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だいすきだいすき!

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おひるねとたくらみ





こっくり、こっくり。
大きく舟をこいでいた臨也の頭が、そのままふらっと前方向に大きくかしぐ。
ごっちん。


「・・・いたい・・・」


「あれ、臨也君おねむ?机にごっつんこしちゃったの?」
大丈夫?と笑いかける帝人先生を見上げて、涙目の臨也である。らいじん幼稚園のお昼寝の時間は、お弁当を食べ終わった子供から自由に眠っていいことになっている。もう既に大半の園児たちが布団で寝ているのだけれども、今日はなぜか一生懸命起きている臨也、必死で目をこすっていた。
「みかどくん、まだ?まだおしごとおわんないの?」
「うーん、先生もう少しやることあるから、先にねんねしてていいですよ」
「だぁめー。きょうこそいっしょにねる」
「でも、もう少し時間かかるから、ね?」
今にもくっつきそうなまぶたを懸命に開けながら、臨也は帝人先生のエプロンをくいくいと引っ張った。早くお仕事終わらせて一緒に寝よう、と言うのだけれども、実際先生はみんながお昼寝している間に、次の時間の用意をするので。
眠れないんだよ先生は。規約でも一応原則寝ないことになっているんですよ。
「だいたいみかどくんは、いいたくないけどちょっととろいよね。おひるねのじかんにまでしごとをのこすなんて、もっとようりょうよくやらないとしょうらいくろうするよ?」
幼稚園児にトロいと言われる保父さん。非常にぐさりとくる。っていうか将来って。
「そういう言い方は無いと思うなあ」
思わず眉をしかめた帝人先生に、臨也はだからね、と。
「きみはかていにはいるべきだよ、おれのおくさんとして」
「えーっと・・・」
「とおまわしではなく、そのものずばりのぷろぽーずだからよろこびなよね」
「法律的に無理ですから、って何回も言わせないでくださいよ」
「ほうりつなんてあいのまえにはむりょくなものだよね・・・」
「・・・波江さん、ドラマとか好きなのかな?」
「なみえはてれびっこだよ」
「意外な事実・・・!」
そうですか昼ドラ系の語彙力なんですね、理解。しかしもうすでに意識も朦朧としている臨也の顔は、もう一度こっくりと舟をこいでそのままひっくり返りそうになるので、帝人先生は慌ててその体を支えた。
危ない危ない、たんこぶにでもなったら困る。
「臨也君、もうお布団はいりましょうね」
「・・・みかどくんと、いっしょ・・・」
「はいはい」
抱っこしてお布団まで運んで、寝かせてあげるともう既に健やかな寝息が聞こえていた。さすが幼稚園児、電池切れの早いこと。
「いつもこうしていれば、天使なんだけどなあ」
黙っていれば臨也君は、本当に可愛らしいのだけれども。口から飛び出る言葉があれでは残念だ。今からがっかり王子では先が思いやられる。
帝人先生はため息をつきながら、その天使の寝顔を撫でて、布団をかけてあげた。うにゃうにゃと寝言を何か呟くその様子、本当に可愛らしい。全力で慕ってくれるのは嬉しいのだけれども、もう少し語彙力の方向性を違う方に向けてほしいなと心から思う。保護者面談の時、少し話してみるべきかも知れない。
「おやすみ、臨也君」
さて、それじゃあ仕事に戻るか!と立ち上がろうとした帝人先生だが、つんと引っ張られる感覚に片膝をついた。あれ?なんだろう、と思ってエプロンを見下ろせば、そこにはがっしりと帝人先生のエプロンの裾を掴む、小さな手のひらが。
「あー、もう」
幸せそうに眠る幼稚園児の手を無理やり剥がすのもはばかられて、帝人先生は困ったように頬を掻く。
規定では、保父さんは一緒にお昼寝はできないことになっているんだけれど、どうしても眠いときは、ちょっとくらいならいいよ、とセルティ園長は言っていた。そんなことを思い出して数秒間の沈黙。
そして、降参。
「・・・わかりましたよ、臨也君には負けました!」
らいじん幼稚園に勤めて約半年、帝人先生がはじめてみんなと一緒にお昼寝を体験した昼下がりであった。




「・・・えへへ」
すうすうと眠りこける帝人先生のとなりで、臨也はぱっちりと目を開けて満面の笑み。
計画通り、とその顔が言っている。この年から末恐ろしいほど計算高い子供である。
「みかどくん、かぁわいい」
天使の笑顔でそんな事をつぶやき、10人いたら10人が「可愛いのはお前だ!」と言うほど幸せそうな表情で、すりすりと帝人先生に擦り寄ってぎゅーっと抱きつくと、臨也はもぞもぞと体勢を変えた。
「きだくんにせんげんしたもん、ちゅーしていいよね。おとこのまえでむぼうびにねむりこけるほうがわるいんだよみかどくん、おれいがいのだれかのまえでこんなふうにねちゃったら、めっ!だからね」
言う事の内容は、とても五歳児には似つかわしくないのだけれども。
とろけるような笑顔で、帝人先生のほっぺにちゅーする臨也の姿は、本当に本当に可愛らしかったので、通りかかった正臣先生と杏里先生は、顔を見合わせて見なかったことにするのであった。


作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野