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こらぼでほすと 再会4

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 明日の夜に、悟空が手伝いに来ると、メールが入っていた。平日は、学業があるので、こちらに顔を出せない。それで休日だけでも手伝うと悟空は、はりきっているらしい。いや、はっきりいって看病ではなくて、子猫の相手をしてもらえれば、有難い。目の前を、子猫がちょろちょろとしていたら、母猫も、ゆっくりと寝ていられないからだ。

「明日、午後からキラが来るだろ? ちょうどいいじゃねぇーか? さすがに、あれで、隣に寝てられるのは、キツいと思うんだ。」

「僕には、あそこまで、できませんよ。」

 具合が悪いのだから、ひとりで、ゆっくり寝たいというのが、誰もの希望するところだ。だが、やっぱり、心配なのか、ロックオンは、そのまんま横に刹那を寝かせているわけで、あれでは、寝ていられない。下手をすれば、怒鳴り散らしたくなるだろうに、そういう素振りすらない。大変だなあーと、八戒は感心する。確かに、悟空に、そういう感情を向けているという意識はあるが、あそこまではできないだろう、と、自分を冷静に分析する。

「ああいうのを無償の愛とか言うんでしょうねぇー。」

「おかんの愛ってやつだよな? あいつ、ほんと、バカがつくほど世話好きなんだな。」

「世話好きでもあるんでしょうけど、心配なんでしょうね。」

「あの調子で、残り二人も世話してたんだろうな。よくやるぜ、・・・・ったく。」

 どうも、あの様子から推測すると、残りの二人についても、世話をしていただろうと思われた。まあ、子猫ほどのことはしていないだろうか。

「いや、あんたも、あれと似たようなもんだろ? 」

「保護者が、健康管理を考えない腐れ坊主ですから。」

「はははは・・・・そんなもん、三蔵がやるわきゃねぇーぞ。」

「だから、やってるんじゃないですか。」

 ちゃんとした健康管理までされているキラは、まだしも、悟空は、放置すると、肉だのメンチカツだの、ハンバーガーだの、という、肉しか食わない。バランスを考えて食べようとかいう意識がない。いや、それでも、悟空は悟空なりに考えているらしく、保護者が酒ばかりで、カロリー補給をしないように、朝は、ちゃんと、ごはんと味噌汁を用意しているのだが、やっぱり野菜を食べるという発想はない。

 ということで、『吉祥富貴』のおやつや夜食には、食物繊維や野菜が入っているものが用意されているのだ。

 台所に到着したら、屋敷の人間たちはいなかった。八戒が来ると、使うとわかっていて遠慮してくれているらしい。

「何がいいですか? 悟浄。」

「うーん、スパゲッティーとかでいいんじゃないか? メシがあるなら、チャーハンか天津飯。」

 そして、ここにも健康を留意しないのがいる。炭水化物のみで、メニューを考えるのはやめろ、だ。サラダを付け足して、チャーハンかな、と、台所の食材を確認して、冷蔵庫を、パタンと閉めた。その手に、手が重なる。

「なんですか? 」

「俺、無償の愛はいらないから。」

 悟空やキラたちに対するような気持ちは、いらないと、悟浄は言う。

「有償って、何で支払うつもりです? 」

 答えはわかっているつもりだ。たぶん、答えは、「身体」 だ。わかっていても、尋ねるのが礼儀だろうと、八戒も口にする。

「全部で、チャラにしてくれ。」

「え? 」

「ははーん、あんた、俺が、『そりゃ、もちろん、身体でご奉仕』 とか言うと思ってたわけかい。身体だけで足りないって。」

 背後から抱き込まれるように体温が近付く。全部ということは、この背後の男の心と身体両方で、愛を買うということだ。くくくくく・・・・と、笑って、「さすが、ホスト。口説き上手になりましたね? 」 と、胸の前で合わされている腕に、自分の手を重ねる。

「無償の愛に触発されましたか? 」

「ちげぇーよ。ああいうのは必要ないな、って、俺は思ったんですよ? 八戒さん。」

「確かに、あなたに、あそこまでしてあげる自信はありませんね。」

 もちろん、八戒も、ああいう感情は、悟浄にはない。守ってやりたいというのではない。傍に居て、互いに存在を確認できる状態が望ましい。

「ああー残念だけど、ここまでだな。」

 とても残念そうに、悟浄は、身体を離す。看病に来ているので、いつ呼び出されるか、わからないからだ。

「当たり前です。」

 苦笑して、八戒も、料理の下準備を始める。このまま雪崩れ込んだら、明日の朝、看病どころではなくなるのは明白だからだ。

「ところでさ。八戒は、俺に何くれる? 」

「あーまー、全て? 」

 キラの真似をして、小首を傾げて、にこっと微笑んだら、悟浄が、どがんと台所の壁に自分の頭を叩きつけた。

「それ、反則っっ。ちっくしょーーーこれでお預けって、どんだけ不幸だよ、俺っっ。」

 かなり効果的であったらしい。さすが、大明神の技は、効く。




 役に立たないということはないが、看病のやり方が判らない刹那では、見ているぐらいが関の山らしい。そして、かなりの高熱で、ふうふうと息をしているはずのロックオンは、八戒に、「悪いけど、服を選んでやってください。」 と、頼んでいたりする。

「服? 」

 刹那は、まだ、パジャマのままだが、昨日と違う緑色のストライプのものを着ていた。途中で着替えたのだろう。着替えなさいよ、と、悟浄が刹那に促したら、着替えたという返事だ。

「だから、あいつ、根本的にわかってないから。」

 なるほど、と、八戒は、苦笑しているロックオンの言葉の意味を理解した。つまり、TPOというものが、わからないということだ。咳だけのようなので、パジャマでいる必要はないだろう。

「悟浄、刹那君のほうを頼みます。」

 こっちは、こっちで、汗でべったりと湿っているパジャマを着替えさせる。ついでに、洗面所へ行く間に、シーツも交換だ。だが、悟浄のほうへついていくのではなく刹那は、へろへろのロックオンを支えてトイレまで運び、それから、八戒が昨日していたように、タオルをお湯で濡らし絞るということはやっているから、とりあえず、手伝うつもりはあるらしい。

「こんな酷い風邪ひいたのは、久しぶりだ。」

「いや、あのな、ロックオン。そんだけ抵抗力とか免疫力が落ちてるんだって。」

 着替えて、また、ベッドに倒れ込んでいる親猫は、どうも自分が奇跡の生還者様だということを忘れている。ちゃんとした普段着に着替えてきた刹那に、いつものように、命じている辺りが、すごいといえばすごい。高熱過ぎて震えるより熱いというのだから、相当、辛いはずだからだ。

「刹那、八戒さんたちとメシ食って来い。」

「あんたは? 」

「おまえ、これで食えたら、俺は食欲魔神だぞ? 」

「食べないとダメだ。肺炎になる。」

「・・・・あー、無理。」

 そして、無言猫だったはずの子猫は、ちゃんと親猫と会話していたりする。それなりの会話はできたのだろうが、まだ現状の把握は甘いな、と、八戒は、その会話を中断させる。

「刹那君、チューブパックの栄養補助ゼリーがあるはずだから、屋敷の人に貰ってきてください。」
作品名:こらぼでほすと 再会4 作家名:篠義