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おとな・こども





「なみえ、おれこーひーのみたい!ぶらっくこーひー!」
はいっ!と手を上げて真剣なまなざしをする臨也に、波江はあらまあ、と口元に手を当てて、ミロかココアがあっただろうかと考えた。
幼稚園児に珈琲なんて飲ませられるはずが無い。カフェオレでさえ、飲んだ日はとても寝つきが悪いのだから却下である。
「一応聞くけど、どうして?」
「きだくんにきいた!ぶらっくこーひーがのめることがおとなのおとこのじょーけんだって!おれはやくおとなになってみかどくんをおよめさんにもらわなきゃだから、ぶらっくこーひーのむの!」
ああなあんだ、なんてくだらない。そういうことなら遠慮は要らない。
「却下」
「なんでー!?」
「あなたが夜ちゃんと眠れないと、私が困るからよ」



「・・・それは波江さんが正しいと思うなあ」
「みかどくんまであのおんなのかたをもつの!つまはだまっておっとをたてるものなんだよ!?」
「いや妻じゃないし。それに、ブラック珈琲は臨也君にはまだ早いよ」
朝一番、園児たちが通ってくる時間前の幼稚園。人より多く帝人先生にくっついていたい臨也は、毎朝とても早くやってくる。あるときには園長先生であるセルティ先生よりも早く来て、まだ門の開かない幼稚園の前で待っていたことさえあるのだ。
今日も臨也は早起きで、まだ誰もいないさくらぐみの教室に入り浸って、朝のお掃除をしている帝人先生を独り占めタイムである。
「はやくおとなになりたいのに、なんでみんなじゃまをするのさ。せかいがおれとみかどくんのあいにしっとしてるんだね」
「臨也君て、ポジティブだよね・・・。珈琲は目が覚める成分が入ってるからだめなんだよ。夜眠れなくなると、朝起きられないし昼眠いし、大変だよ?」
「・・・ちこくしちゃうかな」
「しちゃうかもね」
「あさみかどくんにあえないのは、やだ」
「うん、珈琲はまだやめておこうね」
「・・・みかどくんにさみしいおもいをさせるのはふほんいだから、しかたないね。たしょうのことにはおれてあげるのがいいおとこだっててれびでもいってたし」
別に先生は臨也君が朝来なくても寂しくはないですけど。
なんて言ったら本気で傷つきそうなので、言わないでおこうと思った帝人先生だった。まあ絶対寂しくないかと問われれば、ちょっとくらいは、そりゃね。
「でも、どうして急に珈琲なんて飲もうと思ったの?」
にっこり微笑んで尋ねる帝人先生に、臨也、胸を張って答える。



「あのね、みかどくんとおくちとおくちでちゅーするにはね、おとなじゃないとだめなの!」



「・・・は?」
ちょっと待ていきなりなんだ。
唖然とする帝人先生をよそに、臨也はぐっと拳を握り締めてファイティングポーズをとる。
「このまえきだくんがね!ほっぺにちゅーなんてまだまだがきだねーっておれをからかったから、おれおとなだもんっておこったの!」
「う、うん?」
「おとなはおくちにちゅーするんだって!そんなのおれだってしってるもん、でもおれはしんしだから、みかどくんがびっくりしないようにいきなりおくちにはしなかっただけだもん」
そういえば、先日お昼寝のとき、正臣先生がやたらにやにやしながら、「みっかどー、お前臨也君にほっぺちゅーされてたぞ、このこのぉ」とか言ってきたような。って言うかあのノリで子供をからかったのか、そうなのか正臣、後でシメる。
「え、ええと」
「きだくんあいてにおこるのもおとなげないとはおもったけど、それでもはらがたったから、じゃあおくちでちゅーしてくる!っていったら、おくちのちゅーはおとなじゃないとやっちゃだめだって」
言っておくが正臣先生は大人で、臨也は子供だ。大人気ないとかそういう問題ではない。
「おれはおとなだけどね、おとなだもんっていったらしょうこみせろってきだくんがいった!ぶらっくこーひーがのめないとおとなってみとめないって!」
「正臣大人気ない・・・!」
「ちがうよみかどくん、きだくんはまだこどもだからしょうがないんだよ」
まったくもう、とあきれたように肩をすくめてみせる臨也に、臨也君のほうが子供なんだよ、と言うべきか言うまいか、迷った末帝人先生は口を閉ざした。おとなのしょうこにちゅーしてあげるとか言われたら困るし。っていうか僕ファーストキスまだなんだけど!なにこれフラグ?フラグなの?臨也君にファーストキス奪われちゃう的な!?
考えれば考えるほど欝だ。何が悲しくて男子園児に。
「・・・臨也君、あのね」
帝人先生は考えた。このピンチを乗り切るにはどうすればいいのかを。そしてできるだけ臨也を傷つけずに済む方法を。



「先生、ブラック珈琲飲めないんだ、ごめんね」



訳:先生は子供だからお口にちゅーはできません。
目をぱちくりさせてしばらく考え込んだあと、こう見えて頭の良い子な臨也はそれを理解して、がーんとショックを受けたような顔になった。
だがしかし、直後にみるみるうちに表情を明るくして。
「じゃあほかのやつともちゅーできないね!」
「・・・そ、そうだね?」
「そっかあ、じゃあおれがみかどくんをおとなにしてあげるね!それまではわるいむしがつかなくてちょうどいいし」
「え、えええ?」
なにこの子、本当にポジティブなんですけど。
唖然とする帝人先生に、臨也はぎゅぎゅーっと抱きついて大満足の笑顔である。
「うれしいなあ、みかどくんはずーっとおれのもの!」
「いや臨也君のものじゃないけどね!」
「てれなくていいよ、あいにとしのさはかんけいないし」
「そういう問題でもないかな!」



どうしてこうなった。
帝人先生、途方に暮れる。

作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野