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ケンカップルとサンドウィッチ! ~後日談~

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 実力行使は到底不可能。なので正臣は、もう何度耳タコならぬ口タコになりそうな程に言い聞かせたセリフを帝人に言うしかない。歯がゆいこと限りなしだ。
 正臣は、ポテトを先程よりは幾分緩慢な仕草でもそもそ口に運ぶ帝人の方に向き直った。
「あのなー、帝人。俺、前々から口がしょっぱくなるほど言ってっけどさ――――」
「しょっぱい・・・・・・。うん、やっぱりこのポテトしょっぱすぎる。正臣も食べてみなよ」
 はい、という言葉とともに、言葉を紡ごうと開けられたままだった正臣の口にポテトが突っ込まれる。
 突拍子のなさに驚きながらも、まさか吐き出すわけにいかず、正臣は口を動かした。スカスカして噛み応えのない安っぽいポテトは、舌がピリッとするほど塩がきいている。
「どう、しょっぱいと思わない? 食べれば食べるほど口の中が塩っ辛くなって、さっきから舌が変な感じ」
「あー、確かに。いや、でも、この位しょっぱくても俺は平気だな。塩気ないよりはマシ・・・・・・じゃなくて! 話そらすなよ!」
「別にそらすつもりはないよ。――あ、そうそう、さっきの言葉なんだけど、『口がしょっぱくなる』じゃなくて正しくは『口がすっぱくなる』だからね」
「あーもー、どっちでもいいだろ! とにかく、あの2人には近づくなよ」
 正臣がキーッとなりながら言うと、帝人は首を縦に振った。
「分かってるよ。園原さんにもすっかり誤解されちゃってるしね・・・・・・」
 はーっと溜息をつく帝人。周囲の空気が一気にどんより重たいものになった。
「あぁ・・・・・・。ま、杏里に悪気が一切ないだろうしなぁ」
 先日の杏里による「竜ヶ峰くんって、モテモテですね。すごいと思います」発言にいたく傷ついたらしい帝人が、杏里の誤解を解こうと必死になっていた姿を思い出した正臣は、思わず失笑した。
 当の杏里は、用事があって早く帰らなければならないらしく、今日は一緒にいない。だからこそ、こうして杏里の前ではタブーな話(と帝人が定めた)で会話が成り立つのだ。
 意中の相手には思い届かず、しかし、厄介な人物からはモテモテ。
 正臣は不憫な親友を思い、慰めの言葉を掛けることにした。
「まぁ、気ぃ落とすなよ。人間誰しもモテ期ってのはあるらしーからな。――もっとも、俺は春夏秋冬365日年中無休24時間体制で常にモテ期なわけだが!」
「・・・・・・・・・・・・すごくしょっぱい、正臣のせいで」
「なんで倒置法!? 俺の話がしょっぱいとでも!? しょっぱいのはポテトのせいだろ!」
「すごい、正臣って『倒置法』なんて用語知ってたんだね!」
「スルーの上、バカにされた・・・・・・! 人が折角慰めてやったのに!」
「え!? あれ、慰めの言葉だったの!?」
 帝人が目を丸くして正臣をマジマジと見る。その視線は純粋な驚きを示していて、正臣の神経は逆撫でられっぱなしだ。
「しっかりばっちり慰めの言葉だろ! 友の思いやりを無碍にするやつなんて、こうだ!」
 そういうや、正臣は帝人のトレーに乗っていたドリンクを奪うとヂューッと勢い良く啜った。
「あ、僕のシェーキ! まだ少ししか飲んでなかったのに・・・・・・」
「帝人が悪~い!」
 正臣は一通り啜り終えてプハーッとストローから口をはずすと、お情けでちょこっとだけ残してやったシェーキを帝人に返した。冷たいものを一気に吸い込んだせいか少し咳込みそうになるが、ここでゲホゲホすれば帝人からどんな言葉が振ってくるか分かりきっているのでグッとこらえる。
「あー、しょっぱいのをなくそうと思ったのに」
 試しに啜ってみるが殆ど残っていなかったらしく、帝人は眉を寄せた。
「俺の憤り思い知ったか?」
「僕のシェーキ・・・・・・」
「みーかーどー」
 なおも恨めしそうにブツブツ言う帝人に低い声で呼びかければ、帝人が溜息をつきながら頷いてみせた。
「あー、はいはい。僕が悪うございました」
「何か腑に落ちねーけど、反省したならよし。飲んじまったものの代わりにコレやるよ」
 そういって、正臣は自分のスクールバッグを開けて、ゴソゴソと中を探り目当てのものを探し出すとそれを帝人に差し出した。
「・・・・・・・ポッキー?」
 帝人は渡された白い小袋を見て商品名を口にすると「どうしたの、これ」と正臣をまじまじ眺めた。
「クラスの女子から貰いもの。何と言っても俺ってば、常にモテ期だからな! 『紀田くぅん、良かったらコレ食べてぇ(はぁと)』と仄かに頬を赤らめながら、おずおずと俺に差し出してきたのだ!」
「・・・・・・どうせ、小腹が空いたとか喚いてる正臣を見かねたクラスの女子が憐れんで余り物を恵んでくれただけでしょう?」
「そ・・・・・・んなことは、ない!」
 図星だった。
「それに、僕、喉が乾いてるんだけど」
 ポッキーで喉の乾きが癒せるわけがない(シェーキで喉の乾きが癒えるのかとえば、それもまた微妙な気はするが)。正臣は試しに自分の方のドリンクを振るが、氷の重さしか感じなかった。
 正臣は、ジトッとした視線を寄越す帝人と目を合わせないようにしながら、「あー」と意味もなく母音を発した後、わざとらしい咳払いをした。
「ま、細かい事は気にすんな! ――とにかく、あの2人には近づくなよ! 姿見た瞬間にダッシュだ。あと、それやったんだから、お菓子に釣られてホイホイついていったりもしないように!」
「流し方が強引すぎるよ、正臣。・・・・・・ていうか結局そこに話が戻るんだ?」
 帝人は、仕方ないなぁと苦笑しながら、ポッキーをカバンの中に仕舞う。そして、食べ終えたポテトの箱をパコンと潰すとバーガーの包み紙と一緒に簡単にまとめてから、トレーを持って立ち上がった。
そして、同じように立ち上がった正臣の方を振り返り一言。
「まぁ、努力はしてみるよ」
 随分とおざなりな言葉に正臣が抗議しようと口を開く。ところが、帝人は、さっさとトレーを片づけに行ってしまった。