すべてをゆらして
栄口が行ってしまった後も水谷はそこに立ちつくしていた。サッカボールをしまう男子生徒がそんな水谷を怪訝そうに見ていたが、当の本人はそれどころではなかった。
(神様、今、水谷文貴は持てる限りのすべてのプライドでここに立っています)
(本当は学校なんてほったらかして家に帰って泣いてしまいたいです)
栄口の言った事はもっともだった。時間差があったけれど今まさに自分は失恋したのであり、その相手と三年も同じ部活でお友達をしなくてはいけない。この気持ちを忘れられるだろうか、ほかに好きな人なんてできるのだろうか、無理だ、とても可能とは思えなかった。そんな自分をイメージすることができなかった。