こらぼでほすと 再会1
いる。変わったメンバーを集めるってだけでも、すごいことだ。
「うちは、普通じゃないから。」 というのが、皆の口癖だが、本当に普通ではないと
、ロックオンは溜息を付いた。
「ロックオン、疲れましたか? 」
心配そうな八戒の声がするので、顔を上げたら全員が、自分に視線を向けていた。一番
厄介なのが、また、口をへの字にして立ち上がっている。
「いや、たいしたことは・・・」
「疲れたのなら、横になったほうがいいですよ、ロックオンさん。」
シャーベットをキラに食べさせていたアスランも、声をかけてくる。そういや、ちょっ
と身体が重いな、と、ロックオンも思ったが、刹那の顔を見ると、ストレートにも言えな
くて苦笑した。
「そうそう、俺、あんたぐらいなら運べるけどさ。お姫様抱っことかは、八戒しかしたく
ねぇーし。できれば、自力で戻れるうちに戻ってくれ。」
優しいんだか、からかってんだか、微妙な言い草ではあるが、悟浄も、手をひらひらと
振って退出を勧めてくれる。で、最終的に、悟空が刹那の背中をパンと叩いて、「送って
こい。」 と、命令した。
平面の移動には、問題がない。ということで、一階の奥まったところにある客室を宛が
われている。運動するにしても、気分転換をするにしても、外へ出るほうがいいだろうと
いうことらしい。
台所からは、結構、離れているので、片道五分は猶にかかる。さらに、ロックオンは、
まだ身体のほうが慣れていなくて、倍以上かかる。せっせと、当人は歩いているつもりだ
が、遅いのだ。
「刹那、別に大丈夫だから、おまえは戻っていいぞ。」
後ろから、ゆっくりと付いてくる刹那に振り向いて、そう言ったが、やっぱり返事はな
い。ないどころか、睨まれた。
「言いたいことがあるなら、言え。」
「・・・・・・・・・」
「おまえの考えてることまでは、俺にはわからないんだぜ? 」
「・・・・・・・・・」
怒っているのか、責めているのか、ロックオンにもわからない。しばらく、無言で対峙
したものの、無口な刹那も、そのままだった。やれやれ、と、踵を返して部屋へと歩く。
部屋に戻って、ベッドに座り込んだら、その前に、刹那はやってきて、そのまんま、ベ
ッドに押し倒された。
「ああ? 」
ずるずると、ロックオンの頭を枕のところへ移動させた。そして、両足を持ち上げて、
ベッドへ放り投げ、さらに、掛け布団をロックオンの身体の下から引きずり出して、上に
かけてくれる。寝ろ、ということらしい。
「俺は顔色が悪いか? 刹那。」
たぶん、他の者は気付かないだろうぐらいの表情だが、刹那は心配したような顔をして
いた。だから、せっせとベッドに沈めてくれたのだろう。
「じゃあ、怪我人は大人しくしてるから、悟空たちと遊んでな。」
今夜中に、彼らは引き上げることになっているので、遊んでいられるのも、陽のあるう
ちだけだ。そう説明したら、スタスタと出て行った。
・・・・・・・喋らないと、猫と一緒だな・・・・・・・
くくくくく・・・・と、ロックオンも笑って目を閉じた。時間は、まだありそうだし、
慌てる用件もない。機嫌が治るまで、気長に付き合えばいいか、なんて、気楽に考えつつ
、目を閉じた。
部屋を出た刹那は、悟空たちがいる台所へ戻るのではなくて、屋敷の外へ出た。それか
ら、ぐるりと、屋敷の外を回りこみ、ロックオンの部屋の裏側へと出て来る。そこは、庭
に向けて前面の出窓になっていて、今の時間はカーテンも開いている。音を立てないよう
に、こっそりと出窓に近寄り、そこから顔を覗かせた。
室内は、動きがまったくなくて、ベッドの上の山は動いていなかった。どうやら寝てい
るらしい。よく見ていると、規則的に、その布団の山は上下している。それを確認して、
ほっと、刹那は息を吐き出して、出窓の前に座りこんだ。
日向ぼっこする猫のように座りこんで、ぼーっと庭を眺めている刹那に気付いたのは、
呼びに来たキラだった。扉の前に座っていなかったから、こちらだろうと予想はしていた
。
「刹那、ロックオンさんは寝てるんだろ? 」
キラの呼びかけに、それこそ、びくっと飛び上がり、刹那が顔を向ける。クスクスと、
その様子に笑って、手を差し出した。
「少し寝かせてあげたほうがいいんだ。だから、刹那は、僕たちと遊ぼう。・・・・もう
大丈夫だからね。生きているのは、わかっただろ? 」
爆死したと思われていた。だから、刹那は、ロックオンの亡骸というものは確認できな
かったはずだ。透明人間みたいに、突然に目の前から姿が消えてしまったら、誰だって驚
くし、怖くなる。コクコクと、刹那は二度頷いた。
「人間は、割と簡単に死ぬんだ。」
ふふっと、笑ってキラは、とんでもない台詞を、さらっと吐いた。
「でも、生き残ると、それからはしぶといんだよ。」
「キラ? 」
「だから、僕たち、『吉祥富貴』のメンバーは、しぶといんだと思うな。刹那もロックオ
ンさんも、うちのメンバーみたいなものだから、たぶん、しぶといよ? 」
「うん。」
それが、慰めか? という台詞なのだが、キラなりに慰めているらしい。おいで、と、
刹那の手を取って、台所のほうへ歩き出す。
「明日は、シンとレイが来るんですね? アスラン。」
台所では、明日の予定とか仕事の話に移行している。悟空だけは、まだ食べているが、
それ以外は、お茶も飲み干してしまっている。ここにも使用人が数人いるのだが、八戒た
ちが来るというので、休みにしてもらったから、屋敷は無人だ。気がねしなくて、いいか
ら、いつも、そうしてもらっている。
「機体の整備と訓練だったばすですよ。それで、その次が鷹さんですね。」
「じゃあ、適当に、暇つぶしの相手はあるってことですか。」
だだっ広い屋敷に、ぽつんと放置されてしまう刹那に、八戒は、ちょっと心配したのだ
が、ここには、MSが保管されていて、何日かに一度は、MSのパイロットたちがやって
くる。だから、ふたりっきりということにはならない。
「でもさ、八戒さん。 俺たち、宇宙組は、あの二人と、ほとんど面識はないんだ。ロッ
クオンは、いいとしても、セツにゃんは懐かないぜ? 」
「おお、『セツにゃん』って、ナイスなネーミングだなあ、ハイネ。」
「悟浄、お褒めいただいて、どうも。」
確かに、マイスター二人を借り受けた時に、宇宙へ、その代理に貸し出されたメンバー
は、ほとんど面識はない。そして、MSの整備や訓練に出向いてくるのは、その貸し出さ
れ組ということになる。
「そうでしたね。うちの宿六が、ロックオンと親しいので忘れてましたよ。」
「・・・・あんた・・・・それ、さっきの仕返しか? 」
「俺とキラが適当に、顔を出しますよ。」
悟浄の文句なんて、さらりと無視で、アスランが話を進める。オーナーが拾ってきたロ
ックオンは、ここで、しばらく養生して、吉祥富貴に就職すると言う連絡が入っている。
作品名:こらぼでほすと 再会1 作家名:篠義