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だいすきだいすき!

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ばかばかばか!




床よし、棚よし、おもちゃ箱よし。
帝人先生は復帰第一日目のさくらぐみ教室で、朝のお掃除を終えて指差し確認をした。
土日を含んでとはいえ、実質四日も休んでしまったとは予想外のできごとだった。すごく心配を書けてしまったようで、園児たちからお見舞いの手紙やら折り紙やらもらって、帝人先生は感動したものだ。今日はそんなしんどい風邪も完治したばかり、とにかくきっちりと仕事はこなさなくてはならない。
手にした雑巾を水で絞りつつ、帝人先生は時計をちらりと見上げた。あともう少ししたら、今日も臨也が一番乗りでやってくるに違いない。今日はもう掃除が終わったので、存分に相手をしてあげられそうだ。と、そのとき。


ガラッ


扉の開く音に、反射的に帝人先生はそちらを見た。そっと扉の影から顔を出した臨也が、目があった瞬間に「ぴゃっ」と扉の影に隠れて、しばしの沈黙。
え?あれー?
帝人先生、困惑である。
臨也はわりと多種多様な反応を示すが、逃げられたのは初めてだ。こういう時はたいてい、走ってきて抱きつかれるのが常だったので少し驚く。どうかしたのだろうか、と首をかしげた帝人先生が黙って扉を見つめていると、水色のスモッグがちらりと翻って、またそーっと臨也が顔を出す。
「おはよう、臨也君」
できるだけいつものように声をかけたなら、一瞬びっくっと肩を震わせた臨也は、そのままそろーっと扉から一歩室内に足を踏み入れて、まじまじと帝人先生を見上げて、それから、うるっと大きな目に涙をためた。
「え、臨也く」
「みかどくんのばかああああああっ!!」
それからだだだっと駆け寄ってきたかと思えば、ていっと帝人先生に飛びつき、左足にコアラのごとくしがみついたままわんわんと泣き出すのだった。
えええええ?なにこれどういうことなの?
「い、臨也君どうしたのかな!どこか痛いの?悲しいの?」
「っにぶちんーっ!ばかあああ!」
「ええと、臨也君?」
言ってる意味が分からないよ、と苦笑しながら、その頭を撫で撫ですると、ぐすっと鼻をすすって臨也は顔を上げる。普段かっこいいことを意識しまくっている臨也にしては珍しいほどのボロボロな顔である。
「久しぶりに会ったのに、先生臨也君の笑顔が見たいなあ」
「・・・っひきょうもの。そんなこといわれたらおとことしては、わらうしかないじゃないか」
「うん、笑って欲しいです」
にっこり。帝人先生がそういえば、一生懸命に涙をぬぐって、臨也はぎこちなく笑って見せる。ほんとうにこういう所は男前だ、と帝人先生は思う。しゃがみ込んで視線を合わせれば、ひしっと首に抱きついてきた臨也、あのね、と。
「きみがいなかったらおれがようちえんにくるいみなんかないんだよ!わかってよ!」
「えーと」
「だいたい、たかがかぜでよっかもおれとあわないなんてどういうことなの!おれがどれだけしんぱいしたとおもってるんだよ!」
「あ、鶴ありがとうございました」
「がんばったんだからね!もしきょうもみかどくんいなかったらどうしようかとおもって、さっききょうしつのぞいたらいたからまぼろしかとおもっちゃったよ!ばかっ!きょうあえたらなおってよかったねっておとなっぽくいってあげるよていだったのに、とんだばんくるわせだよ!」
ぎゅう、と力を込められて、帝人先生は悟った。そうか、ぬか喜びしないように自分をいさめるんだなこの子。大人びたところのある子どもだとは思っていたけれども。
「寂しい思いをさせてしまいましたね、ごめんなさい」
離れる気配のない子供を抱き上げて、よしよし、と撫でながら帝人先生が優しく言うと、臨也はほんとうだよ!とまたうるうる涙をためて、けれども笑ってと言われたから必死でなかないように頑張った。
「みかどくんっ、おれね、おれっ・・・!」
たくさん言いたいことはあったんだけれども。
例えば、お見舞いに行きたかったとか、かぜさんないないのじゅもんが効かなくてごめんとか、かぜなんかひかないようにもっと気をつけろ、とか。
けれどもぜんぶ全部飲み込んで、とりあえず臨也は一生懸命、一番伝えたいことを。



「さみしかったよばかあああ!」



ぎゅぎゅーっと抱きつきながら、今日は絶対に離れない!と心に決めた臨也であった。


作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野