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ふざけんなぁ!! 5

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それから三十分後、満腹になり幸せに店の外に出た二人を待っていたのは、木刀だけでなく、ぽん刀や真剣を引っ提げた、強面のチンピラ達約100人だった。

★☆★☆★


もふもふもふ。
ごっくん。


「あー、俺、折原だけど。平和島静雄、轢き殺してきて。んじゃ宜しく」


もふもふもふ。
ごっくん。


「折原です。平和島静雄を殺して。じゃ、そういうことで」


もふもふもふ。
ごっくん。


「……ねぇ臨也、君、食べるか電話かけるか、どっちかに集中したら?……」
新羅がやんわり窘めても、怒れる新宿の情報屋は細い目を吊り上げて、ぽちぽちと携帯のボタンを押す手を緩めなかった。
それでいて、冷凍庫から勝手にあさってきた、帝人特性の冷凍【タイヤキ】を、ありったけレンジで解凍し、大皿に山盛りにしたそれを自棄食いしている。

あのジャンクフード嫌いな彼が、拗ねながら帝人お手製のタイヤキを、頭から齧り付く様は、毛を逆立てながら魚にむしゃぶりつく黒猫を彷彿させ、不気味だけど可愛らしい。

現在、セルティだって表向きは徹底的に毛嫌いしているけど、臨也をこうして拒むことなく自宅で好き勝手させるのは、一人ぼっちではぶり続ければ、また彼が酷い悪さをするかもという心配もあったが、それでも未だに恋心を自覚できないでいる心根の歪みっぷりが、彼女の哀れを誘ったのだ。


もふ………。
一口齧って、心底嫌そうな顔になる。
ほうれん草の胡麻和え入りタイヤキを、引き当てたらしい。

「はい、残すなよ」

そのままぽんと、新羅にと、彼が勝手に置いた大皿に、食べかけを放り込んできやがった。

「本当に臨也は我儘なんだから」
苦笑を一つ零しつつ、でも俺様何様な情報屋の前に、マグカップになみなみと注いだ、温めのカフェオレを置いてやる。

新羅自身、セルティに恋焦がれ続け、約20年の歳月を過ごしてきた。
だから報われない恋に身悶える男は、他人事には思えなくて。
臨也は心底反吐が出るぐらい嫌な奴だと判っていても、何となく見捨てられないのだ。


臨也はカフェオレで口直しをした後、また新たなタイヤキに齧り付いた。
今度は当たりを引き当てたらしい。
カレーの独特な匂いを撒き散らしつつ、もふもふっと頬張っている。
それでも相変わらず携帯を弄るスピードは衰えなくて、よくもまぁこんなにも脅す相手が尽きないものだと感心する。


「警察にばらされたくなかったら、とっとと平和島静雄をぶっ飛ばしちゃって!!」
「ねぇねぇ臨也、ちょっと聞いて欲しい話があるんだけど。帝人ちゃんがらみで」
「ああ?」

少女の名は、水戸黄門の印籠のように、絶大な効果を発揮したらしい。
直ぐに携帯を弄るのも、タイヤキを齧るのもやめ、臨也は剣呑な面持ちで、いぶかしみつつ眇め見る。

新羅はゆったりとコーヒーを一口啜り、唇を湿らせてから口を開いた。

「帝人ちゃんだけど、実は今日から学校に登校しててね。七月に入れば期末テストも近いし、ほら、テスト週間前って私達の来神時代、半日授業だっただろう? 静雄は過保護だし、帝人ちゃんを溺愛してる。もしかして昼の休憩時間を使って、お迎えしてるかもしれないって思うんだけど………、あの娘、巻き込んじゃっていいの? ちゃんと確認した?」


みるみるうちに、臨也の顔から血の気が引いたのは、言うまでも無かった。


★☆★☆★



「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおらぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!」

引き抜いた侵入禁止の標識を、力いっぱい振り回す。
静雄が吼える毎に、リアル無双で人間が跳ね飛ばされて宙を舞う。
だが倒しても倒しても、気絶し、死屍累々と横たわる仲間を踏みつけ、向かってくるチンピラ達の数は一向に減らなくて。


「ケンカ、ヨクナイネー!!」
今回静雄にとって幸運だったのは、襲撃場所が露西亜寿司の店先だった事だ。
二メートルを越す黒人の巨漢サイモンが、屯う奴らを手当たり次第に投げ捨てている。
彼が加勢してくれるお陰で、今の所マジでブチキレず、結構冷静に相手をなぎ倒す事ができるのだから。

「うぜぇうぜぇうぜぇ!! お前ら一体、俺に何の用だよ!!」

静雄自身、帝人と一緒に住み始めてから暴れたのは、黄巾賊の奴らをぶっ飛ばしたあの夜の一件だけで。
粟楠会の構成員とも、揉め事を起こす事無く上手く付き合っている今、こんな大量のヤクザ崩れに襲われるなど、身に覚えが全くない。

だとしたら、仕向けたのはきっとあいつだ。
静雄の幸せをぶち壊す事に命かけてるウザ男……、折原臨也に決まっている。

だがここ数ヶ月、奴は数に物を言わせて仕掛けてくる事は無かったのに、一体何が理由だ?
意図が全然読めねぇ。

「静雄、死ねぇぇぇぇ!!」
木刀を振り上げツッコんで来た男に備え、冷静に標識を宙に振りかぶる。
そんな間合いを計っている最中に、来良学園の制服を着た少女が、静雄の前に躍り出てきやがった。

贄川春奈だった。

「危ない!!」
「お前があぶねぇだろうがぁぁぁぁぁ!!」

怒声をあげ、左手で少女の腕を引っつかんで背に回そうとしたが、逝っちゃってる目をした少女はするりと彼の腕をかわし、踏ん張って其処に踏みとどまり、静雄に背を向け両手を広げた。

「おい、どけ」
「嫌です。私が平和島さんを守るんです。愛の証明に、私が貴方を庇うんです」
「はぁ!?」
「平和島さんを庇って私が怪我をすれば、きっと貴方は私を愛してくれる」
「当たり屋か、てめぇは!?」
「愛の為です!! 平和島さんは、これで……私のものになる!!」
「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」

……勘弁してくれ、マジで。

背筋がぞくぞく寒くなった。
一体どういう思考をしているのだ、この自己中心的な女は!!

足手まといな上、ここで怪我させたら最後、以降マジで妖怪のように張り付いてくるだろう。
冗談じゃねぇ。
いまだかつて無い恐怖に襲われた静雄は、半分錯乱状態で喚き散らした。


「トムさん!! トムさん!! トムさぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああああああん!! 直ぐここに来て下さぁぁぁぁぁぁい!!」

ドレッドヘアな上司が、彼の尋常でない声に驚き、即座に避難していた露西亜寿司の店から駆け出してくる。
「スンマセンこの娘、怪我しないうちに、そっちに連れてって……、保護してやって……」
「あいよ」
「嫌ぁぁぁぁ!!」
長年の付き合いか心得た物で、彼は速攻で贄川を背後から羽交い絞めにした。
そのままずるずると店の中へと引きずり込もうとするが、人の迷惑を全く顧みない少女はじたばた暴れて抵抗を見せる。

池袋の自動喧嘩人形と、片や田中トムと来良の女子高生。
どっちがか弱く叩きのめしやすいかは、一目瞭然だろう。

上司の方に襲い掛かろうとした馬鹿の群れに、静雄は舌打ち一つ零すと、標識を一振りでふっ飛ばし、その後改めてチンピラの群れに仁王立ちして向き合った。
「てめぇらの標的は俺だろ? 余所見してんじゃねーよ」
二人が無事店に入るまで、何としても彼らを守らねばならない。

だが、大混戦の中、突如携帯電話の呼び出し音が響き渡る。
作品名:ふざけんなぁ!! 5 作家名:みかる