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こんにゃく!?





一日が終わりお迎えを待つ時間になると、園児たちは思い思いの場所で好きに過ごすのが恒例だ。
臨也はもちろん、一目散に大好きな帝人先生の隣を陣取り、帝人先生に近づくほかの園児在れば威嚇して遠ざけつつ、二人のラブタイムを過ごすのが日課である。
「あのねっ、みかどくん、こんにゃくゆびわってしってる?」
キラキラおめめで帝人先生を見上げ、臨也がそんなことを切り出したのは、休日前の金曜日のことであった。
「こんにゃく・・・?」
帝人先生は首をかしげ、それっておでんとか煮物に入ってるあれですか?と言いかけてやめる。食べ物のこんにゃくならば指輪にはなるまい。答えあぐねていると、教えてあげる、と臨也は胸を張った。
「んっとね、こんにゃくゆびわはけっこんのやくそくなんだよ!だんなさんがおよめさんにあげるの!」
「え?ああ、婚約指輪のことですか?」
ろれつが上手く回ってないらしい。全く可愛いなあと思いつつ帝人先生が微笑むと、その笑顔に気分をよくした臨也、ふふふーっと幸せそうに笑顔を返す。
「でね、おれかんがえたんだけど、おれがけっこんできるようになるまでまだじかんがかかるから、そのあいだにみかどくんがあんしんできるようにこんにゃくゆびわあげたらいいよね!」
「え?」
おや、なんか妙な方向に話がいっているような。
若干帝人先生の笑顔が引きつったが、それには気づかず臨也はえっへんと自信満々に腰に手を当てる。
「きゅーりょーさんかげつぶんのおねだんなんだって!おれはまだようちえんだから、おこづかいさんかげつぶんね!きゅうひゃくえんもするんだからりっぱなのがかえるよね!」
「え、ちょっと臨也君、あの、」
「でもおれはみかどくんのためならひゃくえんたしてせんえんだしてもいいよ!せんえんもあったらすっごいりっぱなのかえるよね!ぜろがみっつもあるんだもん!」
えっへんすごいでしょ褒めて褒めて、こんな立派な旦那さんで嬉しいでしょ?と目が言っている。とってもきらきらしている。まぶしい、まぶしいよ幼稚園児!世界が夢に溢れているよ!こんな表情の園児に現実を突きつけることなんかできやしないよ!
帝人先生は数秒間迷った。
このまま婚約指輪の相場を知らせずに素敵だねーと言って笑ってあげるべきか、それとも何か言葉を尽くして話題を逸らすべきか、はたまた実際の指輪の値段についてしっかりと教えてあげるべきか。
そもそもどこから仕入れたんだ婚約指輪の知識は。
迷って迷って迷った挙句、帝人先生はとりあえずにっこり笑って臨也の頭をなでてやり、
「い、臨也君はお金持ちだねー」
と、褒めることにした。幼稚園児のお小遣いは家によってまちまちだが、お菓子を買いすぎないように余り与えすぎないのが普通である。
撫でられて頬を赤くした臨也は、先生に褒められて有頂天だ。
「おれね、みかどくんにぜーたくなくらしをさせてやるからね!」
「う、うん、すごいねー」
「だからうわきはだめだからね、ずーっとおれのことすきでいるんだよ!ぜったいだよ!」
「う、うん?」
浮気って言うか付き合ってないけどね!でもそんなことは臨也に言っても無駄なので最早あきらめの境地だ。それよりなにより、今は婚約指輪の現実から臨也の純粋な心を守らなくては。
「あの、でもね臨也君?先生は今、婚約指輪よりもチロルチョコのほうが貰ったら嬉しいなー」
帝人先生は必死で話題をそらした。臨也相手に先生は男です、と説明するのはもう何度も何度もやっているので無駄だと分かっている。こういうときは別のものに摩り替えるのが吉である。
「ちろる?いいよ、きみがのぞむならすきなのかってあげるよ。ちょっとぜいたくにきなこもちにしようか?さいきんだとまっちゃのやつがはやりだよ」
「臨也君のお勧めがいいなあ、美味しいのよろしくね」
「たよられてわるきはしないよね。まあまかせておきなよ」
「わー、臨也君かっこいいなー!あ、ほら波江さんがお迎えにきたよー!また明日ね!」
ふふんと自慢げな臨也を保護者にとっとと押し付け、帝人先生は心の中で祈るのだった。


神様仏様キリスト様アラーの神様、誰でもいいからなんかすごい存在よ!
臨也君が婚約指輪の値段を知る日が、少しでも遅く訪れますように!




だがしかし、現実は残酷なものである。
「なみえ・・・にじゅうさんまんって、せんえんでたりる?」
「無理言わないで」

作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野