二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

だいすきだいすき!

INDEX|14ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

よつばさん






お天気ぽかぽか、日本晴れ。
もうそろそろ春も近い今日この頃、臨也は波江に手を引かれて帰宅の途中、ふと立ち止まった。
「なみえ!ねえなみえってば!」
「なにようるさいわね。どうかしたの?」
今日はスーパーのタイムセールが控えている。愛する弟に美味しいご飯を食べてもらうため、波江は急がなくてはならない。だがしかし、その手をぐいぐいと引っ張りながら、臨也が叫ぶ。
「どてさん!どてさんいこう!」
「土手?何かあるの?」
「よつばさん!さがすの!」
「四つ葉?」
というのはあれだろうか、四つ葉のクローバーのこと、だろうか。波江は目をぱちくりさせて、急にそんなことを言い出した臨也を見返す。臨也はといえば、非常に真剣な顔で続けた。


「なみえしらないの?よつばさんはしあわせをはこんでくるんだよ?おれがみつけてみかどくんをしあわせにしてあげるねってやくそくしたら、みかどくんはかわいいえがおで「いざやくんはおとこまえですねー」っていってくれたんだよ!」


だからおれはおとこまえだから、よつばさんさがすの!
頬を赤らめてみかどくん、らぶ!とか叫ぶ息子を見下ろし、波江はふかぶかと溜息をつく。この変わり者の息子が帝人先生ラブなことは知っているし、好きにしろと思うが、それによって波江のペースが乱されるべきではない。
「あとになさい」
にべもなくぴしゃりと言えば、臨也はがーんっ!と悲壮な顔をした。
「だめ?どうしてもだめ?」
「今日は帰りにスーパーに寄るって言ったでしょう。タイムセールに間に合わなかったらどうしてくれるの」
「でも、よつばさんだよ!しあわせがくるんだよ?」
「せっかくきた幸せを全部帝人先生に転送するような子供のワガママはきかないのよ」
せめて明日にしなさい、今日はダメ!と言い切って、波江はぐいぐいと臨也の手を引いて歩く。引きずられながら、よつばさんー!はなせなみえ、おとこにはやらなきゃならないことがあるんだーっ!とか騒いでいた臨也も、スーパーが近づくにつれて静かになった。スーパーにはスーパーの、子供の楽しみが満載なのである。
「なみえ!ここあしがれっとかって!」
「百円以内で持ってきなさい」
「はーいっ!」
カートを手にしたとたんに駄菓子コーナーへと走っていく臨也を見送り、さて、とっとと特売の肉を買い漁るわよ!と波江もタイムセールの戦場へ足を踏み入れるのだった。




数分後。
いつもならばこのくらいの時間があれば、駄菓子コーナーから戻ってくる臨也がまだ戻らないので、波江はカートいっぱいの戦利品を押しつつ、駄菓子コーナーをのぞいた。
だが、そこに臨也の姿はない。すれ違いになったのかと当たりを見回せば、スーパーの中に入っている花屋の前にしゃがんでいる小さな影が目に入った。
「臨也。もうレジに行くわよ」
声をかけながら近づくと、臨也はぱっと振り返って、
「なみえ、さんびゃくきゅーじゅーえんでもいい?」
と、真顔で訪ねてくる。
「何が欲しいの?」
「あのね、これ、よつばさん」
もじもじと照れくさそうな顔をしながら臨也が差し出したのは「四つ葉のクローバーギフト」という、小さなラッピング済みの苗。今はこう言うのもあるのかと感心しつつ、土手で探せば見つかりそうなものにお金を払うのももったいないな、とも思い、さてどうしようかと考え込むと、臨也はあのねあのね!と必死に商品アピールを始める。
「これぜんぶよつばさんなの!にこもはいっててどっちもよつばさんなの!それでね、ねっこもあるんだって!おにわにうえるとふえるんだって!みかどくんがおにわにうえて、たくさんふえたら、そしたらちょっともらいにいくの!そしたらなみえにもしあわせくるよ!」
だからかっておねがい!
いかにも必死!というその顔に、却下と言うのは簡単なのだけれども。
波江は仕方ないわねえ、とため息を付いて、さいふから五百円玉を取り出し、そのギフトを購入するのであった。




「今回だけよ、崇め奉りなさい!」
「なみええええ!だいすきぃいいい!」
「はいはい」
「みかどくんのつぎにすきいいいいい!」
「ああもうわかったから泣くんじゃないわよ、ほら、行くわよ!」



作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野