな嘘、つくんですか…?!酷いです…!酷いっ…!」

臨也が着込んでいる漆黒のジャケットの前を掴み縋るようにして泣き崩れ子供が駄々をこねている様にぶんぶんと頭を振る帝人は、混乱で一杯だった。そんな帝人に手を伸ばした臨也は――力強い腕で、広く温かな胸の中に小さな身体を掻き抱く。

「…!」
「嘘なんてついてないよ」
「う、嘘です!」
「嘘じゃないってば。好きだよ、君が。うんそうだね。どうしようもない位…君が、好き」

臨也は帝人の耳元で優しく囁きかけながら、安心させるようにポンポンと背中を撫でる。
臨也から告げられた言葉が嬉しくて、たまらない。思えばずっと――中学生の時チャットで交流していた当時から、彼に惹かれて居たんだと思う。
孤独だった中学生時代。毎日臨也が主催するチャットを楽しみに過ごしていた。彼と話が出来るのが楽しくて仕方が無かったことを、思い出す。
そして初めて出逢った際、その圧倒的な美しさに一瞬で見惚れた。息をすることも忘れて見入っていたあの瞬間。きっと恋に落ちたんだろうと思う。性別さえ超越している美しい彼の姿に心を奪われた自分を、帝人は思い出した。

帝人の寂しさを埋めてくれた彼に恋愛感情を覚えどうしようもなく愛しさを募らせたものの、報われないと悲しみを背負った。本当の恋心を知ってしまってからの日々は、切なく、つらい日々だった。
しかし今、その想いが報われ大好きな人に求められたのだ。
そして臨也が優しく撫でる背中に心地よさを感じた帝人は少しづつ力を抜き、尖らせていた身体からようやく緊張を抜き小さく息を吐いた。

「という訳で、付き合おうね」
「え、えっ?」
「俺が君を愛してるんだから、君も俺を愛して当然だろ?」
「や、その…折原さんのことは、その…好き、ですけど…でも、僕たち男同士ですよ?」
「へえ。帝人君は俺が好きなんだ?じゃあ交渉成立だね」

ニヤリと確信めいた笑みを深くした臨也の眸は、ひどく色めいて。恋慕の情を付けた甘い眸がもう一度舞い降りるのを感じた帝人は全身を幸福感に浸しながら唇を重ねていた。幾ら夜も更けた休日のオフィス街で人通りが少ないといっても、ここは野外だ。何時誰の目に留まるか判らない。
こんなに大胆な真似をしているなんてと思う頭で、帝人は。与えられた幸福感と非日常的なことをしているという歓喜に酔いしれていた。そしてマンションに招かれると同時に甘いキスの応酬を交わすようになり、自然と愛の営みへ移行して行った――

***

そうして付き合い出して三ヶ月。どこまでも愛され甘やかされ、大事にされているし幸せだと思う。
しかし、臨也から仕事のせいで二週間ほど会えなくなると告げられ逢えなくなってしまい、既に十日。惜しみなく注がれた愛情はすっからかんになり干からびてしまいそうだと思うほどの、寂しさを覚えていた。

クリスマスシーズンを迎え街にキラキラと輝く華やかなイルミネーションが宿る季節。
そんな色めいた街を寂しく通り過ぎ帰宅した帝人は、臨也のことばかりを思いながら布団に入った。折角の週末だし贅沢をしようと奮発して銭湯に出かけゆっくりと身体を癒し、また贅沢をして自動販売機で好物のサイダーを乾いた身体に流し込むと気晴らしにコンビニで雑誌を立ち読み、大奮発のポテトチップスを購入して帰路に着く。
だが、どれだけ贅沢をしても憂いが晴れることはない。この焦燥を溶かすことが出来るのは大好きな臨也だけなのだ。
しかし臨也とは会うことが出来ない。二週間程度会えないと言っていたから、あと数日は会えないということだろう。