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かぜさんうつった




「なみえ・・・おれしぬの・・・?」
「馬鹿言うんじゃありません」


こほこほと咳をしつつ、真っ赤な顔で寝ている臨也。その額には冷えピタが張られ、体温計を覗き込んだ波江は声に出してその温度を読み上げる。
「38度5分。あなたにしては高温ね」
子供は体温が高いとよく言われるが、臨也はそれでも平均的な同じくらいの年齢の子供たちより体温が低い。真夏などは、帝人先生に手をぴたっと押し当てると、「臨也君はひんやりさんだねえ」と言われるくらいだ。だからこそ、ほんの少し熱が出ただけで簡単に湯だってぐだぐだになってしまうのだけれども。
「これほんとにただのかぜさん?もしかしていんてる?・・・それともふじのやまい・・・?」
「インテルじゃなくてインフルでしょう。大丈夫、ただの風邪よ、ちゃんと薬を飲んで寝ていれば治るわ。幼稚園の先生から移ったのかしらね」
れんらくちょうによれば、臨也は病み上がりの帝人先生にべったりだったらしい。コアラのようにしがみついて離れなかったとか、なんとか。それでは移るのも仕方が無いかもしれない。
もっとも、夕食を終えるまでは普通に過ごしていて、いきなりばったーんと倒れたのには驚かされたけれど。
「・・・うつったの?みかどくんのかぜさんがおれに・・・!」
「ちょっと嬉しそうな顔しないでくれる?」
「みかどくんにもらうものなら、たとえそれがかぜさんであろうともおれはうれしいよ!そうか、このつらさがあいのいたみというやつなんだね!みかどくん、らぁぶ!」
「違うと思うわ。もういいから寝なさい」
べちっと軽く額を叩いてやれば、
「あう」
とうめいて臨也は大人しく目を閉じる。真っ赤なリンゴみたいな顔をして辛そうだけれども、既に病院には行ったし薬も飲んだし、あとは夜まで水分を補給しつつ眠らせるしかないわけだ。
波江はため息をつきつつ今朝、お休みの連絡を入れた時のことを思い出した。「えっ!?臨也君風邪ですか・・・!」と驚いたような声をあげた帝人先生は、多分おそらく確実に、自分のせいだと思ったのではなかろうか。
だとすれば。
時計を見上げてふむ、と腕を組み、波江は来客用の紅茶の有無について考える。おそらく、臨也の想い人は幼稚園閉園後にお見舞いに駆けつけてくるだろうから。




ピンポーン、とインターホンを鳴らせば、高級そうなマンションのドアがすぐに開いた。
「夜分にすみません、らいじん幼稚園の竜ヶ峰です。臨也君の具合はいかがでしょうか?」
保護者面談や行事、毎日のお迎えで顔を合わせてはいるので、家を訪ねるのは大分気安い。おまけに見えは帝人先生の同級生で友達である誠二のお姉さんなので、自宅を訪問するのも初めてではなかったりする。
「来ると思ったわ。今夕飯を食べさせて薬を飲ませたところだから、会ってあげて頂戴」
「あ、はい、お邪魔します」
僕の風邪をうつしてしまってすみません、と意気消沈の帝人先生に、馬鹿じゃないから風邪は引くのよ、とフォローなんだか良くわからないものを入れつつ、波江の案内に従って子供部屋のドアを開ける。
「・・・なみえ、あのあおじるとしょうがとおすをぶれんどしてはちみつをそえたとくせいどりんくならのまないよ?あれはにんげんののみものじゃないからね!」
「好き嫌いするんじゃないわよ。それより、あなたの大好きな帝人先生がお見舞いに来てくれたわよ」
「みかどくん!?」
がばっ!
慌てて体を起こした臨也は、しかし次の瞬間べしゃりと布団の上に突っ伏す。
「臨也君!?無理しちゃだめですよ!」
「み・・・みかどくん・・・おれはもうだめだ、みじかいしょうがいだったけど、きみにであえてしあわせだった・・・」
「何馬鹿なことを言ってるんですか!」
熱で真っ赤な顔で、とても悲壮なのだが、どうしてこの園児はこんな時までこういう語彙なのか。ちょっぴり問いただしたくなる帝人先生だった。
「ほら、ちゃんと寝て。お熱高いのかな?」
「さんじゅーはちどー」
「お薬は飲んだ?」
「のんだよ。おれはおとなだからしろっぷつかわなくてもおくすりのめるんだよ」
「すごいねー」
「すごいでしょー。もっとおれにほれていいよ!」
えっへん。
風邪ひきさんでも臨也は臨也。とても、いつもどおりの様子である。いたらいたでウザったいところもあるが、やっぱりいないとちょっぴりさみしいかも知れないなあ、と帝人先生は思う。物足りないっていうか。
「早く元気になってくださいね」
なでなで、とその頭を撫でれば、とろける笑顔で風邪ひきさんは、その手に自分から擦り寄るのだった。



「すなおにさみしいっていえばいいのに、みかどくんのてれやさんめ」
「じゃ、僕帰りますね!」
「もうちょっといてくれてもいいんだよ!」


・・・前途は多難。

作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野