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僕と肋骨と蛇のバロット

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消したい古い記憶に魘されて、明け方に君の夢を見ていた――……
「……なんでここにいる?」
「だって日曜日だから。でもスガタくん起きてこないから、メイドさんに起こしてきてって言われて……」
「…………」
「魘されてた」
「……そうか」
「大丈夫?」
彼女が僕の額に、彼女自身の額を押し当てた。僕よりも少し暖かかった。
「……ん、熱はないね。ひどい夢でも見たの?」
「ワコの夢を見たよ」
「えっ!?それであの魘され様…私は何をやったのか……」
額に似合わない皺を乗せた彼女へ、僕は意識して笑って見せた。実は胸の内は苦い。信じてもいない神を呪いたいほど。
彼女をそっと押し退けて、上半身を起こす。
「早く来ないとスガタくんの分も食べちゃうからね!」
「……太るぞ」
「太りませんよーだ。速く着替えて来てね。それじゃ――……」
「ワコ」
…私もうお腹すいてるんだけど。ワコが扉に手を掛けたまま、不機嫌に振り返った。手招きして呼ぶと、不機嫌そうに寄ってくる。
「何かご用ですか。王様?」
「最近は二人きりになることもなかったから。ちょっと…」
僕はワコの手を取った。いきなりのことに、ワコがぎょっと身を竦める――……少女特有の、柔らかく小さい手。それでも、子供の手とは違う。僕は動揺するワコの瞳をじっと見つめると、そして、

「婚約を破棄しよう。全て水に流そう。ただの二人に戻ろう」
――す、と、握り締める手の温度が無くなった。僕は言い訳の言葉を重ねる…
「21世紀に恋愛のない結婚なんてナンセンスだろ?そして君は、僕じゃなくてタクトが好きなんだろう…しがらみに縛られる必要なんかない。ワコの好きにすればいい。」
「……ぁ」
「全部終わったら、君は島を出ていけ。全部忘れてしまえ。君はそれで幸せになれる」
「ま、」
「君のためだ」
「待って!!!」
鋭い打音が部屋に響いた。乱暴に引き剥がした自らの手を胸に抱いて、彼女は後ずさった。無理もない。でもこれは、
「待って、待って、待ってよ!!」
「待つよ」
「待ってない!!!」
彼女は大きく首を振った。薄く膜の張った瞳で僕を睨む。大袈裟なほど震える肩。思わず差し出した手に、彼女は更に後ずさった。
「意味、わかんないから…!急に、何言ってるの?私何かした?何か怒ってる?」
「ワコは何も悪くない」
「…じゃあ。じゃあ、どうして!?」
彼女は大きく首を振った。何度も何度も、子供がするみたいに。どこか冷めた自分が彼女を見ていた。それほど取り乱す彼女を滑稽だと思った。そんな自分を殺したくなるほど僕は覚めていった…

ぼくは。君のことを。



「ワコ様がお帰りになられました」
「うん。知ってる」
「作用でございますか。……スガタ様?」
「なんだい」
「私達におっしゃられたいことがおありになるのでございません?」
「ないよ。何も。何か言って欲しいかい」
「そんな恐れ多いこと。差し出がましいことを申し上げまして申し訳ありません」
「問題ないよ。僕の可愛いメイドさん達――……僕はここにいる」



作品名:僕と肋骨と蛇のバロット 作家名:みざき