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みっふー♪
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NAMEROU~永遠(とき)の影法師

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【第七話】

「そうか、それはよかった……」
俯いて低めた声に、片手で肘を支え、人差し指と中指で渋くグラサンを直してみせるマ夕“オさんの姿は、まるで名のある司令官か何かのようだった。
「――さっ、それじゃけっこんするおねーさんのために、いっちょワカメのレイでも作ろっか!」
一転、パァと両手を広げ、片足を上げたおどけた様子にマ夕“オさんが言った。
「そっ、そうですね、」
僕は同意し、一度は我が同身とまで思い詰めた濃い関係だったのに、いましがたまですっかりその存在を失念していたワカメを腰からズルズル巻き取った。
「いいねぇ、立派なワカメだ……、」
僕の手元を覗き込むマダオさんの喉がごくりと鳴った。――なんて間抜けなことだろう、僕はまだ何も気付いていなかった。
「そうですか?」
――ボク、ワカメのこととかあんま詳しくないんで、根拠不明の照れを浮かべながらマ夕”オさんにワカメを差し出す。彼の漆黒のアイウェアがギラリと妖しく光を放った。
「!」
マ夕”オさんは僕の手からワカメを奪い取ると尋常ならざる反復横飛びの一方通行のステップで僕の前を離れた。
「……えっ?」
突然のことに僕は事態を把握しきれていなかった。マ夕”オさんの高笑いが浜辺に響き当たる。さっきまでのややくたびれた、けれど気のいいおじさんの姿はどこにもなかった。
「ハーハハハ! ワカメ!! おっとバカめ! これさえ手に入ればこっちのものだ! あばよ!!」


+++++

【第八話】

――すちゃ! バッシャバシャバシャ……、颯爽とグラサンの位置を整え、奪い取ったワカメを縄のように肩に巻き付けたおじさんは海に入ると沖に向かって走り出した。
「おっ、おじさん! マ夕”オさん!!」
この期に及んで未練がましく、僕は波打ち際に駆け寄った。後ろから見ているとまるでエリマキトカゲかバシリスクかの如く、おじさんの姿がみるみる遠ざかっていく。
「……、」
わななく拳を握り締め、僕は波に向かって叫んだ。
「うぅぅ裏切ったな! 僕の気持ちをもてあそんだな!!」
あらんかぎり声を張り上げながら、僕はまだ心のどこかで期待していた……、
――なーんちゃって、ウッソだよ〜んっ★ ほんの少し前までのあのお調子者の足取りで、おじさんがちゃぱちゃぱ波を掻いて沖から戻ってきてくれることを。
けれどもそれは傷付いた少年の切なる願いというより、ほとんどただのヘタレの妄想に近かった。
「……。」
自分の浅はかさに、やりきれない惨めさに、海よりしょっぱい熱い涙が頬を濡らしてはらはらと砂の上へ流れ落ちる。
……だってこんなのあんまりだ、信じていたのに、会って間もないマ夕”オさんのことを自分の本当のおじさんみたいに、声も仕種も少しも似ていないけど、まるで父上と話をしているときみたいだと、なのにあの人は裏切った。僕の心を、擦り切れた汚ねぇ草鞋で踏み躙った。さっきまでの、ここでふたり過ごした時間は何もかも、こうして僕を油断させるための芝居だったんだ、すべて遅すぎた過酷な現実に、僕は浜辺にがっくり膝を着いた。
そりゃ、僕みたいな嘴の黄色いピーピー野郎騙すなんざ、アンタみたいな極悪人にはチョロイもんだったろうさ、――なーにがシンちゃんと呼ばせてもらっていいかなー? いいともー!だ、やっぱバナナはえくあどる産ですね、そーですね(無表情)、だっ……、――チックショウ!!! 俺のバカバカ気付けよ俺!! なっさけねぇ、なんでだなんでだなんでなんだよォォォ!!!!!
「――、」
――ザシッ、ザシッ、気の済むまで拳で砂を打ち付けると僕はキッと顔を上げた。砂まみれの手のひらで涙を拭うと前面の海を睨みつける。抜き手を切って泳いでいくヤツの姿が、スーパーボール大に沖に浮かんでいた。
「ふっ、ふざけるなーーーーーッッッ!!!!!」
カラカラの血の付いたドシフン素材の鼻詮を浜に投げ捨て、僕は身一つで波間へ向かって走り出していた。


+++++《第一部・完》