こらぼでほすと 再会5
こらぁーアレルヤーと、ロックオンが、冗談で怒鳴ったら、青紫の子猫が、ふいに顔を上げた
。
「俺は、自分の思うように行動する。あなたの指示は受けない、ロックオン・ストラトス。」
「あはははは・・・・ティエリア、いつもの調子が出てきたね? やっぱり、そのほうが、ティ
エリアらしいよ。」
パチパチとアレルヤが手を叩く。地上に降下するまでの、ティエリアは、女王様然とした言動
すら、ナリを潜めていたからだ。
久しぶりに朝寝坊を堪能させられた八戒は、午後から、ラボのほうへ呼び出された。オーナー
からの通信が入ったからだ。
「ご苦労様です、八戒さん。」
「いえ、たいしたことはしていませんよ、オーナー。」
労いの言葉をかけてくれる通信か、と、思っていたら、別の用件だった。
「『吉祥富貴』 は、本日から一週間お休みにします。お客様たちには、すでに、その旨の通達
はさせておきましたので、ご心配なさいませんように。」
・・・・・あーやっぱり、監視カメラにいろいろと写っているんでしょうねぇー・・・・・
先日、悟浄が文句を吐いていた所為だろうと思われる。だから、ここで、朝寝坊するようなこ
とは控えようと言ったのに・・・・と、八戒は、ふうと息を吐いた。
「あらあら、八戒さん。私くしは、そこまで、デバガメじゃありませんわ? 寝室にはモニター
もマイクもございませんもの。ほほほほほ。」
・・・・いや、だから、それはいいですから、オーナー・・・・・・
つまり、この別荘で起こっている事は、リアルタイムに歌姫様の目に入るということだ。
「ちょうど、今年は日曜日ですので、お客様もお招きして派手にやろうと思いますの。」
「ああ、もう、そんな季節なんですね。じゃあ、ケータリングの手配とか、出席者のリストとか
用意しないと。」
「いえ、八戒さんには、四人のマイスターのお世話をお願いいたします。そちらのほうは、こち
らから指示を出しておきます。そのつもりでいてくださいませ。」
当日の衣装やイベントなども、こちらで手配するという至れり尽くせりの内容だ。それと、と
、最後に付け足された用件に、八戒が珍しく噴き出した。
まだ眠い、もっと寝る、と、うだうだとしているキラは、アスランにだっこされて移動中だ。
ちょうど、廊下の向かいから、虎が歩いてきた。
「まだ寝てるのか? 」
「うーーー眠い。」
いやまあ、寝ててくれたほうが世界平和とか、『吉祥富貴』 で働いている人間の心の平穏に
は貢献しているだろう、と、虎は思う。
「アイシャから伝言だ。『今年は、どうするの?』 だそうだ。」
「ぱふぱふハグしてもらって、アイシャさんの笑顔がいー。」
「・・・・それを亭主に伝言させるのか? キラ。」
「うん。」
申し訳ありません、と、アスランは笑っている。バルトフェルトの奥方は、キラを可愛がって
いて、毎年、リクエストを聞いてくる。そして、キラが毎年、同じモノをおねだりするので、こ
れは、もう、恒例行事となっている。ハグしてもらう、というのが、それだ。キラ以外が言った
ら、即座に仕込み銃で撃たれそうな内容だが、キラだから許されている。
「たまには、贈り物を探す楽しみを、アイシャにくれないか? 」
で、まあ、このリクエスト、はっきり言って、お金はかからない。キラは、物品を貰う必要は
ないからだ。
「んー、じゃあ、お菓子? 」
「まあ、それでいいか。・・・アスラン、『吉祥富貴』は、本日から一週間営業休止だそうだ。
オーナーから、さっき、お達しがあった。」
「ああ、そのほうがいいですね。」
四人のマイスターの世話をやりつつ、店を営業するとなると、八戒たちの負担が大きすぎる、
と、アスランも思っていた。今朝、残りの二人が降下して来たことは、朝から連絡されていたの
で、挨拶だけでもしておこうと、キラを連れ出したところだ。
「ただし、おまえには仕事が割り振られているから、そっちをラボで確認してこい。」
「そうですか。」
「オーナーが、キラ欠乏症らしい。それで、これは、そりゃいかんだろう。」
アスランが、昨夜、キラと散々いちゃいちゃして、朝からお姫様抱っこでキラを連れ歩いてい
るというのは、その欠乏症に止めを刺したようなものだ。これは預かるぞ、と、キラをひょいっ
と抱き上げて、スタスタと来た道を戻っていく。
やれやれ、と、アスランも苦笑しつつ、来た道を戻る。ラクスは、キラが笑っていないと機嫌
が悪くなる。それだけではない。終始、世界を飛び回っていて、なかなかキラと逢えないと、さ
らに、暗黒度が増す。それを、『キラ欠乏症』と、みな、呼んで怖れている。
キラが待っていてくれる場所があれば、いつでも、そこで逢えるから、と、ラクスは、『吉祥
富貴』を作った。ちょうど、キラも働きたいと思っていたから、需要と供給が合致した結果でも
ある。
・・・・・でも、俺のだけどな・・・・・
キラがラクスに、そういう感情を持っていたら、違った未来があったかもしれない。けれど、
キラはアスランを選んだから、こんなことになっている。とても複雑な関係だが、ラクスの気持
ちを拒絶するつもりは、アスランにもない。ラクスより酷い『キラ依存症』のアスランは、ラク
スの気持ちが、よくわかるからだ
。
ごめん、と、ロックオンが昼寝をするために、ベッドに潜り込んだ。じゃあ、僕も、と、ティ
エリアが、その横に転がった。ものすごい怖い顔で、刹那は、ティエリアを睨んだが、「俺は弱
っている。きみは健康だ。」 と、さらりと言われて文句を続けられなかった。仕方がない、と
、寝室から戻ったら、アレルヤもソファに寝転んでいた。
つまり、三人は療養してリハビリの人ということらしい。さすがに、風邪も全快した刹那は、
昼寝なんかできるわけもないので、うーん、と、考える。しばらく、うろうろと室内を歩き回っ
ていたが、トントンとノックの音がした。
「刹那。」
扉が開くと同時に、キラの声がした。キラは、虎にだっこされて手を振っている。
「キラ? 」
「えへへへへ・・・・遊びに来たんだけどね。ティエリアとアレルヤは? 」
刹那がソファを指差すので、そちらへ虎が歩くと、ソファで寝ているアレルヤがいる。
「う? ということは、ティエリアは? 」
また、あっち、と、寝室を指差すから、虎に移動して貰うと、ロックオンとティエリアが仲良
くベッドで寝ている。
「シエスタの時間か。ママを取られたな? ちび猫。」
虎は、その姿に、微笑んだ。いつもなら、そこで、寝ているロックオンを観察しているはずの
刹那だが、その場所を取られていたからだ。
「貸してやるだけだ。」
「じゃあ、散歩でもする? ああ、ちょうど、イザークたちの機体が戻ってきたから、あれで対
戦して遊ぼうか? 」
「やめてやれ、キラ。やるなら、ストライクとルージュだな。」
作品名:こらぼでほすと 再会5 作家名:篠義