こらぼでほすと 再会1
ぐいっと、刹那の腕を、悟空が引っ張ると、すいっと離れた。そして、引っ張られるよ
うに拉致されて行ったので、ロックオンは見送って笑い出した。
「腹減ってんなら、減ってるって言えよ。」
ここでなら、同年代の友達もいるし、しばらく、刹那もゆっくりできるだろう。組織の
仕事が再開するまで、しばらく預かっているとしようと、ロックオンのほうも、ゆっくり
と拉致された方向に歩き出した。
大きな屋敷の台所で、悟空と刹那に、軽い食事を出している八戒は、その食べっぷりに
微笑んだ。無口な刹那だが、八戒の作る料理は気に入っているらしく、はぐはぐと食べて
くれる。数ヶ月ぶりに逢っても、それは変わらなかった。
ハムサンドとオムレツとジュースを、悟空と同じ勢いで食べているところを見ると、空
腹だったらしい。
「すいません、八戒さん。」
刹那から遅れること、十数分で、ロックオンも現れた。ついでに、その背後から、「あ
ーーーー抜け駆けだあーーっっ」 と、叫びつつ、キラも飛び込んでくる。
「はいはい、キラ君、慌てなくてもデザートは、まだですから。ロックオン、座ってくだ
さい。」
「なあ、お母さんや、うちは、いつから子供が三人になったんだ? 」
「悟浄、ヨタを飛ばしている暇があるなら、ロックオンにお茶を出してください。」
がつがつと食べている悟空たちを観察していた悟浄が、そんなことを言うので、軽く睨
んで、手伝わせた。ジャスミンでいいな? と、相手も慣れたもので、ガラスの茶器で、
花が開くような茶葉に熱湯を注いでいる。
「キラ君、アスラン君たちは? 」
「庭の清掃作業? 僕は、サーバー室にいたから。・・・・ああ、刹那、刹那の軌跡は、
レーダーサイトの記録から抹消しておいたから安心して。」
「・・うん・・・」
「ほら、刹那、もっと食べろ。腹減ってたんだろ? なあ、八戒、お代わり。」
食欲旺盛な悟空は、ハムサンドを平らげて、皿を持ち上げた。やれやれ、と、八戒は作
業に戻る。どうせ、後からアスランたちも戻ってくるだろうから、まだまだ作らないと足
りない。
食べるつもりのない悟浄と、ロックオンは、その光景を長閑に観察するぐらいしかない
。手伝いたくても、まだ、ふらふらの状態では、フライパンを持ち上げるのも無理だから
、ロックオンが、「すいません。」 と、恐縮する。
「いや、ロックオン、気にすることはないって。まだ、身体がおかしな具合だろ? 三日
で歩けるだけでも、すごいって医者が言ってたぞ。」
「歩くのは、どうにかなるんですが、腕が、どうも動かなくて。」
「三週間寝たきりだもんなあ。それで、おたくのぼっちゃんは、どうすることになったん
だ? 」
「しばらく預かってくれ、とのことだったんで、居候が一人増えます。」
「いいんじゃねぇーの。うちには、元からサルとキラがいるし・・・・なあ、お母さん、
一人増えても問題ないよな? 」
「まだ、そのネタで引っ張るんですか? 悟浄。」
ざっと、フライパンをあおって、中のスパゲティが綺麗に舞っている。そういう状況で
八戒は、会話している。一通り、スパゲッティを絡めると、ナポリタンになった様子だ。
それを大皿に盛り上げて、子供たちの前に置いた。
「だって、あなた、どう見ても、お母さんでしょ? その格好。俺は間違ってませーん。
」
白いエプロンをしているので、そういうことであるらしい。それを、くくくくく・・・
っと、ロックオンも笑って同意している。
「俺はサルじゃねぇーや、黙れ、エロガッパっ。」
もぎもぎと、スパゲッティを、一口飲み込んでから、悟空が反論する。遅すぎるだろう
と、悟浄がずっこけつつ、「サルにサルって言って、何が悪い? 」 と、さらに反論し
ている。
そこへ、ようやく作業を終えたアスランたちも戻ってきた。お疲れ様、と、お茶を出す
と、ハイネとアスランも、どっかりと腰を下ろした。
「悪りぃな、迷惑かけて。」
「いや、たいしたことじゃありませんよ、ロックオン。それより、座ってて大丈夫なんで
すか? 」
「座ってるぐらいはね。・・・・・・刹那、おまえの後始末をしてくれたんだから、おま
えからも謝れっっ。」
厳しめに、ロックオンが口にすると、それまで、はぐはぐと食べていた刹那も、一応、
立ち上がって、ぺこんと頭だけ下げた。まだ喋るつもりはないらしい。
「いつにも増して無口だな? 刹那。」
「しょうがないよね? びっくりして、それで、ロックオンの無事な姿を見たら、ムカム
カしちゃったんだもんね? 」
それを見ながら、悟空は笑っているし、キラは、ちょっとだけ年上なので、よしよしと
頭を撫でていたりする。悟空とキラにとっては、刹那は可愛い弟分だ。前回、バイトに来
た時から、何かと世話を焼いている。
「キラ、意味がわからないんだが? 」
「アスランにはわかんなくてもいいよ。僕、何度か、きみの無事な姿を見て、ムカムカし
てさ。フリーダムで攻撃してやろうか、と、思ったもん。」
「俺は、ものすごく嬉しかったけど? 」
「出た、天然たらしっっ。」
「おまえら、痴話喧嘩は部屋でやってくれ。」
ハイネが、ツッコミをひとつ入れて、ようやく騒ぎが収まった。りんごでも剥きましょ
うか? と、八戒が準備していると、「そういや、俺は、ムカムカはしなかったけど、ム
ラムラはしたな。内蔵はみだしてたおまえ。」 と、悟浄が、とんでもないことを言うの
で、全員が、飲んでいるもの食べているものを喉に詰まらせて、一瞬、静かになった。
沈黙した空気を破ることができるのは、天然電波の大明神様しかいないが、発言は、や
っぱり電波だ。
「それで、ムラムラするものなの? 僕、それは、ドキドキになるなあ。 」
「どういうことしてんだか・・・・あんたたち。いや、個人の好みだから、いいけどさ。
子供に聞かせるには、キツイんじゃない? 」
かかかか・・・と、爽やかに笑ってハイネが、鋭く指摘する。いやいや、プレーじゃな
くてさ、と、さらに、悟浄が続けようとしたから、慌てて、銀のプレートで叩いた八戒は
、固まってる刹那とロックオンに、「ヨタ話の延長ですから、信じないでくださいね。」
と、誤魔化し笑いを向ける。他の面々は、いろいろと知っているから、さらっとスルー
の方向で、余計なことを言いそうな大明神様の口には、アスランが、シャーベットを突っ
込む。
・・・・・どんな生き方してんだろ? この人たち・・・・・・
自分たちも、大概に普通ではない人生だと思っていたが、『吉祥富貴』のメンバーも、
大幅に普通ではない。なんせ、軍にも所属していないただのホストなのに、「白い悪魔」
と、過去に呼ばれていた最強のMSパイロットがいるし、それ以外の華々しい戦績が残
っているMSが、ここにはある。そのパイロットは、もちろんというか、なぜか、『吉祥
富貴』のホストだ。 さらに、現役の僧侶もいるし、現役の王子様なんてのも、所属して
作品名:こらぼでほすと 再会1 作家名:篠義