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こらぼでほすと HGP

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 ジャガイモを剥かせるだけで、三十分かかったのには、ロックオンも呆れた。ついでに、りんごを剥かせたティエリアも同様の遅さだった。

「とりあえず、できたから食べよう。」

「ああ、そうだな、はい、いただきます。」

 食事の挨拶から、ということで、年長者が率先して声をかける。無視して、パンに手を伸ばした刹那は、ぽかんと制裁を受けている。





 食後、食器の片付けをして、それから、一休みすると、部屋の掃除をする。リハビリというよりは、生活能力を身に付けさせるためというほうが正しい。ほうきの使い方、掃除機の使い方、洗濯機、乾燥機の使い方、ベッドメイキングの方法等など、教えるべきことは、たくさんある。別に、ロックオンは、自分が家事全般を引き受けるつもりだったのだが、「それでは意味がない。」 と、他の三人から抗議された。どうせ、一年かそこいらで、また、元の生活に戻るのだから、覚える必要はないだろうと、ロックオンが説明したら、まずは、ティエリアが、「あなたが負傷した場合、途端に困ることになる。」 と、切り出し、次に刹那が、「手伝いぐらいはする。」 と、言い、最後にアレルヤが、「負担は公平にしようよ。」 と、纏めたため、教えることになったのだ。

「はい、窓を拭く時は、クリーナーを拭きかけた新聞紙で拭くと、綺麗になるから。」

 本日は、窓拭きだ。それを説明していたら、ぴょこんとキラとラクスがセットで部屋にやってきた。

「あー掃除してるー。」

「まあ、さすが、ロックオン。そんなことまで。」

 おそらく掃除など縁がないであろう二人組は、マイスターたちに感心していたりする。

「普通だと思いますよ、オーナー。」

 とりあえず、生活能力は必要なわけで、そういうのが当たり前のロックオンは、感心されることがすでに頭痛の域だ。

「あのね、刹那、今日これから、裳着というのをやるから。ロックオンさんも着替えてね。」

 で、さっさと、濡れた新聞紙を手にしていた刹那を、キラは連れ出していく。

「ディアッカが、すぐに参りますのでね。着替えは、案内したもらってくださいませ。さあ、ティエリア、参りますよ? 」

 こちらも有無を言わさず、ティエリアの腕を掴んで拉致して行く。だから、説明しろってんだよ、と、ロックオンは脱力するしかない。

「なあ、アレルヤ、『HGP』って用語は記憶にあるか? 」

「『HGP』? ごめん、思いつかない。キラが、モブとかモギとか言ってたよね? それの関連なのかな? 」

「俺もわかんねぇーんだよ。あいつら、略語で言いやがるからな。」

「まあ、着替えろって言ってたから、何かのイベントなんだろうね。」

「そうなんだけどなあ。」

 ふたりして、とりあえず、やりかけの窓拭きをしていたら、ディアッカが顔を覗かせた。なぜか、彼は、まず最初に、「ごめん。」 と、頭を下げて平謝りという態度だった。何事だ? と、ロックオンとアレルヤが手を止めたら、「ほんと悪い。原因は俺なんだよ。て、言っても元凶はキラなんだけどさ。あいつ、勝手に暴走しちまってさ。」 と、本日のイベントに対する原因について教えてくれた。

「はあ? どこで、そんな誤解が生まれるんだよ? 」

 さらに、脱力したのは、言うまでもない。

「だから、キラが聞くと、そうなるらしい。」

 申し訳ないとでも言うように、ディアッカが頭を下げる。さすがに、潔癖症なイザークには告げられなくて、内緒で出てきたディアッカは、似たようなことで召還されているメンバーにも同様に頭を下げて回った。

 たった一言、「ロックオンって、HGPをやってたりしてな? 」 と、キラに話しかけたために、こんなことになったのは、さすがに申し訳ないと思っているらしい。


 ディアッカが差し出したのは、「The Tale of Genji」 というタイトルの二冊の本だ。

「こっちが、『葵』 で、こっちが、『若紫』 というサブタイトルなんだけどさ。・・・・HGPっていうのは、この二つの本をネタにしたヨタ話。光源氏計画を略して、HGP。」

「内容は? 」

「あーっとな、この話は、光源氏って男の一生について書かれている本なんだけど、この人、自分の父親の愛人が好きでね。その愛人に似ている子供を攫ってきて、自分好みの女性に育て上げるんだよ。それが、『若紫』 というストーリー。それで、その子供が十四になった時に、光源氏の正妻が亡くなったんで、その子を正妻に迎えるわけ。それが、こっちの『葵』というストーリー。」

「つまり、何か? 子供を攫ってきて自分好みに育て上げてエッチする計画ってことかぁー? 」

「ロックオン、それ、あからさま過ぎて下品だよ。」

「俺が誰に対して、そうだって、あの電波天然は言ってるんだよ? ディアッカ。」

 それは、言わなくてもわかるだろう。刹那に対する過保護ぶりからして、該当者は刹那だ。わかっていても、ディアッカは口にするしかない。

「刹那だろうな、この場合。」

「冗談じゃないっっ。ありゃ、おまえ、ガキなんだぞ? 」

「だから、キラだからさ。そういうことは一切無視なんだよ。ちょうど、刹那は十七ぐらいだろ? だから、女子の成人の真似事をして、ロックオンに嫁がせるっていうのをやるつもりらしい。裳着っていうのは、女子の成人式みたいなものなんだ。」

「いや、だから、俺は、そんなんじゃねぇーし、そっちの趣味はねぇーよ。」

 ぜーはぜーはと反論していて息が切れてきた。あんまりなことを言われているので、かなりブチキレ状態のロックオンだ。ちょっと落ち着いて、と、アレルヤが水の入ったコップを差し出す。

「それは、遊びってことですよね? ディアッカさん。」

「うんまあ、遊びだろうな。ラクス様もキラも、そういう遊びは好きなんだ。」

「本気で、そんなこと言いませんよね? 」

「いや、ごめん、あいつら、本気は半分くらい入ってると思う。・・・・本来、この「The Tale of Genji」って本は、キラの出身地域の古典的な物語で、その時代の背景とか貴族たちの日常的な出来事なんかを優雅に描いているものなんだ。そこだけを取り上げているから生々しくなってるけど、昔は、どこでも、そんなものだと思うぜ。」

 で、いきなり結婚とか言う段階でおかしいのは事実だ。そこいらが電波天然と、キラが呼ばれる所以でもある。

「たぶん、ロックオンがキレます。」

 いや、すでにキレてるけど、こんなに激怒しているロックオンなんて、アレルヤも見たことがない。そりゃそうだろう。ロックオンは、刹那のことを弟とか子供みたいに可愛がっているのであって、結婚したいなんて思っていない。そういう目で見られていたというのもショックだろうし、何より、刹那がショックを受けるのが心配なんだろう。

「八戒さんが来てるんだ。あっちには事情を説明してあるから、おかしな騒ぎは止めてくれると思う。」

 もちろん、ディアッカも冗談で済ませられるように、八戒に説明はした。トダカのほうにも、だ。それぐらいの防御はしている。

「刹那に説明は? 」
作品名:こらぼでほすと HGP 作家名:篠義