こらぼでほすと 再会5
「・・・・・・痛いところを・・・・・」
つまり、自分も、いちゃいちゃできる相手があるけど、おまえはいないだろ? ということを
ソフトに、虎は告げているわけで、ハイネには、ただいま特定の方がいらっしゃらないから、ク
リティカルヒットである。
そんな朝のひとときがあった。
日曜日は、かなり大騒ぎだったので、月曜日は、とても静かだった。悟空は、月曜からの登校
に備えて、早めに帰ったし、他の面々も、まだ寝ているのか、午前中の屋敷は、静まり返ってい
る。
他称せつニャンのママなロックオンと、刹那当人は、早めに宴会から引き上げたので、いつも
通りの時間に起床した。ところが、医者の 「しばらくは安静に。」 という忠告により、ロッ
クオンはリハビリができないでいる。部屋から出ようとすると、刹那が押し戻すからだ。
「メシを食いに行くだけだろ? 」
「運んでくる。」
「そんな大袈裟な。」
「うるさい。」
こんな調子なので、部屋でブラブラしているわけだが、外からの轟音には気付いて、出窓のほ
うから外へ出た。どうやら、MSが降下してくるようだ。シンたちが、プラントに里帰りしてい
るから、それだろうと、また部屋に戻った。
保護されていたエターナルから狭いMSのコクピットに押し込められて、別荘へ降下させられ
たアレルヤとティエリアは、久しぶり重力に、ちょっとふらふらしている。 人並みの行動はで
きるようになったと言っても、ティエリアもアレルヤも、以前のように、とはいかない。こっち
です、という案内についていくのが精一杯だ。
一番端にある部屋の前で、コンコンと、案内役がノックすると、内から声がして、それから、
扉が開く。案内役が挨拶する声に、答える声は、聞きなれた声で、ティエリアが、案内役のダコ
スタを押し退けるようにして、中へ足を踏み入れた。
扉の横には、小生意気な野良猫が、そして、奥のソファには絶望視されていたマイスターが座
っていた。
「ロックオン・ストラトスっっ。」
ちょっと痩せたパジャマ姿のロックオンは、現れたティエリアに絶句して、それから、破顔し
た。背後から、さらに、アレルヤの顔が見えたのだろう、ニコニコと笑って、「よおう、おふた
りさん。」 と、手を挙げる。
・・・・・生きてた・・・・・
ほっとして、それから、刹那にも顔を向けた。最後まで、お互いの消息を確認している暇もな
かった。誰がどうなったか、なんて、ティエリアには関係ないことだったというのもある。
「刹那、無事だったんだね? よかった。」
アレルヤのほうが、刹那に手を差し出した。「ああ。」 と、いつものように、ぶっきらぼう
に刹那は答えてから握手する。
ティエリアのほうは、立ち上がったロックオンのほうへ、出来る限り足早に近寄って、その姿
を上から下に眺めた。
「無事だったんだな? ティエリア。」
よしよしとでも言うように、ロックオンがハグすると、途端に、ひくひくとティエリアは嗚咽
する。
「泣きなさんな、ティエリア。アレルヤも元気そうで、何よりだ。」
とんとんと背中を叩いて、ティエリアを宥めつつ、アレルヤにも顔を向ける。
「あまり無事ではなかったけどね。あれから、僕もティエリアも、大破して拾われたんだよ。」
ティエリアとアレルヤも、無事とは言いがたいことになっていた。刹那だけは、唯一、無事に
、ソレスタルビイーングに機体ごと回収されたが、ふたりは、ロックオン同様にラクスに拾われ
ていたことを、アレルヤが説明する。
「そうか。」
刹那が、あれほど安心感に餓えていたのは、それも原因だったのだと、ようやく、判った。先
に戦線離脱したので、事情が判らなかったし、刹那に聞くこともしなかった。その後の状況ぐら
い確認すれば、判ったのに、と、ロックオンも苦笑した。
「じゃあ、おまえたちも、どっかで看護されてたんだな。」
「うん、以前、ロックオンと刹那が借り出された時に、うちに来ていたエターナルという戦艦に
ね。・・・・まあ、日常生活は、どうにかなるぐらいには回復したよ。ロックオンは、どうなの
? 」
「いや、それが・・・・風邪引いてさ。それでちょっとリハビリが遅れてるっていうか。歩くの
は、どうにかなってたんだけどな。」
三日前より歩くのが、ちょっと遅いけど、まあ、順調といえば順調だ、と、説明した。それは
、何よりだ、と、アレルヤが、ほっとしていると、刹那が、ロックオンとティエリアを引き剥が
す。
「やめろ、刹那。」
「座れ。ティエリア・アーデ、お前も、だ。」
「だから、安静つったって、これぐらいで疲れないんだって。」
「うるさい。」
「まあまあ、ロックオン。僕も座りたいよ。」
いつものように、アレルヤが取り成しているので、ああ、いつもの日常だ、と、ロックオンも
頷く。マイスター同士は、以前は、いつも、こんな調子だった。刹那の我侭や、ティエリアの容
赦ない発言を、ロックオンが叱って、それを宥めるのが、アレルヤという形式になっていた。四
人が揃わないと、出来ないので、揃ったと実感させられる。
ようやく、再会の挨拶が終わったところで、準備のいい、ダコスタが、お茶を運んできた。何
かあったら、内線で、と、準備だけして、さっさと部屋を出て行った。広いソファの真ん中に、
ロックオンは座っているのだが、右側からティエリアが、左側から、刹那がぎゅっとしがみつい
ているのが、アレルヤには、おかしくて笑い転げている。
「笑い事じゃないぞ、アレルヤ。刹那を受け取れ。」
「やだよ、ロックオンが面倒見てくれないとね。」
もしかして、俺は、ゆっくりと一人寝は、当分できないんじゃないだろうか、とか、ロックオ
ンは、左右の子猫たちを眺めて頬を歪める。刹那が、そうだったように、たぶん、ティエリアも
、安心感に餓えているらしい。
・・・・・こりゃ、さっさと動けるようにならないと、いろいろと大変だな・・・・・
「アレルヤ、おまえ、どれくらい動ける? 」
「まあ、どうにか一通り。」
「じゃあ、全員でやれば、どうにかなるかな。」
「そうだね。」
全員が完全はないが、とりあえず、動けるのなら、生活するのは、どうにかなる。そう思って
いたら、「ダメっっ。」 と、刹那が、叫ぶ。
「ああ、おまえ、三人分のフォロー頼むな、刹那。」
「ロックオンだけしかしない。」
「俺も、ロックオンのフォローしかしたくない。」
さらに、逆手のティエリアも、いつも通りの強気発言だ。刹那ほど重症ではないんだな、と、
ティエリアの頭を、ぐりぐりと撫でて、ロックオンは大笑いする。
「おまえ、自分のことをフォローしろよ? ティエリア。それから、刹那、俺の手伝いをすると
、必然的に三人分のフォローになるから。」
「なんか妬けちゃうなあー。」
「妬けなくていいから、刹那かティエリアを預かれ、アレルヤ。」
「ご無礼、僕は、自分で手一杯。だから、ロックオンがやって。」
作品名:こらぼでほすと 再会5 作家名:篠義