こらぼでほすと 再会6
ごろりと芝生に寝転がってアレルヤが提案する。そうだなあー、と、また、相槌を打ったら、ティエリアが、ぐいぐいとロックオンを引っ張ってくる。
「ん? 」
「昼寝の時間だ、ロックオン・ストラトス。」
「いや、ここではやめとこう。一回ひっくり返ったんだ。」
ちょっと肩を貸してくれ、と、、ティエリアにもたれかかったら、大人しく、その体重を支えてくれる。あんまりにも長閑で、みんなが、のんびりできる時間があるのが、とても貴重だと思う。
数日は、何事もなく穏やかに過ぎたが、イベント前日ともなると、やはり騒がしくなってくる。とはいえ、リハビリ組は、手伝うよりは、ゆっくりしてくれと言われてしまい、適当に過ごしている。
居間のほうは、なんだか、書類やら荷物が散乱しているので、ゲーム機を、ロックオンの部屋に移動させた。そして、ついでとばかりに、鷹が、キラも配送して来た。当日の主役様には、大人しくしていただかなくてはならないからだ。
「すまないな、ママ。うちの坊主も預かってくれ。」
「あんたさ、いい加減に、その呼び方はやめろよ。」
俺は、保母さんじゃねぇーよ、と、ロックオンは、笑いつつ、そんな鷹にお茶を差し出す。すでに、キラのほうは、刹那とじゃれているので、アレルヤに任せた。
「あいつ、不器用だからさ。手伝わせると破壊するんだ。・・・まあ、夕方には歌姫様も戻ってくると思うから、それまでな。」
「キラの誕生日ってことは、カガリも来るのか? 」
「いや、嬢ちゃんは、公式のやつがあるからパス。・・・・ティエリア、おにいさんとデートしようか? 」
だから、さら~っと、声音まで変えてやるなよ、と、ロックオンがツッコミむ。いやいや、本当に資材の運搬があるからだよ、とか言い訳していたりするが怪しい。
「キラはいいのかよ? 双子なのに。」
「双子だけど、公式には無関係なんだな、あいつら。ははははは。さあ、子猫ちゃん、お兄さんと行こう。」
やや強引に腕を掴んだ鷹に、びゅいーんとふたつのものが飛来して、ごちっ、ごちっと鷹の顔に命中した。もちろん、キラと刹那の投げたスリッパだ。ついでに、ロックオンが、ティエリアを奪い返している。
「ムウさん、手を出したらダメだって言いましたよ? 僕。」
「えーーあれって、せつニャンとママだけじゃないのかよ。あーあー、しょーがないなあー。じゃあ、ひとり寂しく働いてくるかあ。」
じゃあ、またなあーと陽気に出て行く鷹は、やっぱりマイペースだ。
「アクリル板で、バーカウンターと棚を組みますので、ボトルの配置は、お任せします。・・・・トダカさん、あれは、噂の? 」
八戒が、ちらりとトダカの背後に目をやる方向には、ずらりと軍隊形式に並んで待機している男たちだ。「ああ。」 と、トダカが頷く。三蔵から聞いていたが、本当に、お揃いのスタッフジャンバーに身を包んでいるのがすごい。真っ白な薄手のジャンバーの背中部分には、金糸で、「LOVE TODAKA」 と刺繍までされている。
「組むのも、こちらでやろう。あと、うちのもので賄えることがあれば、お手伝いさせるが? 」
「はい、じゃあ、ベンチや日よけタープの設置をお願いします。」
ガーデンパーティー形式と決まったので、庭に、『吉祥富貴』を再現する。で、まあ、直射日光が問題になるから、日よけタープを、かなりの数、設置することになっていた。すでに、庭の中央には、真っ白なグランドピアノが設置されて、調律されていたりする。
「おーい、八戒さーん。厨房スタッフが呼んでるぜー。」
屋敷のほうから、ディアッカが大声で呼び返すので、「お願いします。」 と、八戒が踵を返した。ところが、玄関で待っていたのは、悟浄で、ぐいぐいと一階の奥へと引っ張っていく。
「ママニャン、うちの女房にメシ提供してくれ。あとで、迎えに来るから休憩してろ。」
前半は、ロックオンに、後半は、八戒に告げると、八戒が手にしていた書類を取り上げて出て行った。え? え? と、状況に取り残されている八戒に、アレルヤが、サンドイッチとアイスティーを用意している。
「八戒さん、まあ、座ってください。今、ママニャンは昼寝してるんで、代わりに僕が。」
叫ばれている当人は、定刻通りに昼寝しているので、ここにいない。「ママニャンって、可愛い呼び方ですよねぇー」 と、朗らかに笑っているアレルヤがソファに誘導してくれる。
で、よく見たら、刹那もイザークも、ゲームに興じていたりする。ははーん、ここは託児所代わりにされているのだな、と、八戒は苦笑する。手間がかかるのは、ここに押し付けられたらしい。朝から動きっぱなしの自分を心配して、亭主が預けて行ったのだとわかると、苦笑が零れた。
「すいませんね、アレルヤ君。」
「いえ、全然。僕らでも、お手伝いできることがあって、よかったです。」
「そういや、キラ君は? 」
そう最大にして最高に手のかかる大明神様の姿がないので、不思議に思った。
「ああ、キラ君なら、ロックオンと一緒に昼寝してますよ。たぶん、今夜は徹夜になるからとか言って。」
あーそういうことになるのか、と、八戒のほうも納得はした。あの激甘いダーリンが、イベントの夜に大人しくしているわけはない。とりあえず、食事して戻ろうと、サンドイッチに手をかけたら、今度は、シンとレイが現れた。
互いに、すっかり顔見知りらしく、わらわらと出窓から外へ出て行く。ティエリアだけが取り残されていると、また、イザークが戻ってきて、ぎゃんぎゃんと言いつつ連れだしていく。それなりに統制はとれているらしい。
ようやく、スケジュールを消化した歌姫様は、マッハの勢いで別荘へやってきた。本当に、今回は長かった。もういっそのこと、人革連もユニオンもAEUも侵略してやろうか、と、思うぐらいに暗黒度がアップしていた。それというのも癒しのキラと離れていた時間が長かったからだ。キラ成分を補給しないと、本当に世界侵略を開始しそうなので、平和のためにも、是非とも、キラを抱き締めなければならない。
一番奥の部屋へ優雅でありつつ足早に進み、扉をノックして、開く。どういうわけだか、そこには、かなりの人数がたむろしていた。
「キラっっ。」
テレビの前で、わきょわきょと暴れているキラを発見して、さっさと腕に確保した。その間、数秒という早業だ。
「あれ? ラクス。おかえりなさーい。」
そして、ぽややんとしたキラは、抱き締めたラクスに驚きもせずに挨拶している。驚いているのは周囲のほうだ。
「ただいま戻りました、キラ。ああ、キラ。よくお顔を見せてくださいませ。私くし、もう、あなたに会えなくて、ほんとうに辛くて・・・・・」
「お疲れ様、で、ありがとーー。みんな、無事に保護してくれて。」
「ええ、ええ、キラのお願いでしたら、私くしは、なんであろうと叶えます。」
やっぱり、こいつか・・・と、その場にいた全員が、マイスター保護の要請が誰からのものだったかは確認した。
「カガリがね、ありがとーって。」
作品名:こらぼでほすと 再会6 作家名:篠義