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だいすきだいすき!

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きみのためならっ!





臨也に元気が無い。
「・・・なんか静かなら静かで変な感じするなあ、臨也君」
「うるさいな、ほっといてよ」
ぷいっとそっぽを向く臨也だが、元気の無い原因ははっきりしていた。即ち「みかどくんけつぼうしょう」である。とても分かりやすいことに。
「帝人がお休みだからって拗ねるなよ」
「きだくんにはわからないだろうけどね、おれのあいはまりあなかいきょーよりふかくてえれべすとよりたかいの!しんぱいしないわけがないじゃないか」
「エベレストな、エベレスト」
「えれべ・・・えべれ?」
「え・べ・れ・す・と」
「・・・えべりぇっ!!!」
舌を噛んだっぽい。声にならない声をあげて悶絶する幼稚園児に、正臣先生はファイトだ!と生暖かい視線を向けた。いくらマセガキで小生意気でも、所詮幼稚園児は幼稚園児。こうして涙目で口の中をもごもごさせる臨也は大変可愛らしい。
「よしよし、痛いのとんでけー」
「きやすくなでないでよ!おれをなでるのはみかどくんってきまってるんだからね!」
・・・まあ、こうして伸ばした手をぺちりとたたかれると、イラッときたりもするけれど。
「しょーがないだろー。帝人は風邪さんでお休みなんだから。みんなに移っちゃったら大変だし」
「もうみっかもあってないんだよ。みかどくん、ほんとうにだいじょうぶなの?にゅういんとかしてない?みかどくんになにかあったらきだくんいっしょううらむからね!」
「何で俺を恨むんだよ・・・。大丈夫だって、熱は下がったらしいから、明日には復活するって電話で言ってたし」
「・・・かぜさんないないのじゅもん、きかなかった・・・」
「今回は風邪さんのほうが強かったんだよ、次もやってやれ、帝人喜んでたから、な?」
うん、としおらしく頷く臨也、本当に元気が無い。いつもこのくらい静かだったら正臣先生も楽なのだが、帝人先生が復活してきたらこの三倍くらいのテンションでかっとばすに違いないので、結局同じことか。
そうして深いため息をついた臨也、とぼとぼと折り紙で鶴を折るのだった。
帝人先生が休んでいる間、せんばづる!とか叫んで織り出した鶴は、すでに100を越えている。おそらく千羽鶴は千羽必要だということは理解してはいないと思うので、今日の帰りにでも糸を通してつなげてやって、帝人に届けるか、と正臣先生は思った。
思い出すのは今日の「れんらくちょう」である。
保護者から家での園児の様子を書いてもらっているそのれんらくちょうに、昨日の臨也の様子として特記事項が記載されていたのだ。
『好物のたまごボーロを食べないのだけれど、何かあったのかしら?』
勿論返答は一言しかない。
『すみません、帝人先生が風邪で休んでいます』
「・・・臨也君、なんでボーロさん食べないんだ?」
子供は体調を崩しやすい生き物だ。食欲が無いというならば臨也も体調を崩してしまうかもしれない。心配して尋ねた正臣先生に、臨也はうん、と顔をあげて。


「きだくんしらないの?すきなものをがまんすると、ねがいごとがかなうんだよ」


と、真顔で言った。
「・・・うん?」
「このまえ、えいがでみたんだけど、がん・・・がんかけ?っていうの。ねがいごとがかなうまですきなものをがまんするっていうやつ」
「へー、臨也君物知りだな」
「だからね、おれはえらいからみかどくんがはやくよくなりますようにってぼーろさんがまんするの。つまをきづかうのはおっとのつとめだもんね、きだくんもほめればいいよ」
えっへん。
胸を張ってそんなことを言うので、正臣先生は思わず笑いそうになるのを必死でこらえた。それなりの年ならまだしも、幼稚園児がそんなこと言ったって可愛いだけだ。本当に一途な子だなあと感心しつつ、正臣先生はにっこりと笑って。
「えらいえらい、男の鑑だな!」
と言ってあげれば、そのとおりだよ、と自分で自分を褒める臨也なのだった。
「でも、食べ物は食べたほうがいいぞー、体力が落ちて臨也君まで風邪ひきさんになったら大変だろ?」
「もんだいないよ、そのときはみかどくんにかぜさんないないのじゅもんをとなえてもらうんだから。みかどくんはつんでれだけど、さすがにびょうにんをむげにはしないはずだよ」
「いや、ツンデレの定義が間違ってると思うぞ・・・」
「じゃあ、くーでれ?」
「・・・それもなんかなあ」
「ぜいたくなきだくんだね!おれのみかどくんのどこにふまんがあるっていうんだい!」
「何その理不尽な逆切れ!帝人に不満はないけど、臨也君にへの不満は山盛りあるぜ!」
正臣先生は、ビシッと周囲を指さした。



「とりあえず、ばらぐみに帰ろうな!」



「やだあああさくらぐみのこになるぅううう」
「駄々こねるなっつーのああもう!帝人がいないからってさくらぐみに入り浸って帝人の面影さがすの禁止!」
「きだくんのおおにぃいいいい!」



こんな騒がしいやりとりも、三日で日常となるのだった。

作品名:だいすきだいすき! 作家名:夏野