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だいすきだいすき!

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にんじんさん




じーっと見詰める先のお弁当箱。
じーっとじーっと。
臨也は握り締めたフォークで、その赤いものを突き刺す。
にんじんさんだ。
思い出すのは愛する帝人先生のお言葉。「先生なんでも食べる子、好きだなあ」とにっこり笑った、その言葉をちゃんと覚えている。これを食べたら良い子良い子してもらえる。
臨也は帝人先生になでられるのが一等好きだから、そのためならにんじんさんを食べることもやぶさかではない。だが、どうせなら。


「・・・きだくん!みかどくんのところいってもいい!?」
「それ食ったらな」
「それじゃいみないの!みかどくんのまえでたべていいこいいこしてもらうの!」
「帝人になんて言われたか覚えてるよな、臨也君?」


この前、あまりにも臨也がばらぐみを脱走するので、帝人先生は怒って「ばらぐみを出るときは正臣先生の許可を貰うこと!」と指きりげんまんさせられた。臨也は小指をじーっと見詰めて、うううーっと唸ってしまう。
愛する帝人先生との指きりげんまん、男として破ってはならない。
だがしかし、せっかくにんじんさんを食べるのならば帝人先生に撫でてもらいたい。正臣先生では意味が無いのである。
「こいにしょうがいはつきものだっていうけど、こういうことなんだね・・・!」
「・・・おいこらマセガキ。いいからにんじんさん食べなさい」
「らぶらぶなおれとみかどくんがうらやましいのはわかるけど、おとこのしっとはみぐるしいよきだくん」
「嫉妬してないから、いいから食ーべーろ!」
にんじんさんを食べるまで、ばらぐみから出すことはできません!と言い切った正臣先生に、ちぇーっと残念そうに肩をすくめて、臨也は口を大きくあけ、目を瞑ってにんじんさんを口の中に押し込む。そして手で口を押さえて一生懸命もぐもぐするのであった。そんな様子を見つめて、正臣先生はしみじみとため息をつく。
最初の頃は、何を言っても決して食べなかったにんじんさん。
一度帝人先生に「臨也君がにんじんさん食わねー」と愚痴ったところ、帝人先生が「臨也君、にんじんさん嫌いなの?」と尋ねたらしい。そのとき、まさか「食べられない」とは、惚れた相手の目の前で言えない!と思った臨也は、胸を張ってこう答えた。


「べ、べつにきらいじゃないし!っていうかおれすききらいなんかないよ!にんじんさんなんか、ひとくちでたべられるもん!まずいけど!」


男は、何歳であろうと男である。
見栄くらいはるし、できないことをできるといってみたりもする。しかしその表情と態度と言葉選びからして、ほんとうは食べられないことがバレバレであった。そんな臨也に、帝人先生はにっこりと微笑んで、
「すごいね、先生なんでも食べる子、好きだなあ」
と一言。
「・・・にんじんさんたべるおれ、すき?」
「うん、好きだよ」
「・・・し、しかたないなあ、まずいけど、みかどくんがそういうならたべることもやぶさかではないよ」
「わあ、それじゃあ、正臣先生に聞いて、臨也君がにんじんさんをちゃんと食べたら良い子良い子してあげるね」
「こころにくいことをしてくれるね・・・!それをきいたらもう、たべざるをえないよ!」
一体この子の語彙力は、どこからくるんだろうか。帝人先生は毎度そこを疑問に思うのだけれども、まあいいか。
かくして、決死の形相で臨也はにんじんさんに挑み、何とかそれを飲み込むことに成功、えらいねーと帝人先生に撫で撫でしてもらったのだった。
以来、臨也はにんじんさんを食べる。そして食べたら必ず帝人先生に報告して、なでろとねだるわけだ。
「愛の力だねえ・・・」
恐るべし幼稚園児。
「きだくん!にんじんさんたべた!」
「よし、行ってらっしゃい」
「きょうこそみかどくんのねがおをみてくる!いっつもおれのほうがさきにねちゃうから、みかどくんのてまほうのてみたい!でも、きょうはおれがんばってみかどくんのねがおにちゅーする!」
じゃ!と元気に走り出す臨也を見送って、正臣先生は心の中で一応、叫んでおいた。



だがしかし、先生たちは寝ないからー!
残念ッ!

作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野