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だいすきだいすき!

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かぜひきさん




寒い寒い冬の日、響く咳の音。真っ白マスクをかけた帝人先生は、ただいま絶賛風邪ひきさんである。
ちょっとせきが出る程度だから、といつもどおりに仕事をしている帝人先生を、臨也は心配そうな顔で見上げた。
「みかどくん、だいじょうぶ?すこしやすんだら?」
「大丈夫ですよー、ちょっとせきが出るだけで、お薬も飲みましたから。明日はお休みですし、ちゃんと月曜日までには治しますからね」
にっこり笑顔でそういうけれども、言ったそばからこんこんと咳が出る。臨也はしゃがみこんで目を合わせてくれている帝人先生の額に、背伸びして手を触れた。
「んー・・・?おねつはないない?」
「ないですよー」
「だいたいきみは、たいちょうかんりがなってないんだよ。きょねんもかぜでおやすみしたじゃないか。おれはきみがしんぱいでおひるねもできないよ」
「お昼寝はしないとだめです」
「・・・みかどくんがそういうならするけどさ」
むーっと不服そうな臨也、ぎゅっと帝人先生に抱きつく。大好きな帝人先生が辛い今こそ、臨也に出来ることはなにがあるのだろうか。


そうだ!みかちゃんにおそわったかぜさんとんでけのじゅもん!


臨也のおうちでも、先日から波江弟こと誠二がかぜひきさんである。波江も美香も、あっちへこっちへの大騒ぎをしていて、臨也もその時に美香に秘密の呪文を二つ教えてもらった。
では、とりあえず簡単な方を。
「みかどくんっ!おれかぜさんとんでけしてあげる!」
きらっきらの瞳で言う臨也は、ぱっと帝人先生から手を放し、その手を帝人先生のおでこに置いた。そして呪文。
「かぜさんかぜさん、とんでけー」
なでなで、ぽいっと小さな手で、痛いの痛いのとんでけーのリズムでそんなことを言うので、帝人先生は思わず微笑ましくて笑ってしまった。
「風邪さんは飛んでいかないと思うなあ」
「なんでー!いたいのはとんでくのに。せーじはこれでちょっとよくなったよ!」
「うん、そうだね、ちょっと良くなったかも。ありがとう、うれしいよ」
臨也君は優しいね、と撫で撫ですれば、ぽんっと赤くなる園児が一人、もじもじと帝人先生のエプロンのすそを掴む。
もう一個の呪文のほうが強いと美香は言ったけど、ちょっと唱えるのは恥ずかしい。すごく子どもっぽい。でも、帝人先生がよくなるなら、子どもっぽい呪文でもあえて唱えてみせましょう。


「かぜさんかぜさん、みかどくんはおれのたいせつでだいすきなひとだから、でてってくーださいっ。ちちんぷいぷいのぷーいっ」


もう一回、なでなで、ぽいっ!
赤面しつつやられた日には!
きゅんとハートが音をたてるってなもんである!


「・・・っ臨也君かわいいっ!」


もうマジ天使。子供天使!根っから子供好きで必然のように保父さんになった帝人先生だけど、それでもこれは近年まれに見る天使っぷり!
きゅんきゅんしながら、とってもレアなことに帝人先生のほうから臨也にぎゅぎゅーっと抱きついてきたので、臨也は「ひゃあああううう!」と変な声をあげて固まってしまった。
み、みかどくんがおれにぎゅってした!!!
臨也、五年間生きてきてはじめての帝人先生からのハグに、有頂天のユデダコ。バクバクと心臓が脈打ち、口からは意味の無い音だけがはうはうと漏れる。


で、でれた!みかどくんがおれにでれた!はじめてでれた!


生涯この日を忘れない!臨也のメモリアルデーである。だがしかし、幼稚園児に急激な興奮材料を与えてはいけません。
「ありがとね臨也君!先生早くよくなるね!」
と顔をあげた帝人先生の目の前で、ユデダコを通り越して夕焼けみたいになった臨也は、「あ。う」としどろもどろに声を漏らして。
「・・・臨也君?」
様子がおかしい?と首をかしげた帝人先生の目の前で、ふらあっとよろけたかと思うと、そのまま、
「もう、しんでもいい・・・」
とかなんとか呟きながら、バッターンと倒れるのであった。



「えええ!?臨也君!?臨也くーーーん!」



・・・そんな帝人先生の、悲鳴響き渡る午後。

作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野