二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

楽欲 -ぎょうよくー

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 


――――SANJI Side―――――

人型チョッパーに抱えられて,バタバタと慌ただしく,サンジは医務室に運ばれた。
ウソップがそのあとをついてくる。
「もう・・・ゾロのやつ,信じられねぇ・・!!」
怒りを露わにしながら,チョッパーは医者の顔で必死に止血と手当てを続けた。
「うっ・・・」
うめきながらも,サンジは歯を食いしばって,痛みに耐えている。
その様子を,後ろからオロオロと眺めていたウソップが,チョッパーに問いかけた。
「おい,チョッパー,傷はどうなんだよ?大丈夫なのか?」
手当てをする手を止めずに,チョッパーは答えた。
「あ・・・ああ。流石ゾロ・・というか・・すごくキレイな斬り口だから,じっとしていれば元通り塞がるよ。神経も傷ついていない。血の量の割には,傷は浅いよ。」
「そ・・そうか!」
明らかにほっと胸をなでおろすウソップ。

そうなのだ。
あの瞬間の出血量から見て,明らかにサンジの足が切断されてしまったと思った。
しかし,実際の傷を見て,チョッパーはいい意味で驚愕した。
ふくらはぎから太腿にかけて,バッサリと刀傷はあるものの,自分が思ったよりも浅かった。
ゾロの太刀筋が鋭利なおかげで,すでに斬られた肉はぴったりとくっついている。
なんであんなに出血したのか・・・内心首をかしげつつも,チョッパーは言葉を続けた。

「・・・ただ,傷が完全にくっつくまで,絶対に動いちゃダメだからね!?わかった?サンジ!?」
まるで,駄々っ子に言い含めるように,サンジを見下ろすチョッパーを見て,サンジは,「はっ」とため息をついて体を起こした。
「・・・ったく,あのクソマリモ,やってくれるぜ・・・飯はどうすんだよ・・誰が作るんだよ?・・・」
「おいおいサンジ,飯は当番制にすっからよ,自分の心配しろよ。ゆっくり休むいい機会じゃねぇか。」
安心したウソップが,軽い口調でサンジを諭す。
「は!?ふざけんなよ!!コックがコックの仕事しなくてどーすんだよ!?ちくしょう,全部アイツのせいだ・・・!」
「確かに・・・ゾロ,どうしちゃったんだろう?サンジのこと,斬るほど嫌いなのかな・・・仲間なのに・・・」
手当てを終え,いつもの姿になったチョッパーが,うつむいて涙ぐむ。
可愛らしい船医にそんな顔をさせてしまい,サンジは罪悪感を感じた。
チョッパーの帽子を,安心させるようにポンポンと叩く。
「いや,俺も油断したんだよ。俺らしくねぇ,下手うったんだ。いつものケンカだよ。お前が心配することじゃねぇ。こんなクソ剣士がつけた傷なんか,すぐに治るから大丈夫だ。」
極上のコックスマイルで,優しくチョッパーをなでる。
「えぐっ・・・えぐっ・・・サンジィ・・・」
さっきまでの医者の顔はどこへやら,流れる涙もそのままに,チョッパーはぐちゃぐちゃの顔でサンジを見上げる。
「なぁ・・なんだか,ちょっと眠いみてぇだ。・・・眠ってもいいか?」
「あ・・・!!そうだな,さっき打った痛み止め,眠くなるんだ。ゆっくり休んで,サンジ。」
「おう,世話かけたな。心配もかけちまって,すまなかった。」
医務室を出ていくチョッパーとウソップに片手をあげて,サンジはいつもの笑顔を投げかけた。

「・・・ふぅ。」
医務室に一人残され,ベッドに横になってさっきまでの事を思い出してみる。

・・・油断なんか,もちろんしていない。
本当に,いつも通りのケンカ。いつも通りの応戦。
違うのは・・・自分の足が見事に斬られたことだった。
しかも,ゾロは自分の蹴りを受け流しただけ。
ゾロから斬りつけてきたのではない。
「なんだろな,あの刀。本当に,俺の事,斬りたかったのか・・・?」
・・・確か,あの刀を,ゾロは『妖刀』だと言っていた。
ならば,刀の意思というものもあるのかもしれない。
「・・・まったく,すげぇ刀に見初められたものだな。」
・・・そして,ゾロと交錯した瞬間に,視界の隅にとらえたゾロの顔。
すげぇ間抜け面だったな,と思い出して,プッと吹き出す。

「でも・・・」
ふっと真顔に戻って,思考を続ける。
あのゾロでも制御できねぇ刀なんてあるんだな・・・。
ま,もちろん,煽って刀を抜かせたのは俺だったんだが。
「・・・あいつ,ショック受けてっかな?自分の刀が言う事聞かないで,主人に背いたんだもんなぁ。」
ちらっとゾロに思いを馳せる。
「まぁ,何にせよ,刀に見初められたのが俺で良かったぜ。他のヤツだったら,今頃まっぷたつだ。」
目を閉じて,ハハっと笑ってみる。
しかし,笑顔はすぐにひっこんで,眉間に皺が寄ってくる。
「・・・ちくしょう。あんなんで斬られるとは・・・俺もまだまだってことか。クソ剣士が刀に呑まれるんなら・・・俺がそんなのクソとも思わねぇぐらいの力で,抑え付けてやんねぇとな・・・」
そんで,暴走したクソ剣士のツラを思いっきり蹴ってやるんだ。

想像の中で,自分に蹴られてぶっ飛ぶゾロを思い浮かべながら,サンジは目を閉じて眠気に体をまかせた。