こらぼでほすと 再会2
・うーん、確かに範囲外の美人とかわいこちゃんだな。あはははははは。俺、ムウ・ラ・
フラガ。せつニャンの遊び相手に参上。」
羽交い絞めにされてもがいている刹那を軽々と押さえ込んでいる金髪碧眼の男は、陽気
な挨拶をした。
誰かがお見舞いがてらに、顔を出すということに決まったので、MS整備に行く予定だ
ったフラガにも、依頼があった。もちろん、依頼しているのは、天下無敵天然電波の大明
神様だ。
「ムウさんの顔の好みから外れてるけど、綺麗な美人さんと、ムウさんの好きな年齢には
当たってるけど、それ以外のところで好みから外れてる子猫ちゃんのところへ顔を出して
ください。できれば、子猫を少し遊ばせてあげてくれれば、なお、嬉しいな。」
「・・・・キラ・・・・・おまえさん、俺のこと、どう思ってるの? 」
「ふしだらな美少年キラー? 」
「それ、ある意味、正解だけど、ところかまわずの無差別ナンパなんて、俺はしてないっ
てぇーの。」
「刹那に無茶しなければ、どうでもいいですよ、ムウさん。トレーニングの相手でもして
あげてくださいね。手を出したら、マリューさんと僕で、ムウさんに制裁を加えますから
。」
その話をして、からからと笑って、「よろしくー。」 とか、手を差し出しているフラ
ガというのも、大概に変わっている。前回、一ヶ月、ホスト修行していた時に、マリュー
は何度か来店した相手だ。その連れ合いが、このムウ・ラ・フラガで、所謂、吉祥富貴の
奇跡の生還者様の一人だ。
「確かに、綺麗なんだけど、年齢的にはアウトだな。」
「はあ? 」
「そして、せつニャンは、可愛いけど、お肉が足りないし、マザコンだから範囲外だ。」
なるほど、なるほど、と、一人、納得しているフラガに、ロックオンも刹那も呆れるし
かない。
「『せつニャン』って、なんですか? 」
「甘えん坊の後追い子猫だから、『せつニャン』。おっと、ネーミングは俺じゃないぞ。
つけたのは、ハイネだからな。・・・・なあ、せつニャン、お兄さんとマーシャルアーツ
の組み手でもしないか? 」
「刹那、相手してもらえ。そして、叩き載してしまえ。」
「おやおや、せつニャンのおかーさんは容赦がないなあ。あははははは。」
「誰が、おかーさんですか、誰がっっ。」
羽交い絞めにされていた刹那も、自分のニックネームには、カチンときたらしい。組み
手と称して、組み合ったが、向こう脛に、思い切り蹴りを入れている。だが、フラガのほ
うも慣れているらしく、笑いながら相手をしているところをみると、悟空あたりと似たよ
うなことをやっているらしい。
あれや、これや、と、コンビニで、いろんなお菓子をカゴに放り込んでいるキラは、実
に幸せそうだ。一応、表向きには、刹那への差し入れであるのだが、新製品の味見は、ち
ゃっかり自分もするつもりだ。
「普通、ロックオンさんの見舞いじゃないか? キラ。」
で、実のところ、療養しているのはロックオンなわけで、差し入れするなら、その療養
人宛が妥当だと、常識派アスランは思う。
「あ、アイスなんかどうかな? 」
「コンビニで、ドライアイスサービスはないと思う。」
「うーん、こういう時は、メロン? いちご? マンゴー? 」
「屋敷にあっただろう。」
「アスラン、ちょっとは協力してよ。」
「買い物カゴを持つ以上に、何かあるのか? 」
そこで、腕を組んで、しばし、キラは考えたのだが、これといってない。とりあえずは
、荷物を運んでくれれば、オッケーだ。
「ない。」
「じゃあ、とりあえず、レジだな。」
「あーん、まだっっ。」
「もうダメ。」
「だって、これは刹那のだもんっっ。」
無自覚に、うるうると睨んでいるキラに、これこそが惚れた弱みというのだな、とか、
アスランは溜息なんかついたりする。要は、アスランはキラに甘い。
「いい年して、『もん』とか言うな。・・・・・わかったよ、好きなだけ入れていい。」
「うわぁーい。」
新製品だけは、ざっくざっくとカゴに放り込み、それから、アイスの専門店で、二時間
は保存が効くようにドライアイスをセットしてもらうと、キラは意気揚々と歌姫様の別荘
に向かった。
まずは、ロックオンたちの顔を拝もうと、そちらへ訪れた。昨日、鷹がやってきたはず
だが、被害はなかったかと刹那に質問するつもりだ。鷹のほうは、「うちのサルと同じく
らいやんちゃな子猫ちゃんだった。」 と、感想を漏らしていた。
「刹那。」
トントンと扉をノックしたら、内側から刹那が顔を出す。それから、キラを中へ入れる
のではなく、自分が出てきた。
「ん? 」
「寝てる。」
「ああ、了解。それなら、あっちで、アイスクリーム食べない? 」
「うん。」
午後の昼寝時間だったらしい。そっと閉じられそうになった扉の向こうを、アスランが
覗くとソファに伸びているロックオンが見えた。
「なあ、刹那。どうせなら、ベッドへ移動させてやったほうがよくないか? 」
「いい。」
長身のロックオンだと、足がソファから飛び出す格好になっていて、窮屈そうなのだが
、刹那曰くは、起こすと、もう寝なくなるのだという。そういうことなら、と、アスラン
も扉を閉めた。
居間のほうへ移って、持ってきたアイスだのお菓子だのを盛大に広げて、おやつの時間
に突入する。
「昨日、ムウさんが来たはずけど、変なことされなかった? 」
「羽交い絞めにされた。」
「えーっとね、キスされたりとかは? 」
「ない。俺もロックオンも範囲外らしい。」
「じゃあ、無事だ。よかったよかった。」
それで無事っていうのも、どうかと思う意見だが、鷹の趣味ではないというキラの意見
は正解だったことが立証された。
「後で、ゲームで対戦しない? 」
「キラ、先に整備だよ? 」
「わかってるよ、アスラン。フリーダムの整備も手伝ってくれる? 刹那。」
「うん。でも、キラ。ゲームは無理だ。」
「ん? やだなー刹那。いくら僕だって素人の刹那相手に本気は出さないよ? 」
プチヒッキーなキラの趣味は、パソゲーなので、腕のほうもかなりのもので、アスラン
では到底太刀打ちもできないほどだ。だが、キラは本気でやる。それはもう容赦なく対戦
相手を滅ぼすのだが、素人な刹那には、それはしないつもりだったらしい。
「違う。物理的に無理だ。」
「物理的? 」
刹那も直接話法でしか話さないので、説明とか形容詞とかいうものがない。
「本体がないとロックオンが言ってた。」
「ええーーーーうそっっ。」
「入れてなかったな。」
荷造りした段階を思い出して、ゲーム機本体はなかったと、アスランも知っていた。本
体は屋敷で用意させるつもりだろうと思っていたからだ。キラは、本体を二台も持ってい
ない。
「ここの人に言えば、すぐに準備してくれるのに。」
キラも、そのつもりだった。そろそろ準備されただろうと思っていたが、それどころで
はない。
作品名:こらぼでほすと 再会2 作家名:篠義